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褒章

褒章


ドーンたちがバラン領アルミナス市にやってきて2日目すでに町はドーンたちによりほぼ占領された形だが。

それは完全にとは言えない、数日経てばいつかはこのことが他の町、中央都市の魔族達に知られてしまうだろう。

その前に王城へ潜入できれば良いのだが。


「それじゃあ行きましょう」

「はい姫様」


登城する場合の魔法陣は、新たに魔族に作らせることになった、それは本来3~5人用の魔法陣だと小さいと判断したためだ。

今回褒章のため登城するのはドーンたち6人と伯爵そして伯爵についていた魔族2名と言う9人で王城へ転移することになったからだ。

数回に分けても良いが、それではドーンたちが現れたと同時に大騒ぎになる、一緒ならばなんとか説明できるだろう。

それと転移してすぐの布陣も練習しておくことになった。

王城側の転移魔法陣は城の外にあり、そこには当然ながら警備兵も常駐している。

いきなり9人しかもオーガが2名、だから転移してすぐにドーンたちには膝を着くようにしてもらう。

いわゆるかしづく形で登場するわけだ、そうすればまるで家来のように見えるだろう。

もちろん7人の左右を守る形で位置まで決めておく。

もちろんドーンたちは化粧で体全体を赤黒く着色し頭には角をつけてオーガっぽく見せるわけだ。

ラポーチにはドレスを着せて伯爵の子を装う、もちろん姫様には伯爵の妻と言う名目で同行する段取りだ。

アリスリアやトッツイーは側付きとして、服装もそれ用に着替えて用意することになった。


「まさかここまで変身できるとは?」

「あら結構似合ってるわよ」

「プッ」ラポーチ

「笑うな!」

「だって~」

「大丈夫ですここまで変装すれば必ず成功しますよ」

「それではまいりましょう」


大型の転移魔法陣に9人が入り魔族2人が魔法を唱える、時間も指定されているため間違えてはいけない。


「古の魔道を司る神に願わん彼の地への道を今ここで示せ、テレポーテーション!」


現れたのは城から少し離れた転移魔法陣、当然そこには警備する兵士が数人いる。


「わが名はトマス・コートマン伯爵である」

「ようこそおいでくださいました」


そこには警備の兵士とは別に魔族の案内人が出迎えていた。


「ずいぶん大勢でいらしたのですね」

「はいお城へ行くなら私もいっしょにと主人に頼みましたの、オホホ」


姫様はこの状況を楽しんでいるようだ。


(姫様少しひかえてくださいまし)

(だいじょうぶよすこしぐらい)


そしてオーガに変装したレドラとドーンが立ち上がると、警備兵から声が漏れた。


「で でかい」

「申し訳ございませんこちらの方々は?」

「私の護衛だ、何か文句はあるか?」

「はい、褒章の儀は伯爵様のみ王と接見する決まりです」

「ではどうしろと?」

「儀式の最中は別室で待機していただく決まりです、魔族の方はそのままで構いません」

「妻である私もですか?」マリア

「あ~奥様でしたらご一緒してかまいません」

「私も…」

「こちらのお嬢様は?」

「私の娘です」

「おとなしくしていられますか?」

「はい」

「それならばご一緒されて構いません」

「ありがとうございます」マリア

「ではこちらへ」


執事風の魔族に後ろからついていくと、まずは待合室のような場所へ通された。

そこにはいくつかの絵と椅子、そしてテーブルが置かれていた。


「ここでお待ちください」


ドーンとレドラは部屋に入ろうとしたが警備に止められてしまった、確かに中は天井がそれほど高くない。


「仕方がない」

「我慢だね」


2名は部屋の外でお互いを見る、今にも見合って吹き出しそうになるが何とかこらえている。

それから数分して今度は侍女風の女性が2名現れた。


「それでは本日、褒章の儀を行います、謁見の間へ5名様ご案内いたします、我々の跡を付いてきてください」

「はい」

「ハイ」

「参ろう」


城の中はさほど変化がないように見えたが、魔族の匂いがラポーチの鼻についた。

操作系魔法の使い手が多く城に入り込んでいるせいか、術用の香木の香りが廊下に漂っている。

控室から数分歩くと城の真ん中へとやってきた、そこには操られている現王ハバウル・エイジアル・ローハイルが中央の椅子に座りその隣には妖艶な美女が立っていた。

5人は王の前まで進み膝を着く、ラポーチもこの所作を丸一日かけて練習したのだ。


「おもてを上げよ」

「まずは今回の働きによる褒章の授与でございます」


この時を待っていた、計画はこの瞬間マリアルーナの結界魔法で魔族も兵士も城から出入りできなくすること。

そしてラポーチの持つ剣の力で魔族や帝国の兵士を動けなくすること、そのためにラポーチはドレスの結び目を花に見立てて魔剣エルアイスを腰に隠して持ち込んだ。

間髪入れず2つの魔法が城を駆け巡る、その威力は半端なかった。


「わが力の権限により聖なる結界をこの城に、スピリチュアルドーム!」マリア

「聖なる力をわが手に悪しき思考に災いを、フリージングワールド!」ラポーチ


作戦はこの時マリアルーナの聖魔法による城全体に結界を張ること、要するに外からも内側からも誰一人入れないようにすること。

そしてラポーチの剣が持つもう一つの能力、魔剣エルアイスの氷系魔力による魔族の粛清。

と言っても凍らせておくだけで殺すわけでは無い、しばらく身動きできなくすると言う魔法だ。


「なんですかあなたたちは?」魔女

「何故あなたは魔法の影響を受けないのです?」マリア

「どういうこと?」魔女

「あの人は魔女ジャクライン」ラポーチ

「どうしてその名を」魔女

「私は聖女ラポーチ」

「私は元第5王女マリアルーナ・ブリタス・エイジアル・クルスロー、兄を返してもらいに来ました」


「結界魔法に氷像魔法、それに聖女ですって?」

(もしかして占いに出ていたのはこのこと?)

「近寄らないで!」魔女

「大丈夫卵は私が取り返してあげる」ポーチ

「なぜ卵のことを?」

「そこの魔族の考えが私の中に流れてきたから」


王座の横にいた魔族2名は凍り付き身動きできない状態だが、すでにラポーチの鼻により彼らの考えも読み解いていた。

もちろん魔女ジャクラインの思いもラポーチの能力で分かっていた。


「それはどういう?」

「彼女は聖女そして相手の心を読めるのです、私もですが」

「やはりこのことなのね、分かったわでも私では彼の魔法を解除できないわよ」

「大丈夫任せて」


そういうとラポーチはハバウル・エイジアル・ローハイルに駆け寄り両手を彼の手に当て祈る。


「聖なる力で魔を退けよ、オールクリア」


マリアルーナも使っていた聖なる魔法だが、ラポーチとは言葉は同じだが力はやや異なる、ラポーチの魔法の方が直す・いや正す力が大きいのだ。

そしてラポーチの願いによりマリアルーナの兄である現王が正気を取り戻す。


「お兄様!」

「マリアルーナ?どうしてここに?」

「私はこの国を救いに参りました」


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