ドーバン砦
ドーバン砦
時刻は夜12時を回りドーバン砦は数人の歩哨が交代で見周っていた。
「今日はなんだか寒いな」
「そうか?気のせいだろ」
部屋の中に設置された転移魔法陣、この部屋の外には2名の見張りがいた。
魔法陣の見張りは3交代制で2名ずつが請け負っている。
部屋の中は薄暗く外の灯りは入らない、見張りがいる転移部屋の入り口横には松明がたかれており。
いつ来るかわからない訪問者を待ち続けていた。
「じゃあ行くわよ」
「ハイ」
「うん」
「古の魔道を司る神に願わん彼の地への道を今ここで示せ、テレポーテーション」
まずは4名が先陣を切るアリスリアが呪文を唱えるとほどなくして4人はドーバン砦にある転移魔法陣に現れた。
「いくよ雷ちゃん、まずは2人」
(OK)
バリバリ
「ウッ!」
ドサドサ
外にいた歩哨が叫ぶこともなく崩れ落ちる、すかさずアリスリアが隷属の魔法をかける。
部屋の外には歩哨の2名以外には見当たらない。
一分ほどしてドーンたちが転移してくる。
「様子はどうだ?」
「今のところこれと言って変化はないわ」アリス
「まあこの時間だからね」
だがそんな緩い一時はすぐに緊張へと変化する。
死神と言われる騎士と魔術師、それほどの相手が敵の侵入をやすやすと見逃すわけがない。
『どうやらネズミが入り込んだらしいな』
どこからか男の声が部屋にこだまする。
「誰だ!」アリス
『誰だ?だとそれはこちらのセリフだが、まあよいすぐに分ろう』
「見つかったようだな」ドーン
「ここにいたらだめだよ」レドラ
「そうだなすぐに移動しよう」
転移魔法陣のある部屋から外に出ると、どこから駆け付けたのか兵士が数人やってきた。
「こりゃ最初から飛ばさなけりゃ次へは行けなさそうだな」
7人は砦の転移部屋から外へ出ると駆けつけた兵士達とは反対の方へと逃げるが、通路はそれほど広くはなく、ゆく先々で敵の歩哨に見つかりその度に通路を変更していく。
「こりゃはめられたかもしれん」
【もう面倒じゃわしは戦うぞ】
「あららそれじゃ二手に分かれましょう」
「仕方ないわ じゃあ、ジャクラインとレドラはボルケールと行ってくれる?」
「分かったわ」
「任せて」
「次の転移魔法陣が見つかったら場所を知らせて」
「了解した」
2股の分かれた通路を二手に分かれて進んでいく、先ほどの部屋には転移魔法陣が一つしかなかった。
まるで迷路の様だが一応この砦の地図は手に入れてある、但しそこに何があるかまでは書かれていないため、大まかな部屋の位置や通路しかわからない。
「どうポーチ、悪い奴はいなさそう?」
「今のところはいないよ」
「変な奴がいたらすぐ知らせてね」
「任せて」
二手に分かれたことが良かったのか、レドラとボルケールが暴れだしたところで、そちらの方へと兵士たちは気を取られだした。
「騒がしくなってきたわね」
あちらこちらで砦を守る兵士達の声と派手な爆発音らしき音がする。
「いたぞ~」
「あらら、こっちにもきたわね」
「任せろ」
「後ろからも来たわ」
通路の幅は約5メートル高さは3メートル50センチ、ドーンもやや腰を低くしながら走ってきた。
「後ろは任せて」
後ろはアリスリアが受け持つ、背中に背負った聖槍ロンドワール、普段は1メートルもないくらいのステッキのような棒だが、手に持って構えたとたんに50センチ先が伸びさらに刃の付いた穂先まで現れる、もちろん独特な模様は銀色に輝きその力を誇示するかのようにきらきらと光りを反射する。
「いたぞ~」
「かかれー」
シュン・ビュッ
シュシュシュ
「ぐあ~」
ドンッ!バキッ!
前の方ではドーンが剣ではなくこぶしでやりあっている、通路の広さを考えると彼の剣では大きすぎる。
叩き込んだこぶしを喰らい頭をしこたま壁に打ち付けて意識を手放す帝国兵、この狭い通路では魔法の使用もかなり気を付けないと自分達まで影響を受ける。
しかも気付いてから魔法を詠唱したのでは遅すぎる、廊下は曲がりくねっているため、出会ってすぐ攻撃できなければやられるのは自分の方だ。
「よし前は片付いた」
「こっちもよ」
「進もう」
手に入れた地図ではあと少し進むと次の町への転移魔法陣がある部屋へたどり着く予定。
ドーンたちは敵を倒しながら、目的の部屋へと向かっていく、そこには死神と呼ばれる騎士が待ち構えていた。




