聖弓アルテラミス
聖弓アルテラミス
それは唐突だった、向かってくる兵士3人をはじき飛ばしなおもその勢いで下の魔法陣にいる魔族に襲い掛かるドーン、だが魔族達のいる場所へ近づこうとしたがそこには見えない壁があるのか、今度はドーンが弾き飛ばされた。
バシーン!
「ぐっ!」
ドシン
尻もちを着くドーン、そこへボルケールがやってくる。
【なんじゃバリアか?ならばこれでどうじゃ】
ボルケールは人型のまま目の前に火の玉を作り魔族めがけて解き放った。
【ハー】
ブオー ドンッ!
だが火の玉を浴びてもバリアが破られることは無く、逆に攻撃魔法が放たれる。
《われらが敵に鉄槌を、メタルショット》魔族2
《魔道の導きをわが力に顕現せよサモンフェンリル》魔族3
そこにいたのは魔族が5人と帝国の兵士が5名、上の社より明らかに数が多い。
魔族の魔法使いはどうやら5人、それぞれに得意な魔法は違うようだ、一人は防御魔法の使い手、もう一人は攻撃魔法そして3人目はどうやら召喚魔法の様だ。
その隙に今度は残りの魔族の一人が変身魔法を唱える。
《古の神にわが体を供物として捧げる、わが身に憑依せよ獣魔変身!》魔族4
4人目の魔族はみるみる大きくそして獰猛な獣に変化していく、その姿はまるで竜の様だが体は巨人と言う姿。
そしてまずは鉄の塊がドーンに向って放たれる。
バシュッ!
カン!
ドーンはとっさに背中から抜いた大剣で躱すとそこへ間髪入れず大きな狼がとびかかってくる。
それは召喚魔法で呼び出されたフェンリルの小型版である氷狼、その大きさはドーンの2倍ほど。
ドーンはその氷狼にのしかかられて、身動きできなくるが、横からボルケールが氷狼へ一発入れようとすると、氷狼はその大きな体からは想像できない素早さでボルケールの拳を躱した。
【まだ寝るには早いぞ】
「かたじけない」
【なかなか楽しくなってきた】
「ああ、だが油断は禁物だな」
【そのようだ】
その隙に5人目の魔族が社から下の町へと知らせに走っていく、だがその姿を後から駆け付けたマーベルは見逃さなかった。
「ホークアイ!」
ビシュン!
マーベルが持つ弓は業物とまではいかないが、その弓には魔法がかけられている。
魔法の弓、エルフ族に昔から伝わる神樹の枝で作られた弓だった、その弓で矢を射ると的中率が5倍になる。だがその弓は射手を選ぶ弓だった。
もともとエルフ族があがめる神樹からとれた弓、エルフ以外が手にとってもただの扱いにくい弓にしか見えない、神樹の加護を得られないからだ。
「私の弓からは逃れられませんよ」
すでに200メートルは離れている伝令を担った魔族は足に俊足の魔法を使い走っていたのだが、マーベルが矢を放つと逃げる魔族の足に吸い込まれるように向かっていく。
「ぐあっ!」
伝令役の魔族は足を矢で射抜かれ坂を転げ落ちる。
ゴロゴロゴロ
「留め!」
「そうはさせない!」魔族2
《ピアッシングアロー》
今度は2人目の魔族から針のような矢がマーベルに向かって放たれた。
ピシュピシュピシュ!
「あっ!」
シュカッ!カッカッ!
細かい針がマーベルの体に数本突き刺さる、とっさに弓を盾にしたため顔と心臓には針が刺さらなかったがその攻撃で弦が切れてしまった。
後から降りて来たアリスリアとラポーチがマーベルに駆け寄ると、すぐに針を抜き回復魔法をかける。
「ヒール」
その隙にジャクラインがボルケールとドーンに防御魔法とアシスト魔法をかける。
「オールプロテクション、オールアタック、リジェネレーション」
「魔女ジャクライン?」魔族2
「ごめんなさいね、今は敵なの」
「くそどういうことだ?」魔族1
「寝返ったか!」魔族2
「いい機会だ、昔から目障りだったくそ女に我らの魔術を思い知らせてやる」魔族3
「グォー」魔族4
血の魔女とは言われているが別に吸血鬼でも殺戮ジャンキーでもない、その二つ名の由来は竜の血を飲んで永年寿命を手に入れたと言う事だけ、まあ美女でもあるので水(血)も滴るいい女と言う語呂合わせも兼ねているのだろう。
確かに普通の魔族と比べればその魔力量は桁が違うのだが、彼女の使う魔法は実は一般攻撃魔法よりアシスト魔法の方が得意だったりする、それに魔女だからと言って魔術が得意と言うわけでもない。
彼女の場合は魔術の歴史や研究に特化しており、長い寿命と相まって今までそちらの研究ばかりしてきたのだ。
だからどちらかと言うと敵の魔法を看破して対抗策を練る軍師のような立場に近い。
「来るぞ」
【望むところだ】
「グアー」
「オウ~~」
ドーンとボルケールに氷狼と獣魔が襲い掛かる、それを少し離れた場所からラポーチ達は見届けようとしたが、ジャクラインもすでに参戦しているためにアリスリアがうずうずしだした。
「どうやらあっちはあたしの出番かしらね」
ドーンとボルケールは怪獣たちとの戦いで手が離せないが、そこにはまだ帝国の兵士が5人残っており、彼ら兵士は迂回してこちらへと近づいてきていた。
「やっちゃえおねえちゃん」
「ふふ、血が燃えるわ」
アリスリアは背中から槍を抜くと、槍はすぐに形が変化していく、長さが伸び穂先には鋭利な剣が現れ淡く光りだす。
聖槍ロンドワール、その力はすでに立証済みだ。
アリスリアは丘の斜面を走り出す、その先には5人の帝国兵。
ギャリン!
ブオン
カン!キンッ!
「イケー」
「わー」
ラポーチの傍らではマーベルが済まなさそうにうなだれている。
「私は…これではお役に立てません」
「大丈夫、ちょっと貸して」
そういうと弦の切れた弓を手に取るラポーチ、神の御業と言われている願いの力は裏切らなかった、ラポーチの手の中で弓はどんどん光りだす。
そして光が収まった時その手にある弓は元の大きさの約1,5倍になり、どう見ても普通の神樹で作られた弓とは思えないぐらい神々しい姿へと変化していた。
「そ その弓は!」
聖弓アルテラミス・命中率は魔法で守られていない限り100%、そして飛距離は10倍、射手には常に集中力3倍と筋力10倍と言うアシストを与える、もちろん自動修復とリジェネ+5(秒)などの追加能力を使用する者に与える。
そして最大の利点は矢が要らないと言う事、魔力を矢に変換しつがえる為、魔力次第だが打ち止めがなく、連続して何発も発射することが可能。
敵に当たった後は弛緩魔法のおまけつき、矢が当たると魔法で解除しない限りかすっただけで数時間は動けなくなる。
各パラメーターは+10そして使うほどに成長すると言う。
「はいあげる」
「あ ありがとうございます聖女様」
「さっそく試してみて」
「はい」
見ればいつの間にか伝令役の魔族はあたりを見渡しても姿が見えない、だがマーベルのホークアイで探すと1キロ先へと逃げていた、いつの間にか治癒魔法を使い走れるようにしたのだろう。
マーベルは深呼吸すると聖弓アルテラミスの弦をアシストされた筋力で目いっぱい引き絞った、不思議なことに弓を引き絞り切ると光の矢が現れる。
狙いを定めマーベルが弦を解き放つと約1,5キロ離れた場所へと逃げていた伝令魔族の肩へと光の矢が吸い込まれて行く。
バシュン!
(あ~~)
遠く下の方から絶叫が聞こえてくる、魔族は肩に光の矢を受け体が動かなくなってしまう。
(ど どうして、からだが…)
4人目の勇者が誕生した瞬間だった。
「私も聖女様のお力になれるようになったのですね」
「えへへ、よかったね」
「はい聖女様」
目の前ではアリスリアが帝国兵士相手にまるで遊んでいるかと思われるぐらい圧倒的な槍術を振るい翻弄している。
そして下の社の前ではドーンとボルケールが魔術師と戦っている、時折こちらにも敵魔術師の放った魔法が飛んでくるが、ラポーチの所持している剣の能力なのか当たりそうなところで全て弾いているようだ。
魔族達からは離れているため魔法で弾いているのだと思われているようだが少し違う、相手の魔法は氷魔法と土魔法、どちらも弾や針状の物体を飛ばしているのだがどちらもラポーチの持つもう一つの剣の能力で弾かれているのだ。
魔剣エルアイスに備わっていた真の能力、エルアイスの氷雪系魔法は空間に氷の粒を作り出し敵が放つ全ての攻撃を無効化する、元の持ち主もここまでの能力を使い切れては居なかったのだが、ラポーチを守るため魔剣は自ら能力を発生させている。




