港町アスペル
港町アスペル
海賊が出てから三日は何の障害もなくラポーチ達を乗せた船は予定通りエイジアル王国の港へとたどり着く、だがその町はすでに封鎖されていた。
「ありゃ兵士だね」アリス
港から1k手前で遠眼鏡を手に港の様子をのぞいてみる。
「おねえちゃんあたしにも貸して」
遠眼鏡を貸してもらい港の様子を見てみると、そこには船が何隻か泊まっているだけで人の姿はほとんど見られなかった、しかも桟橋には兵士とみられる槍を持った人影が。
「絶対通さないって思ってるよ」
「やっぱりこうなるか」
「どうすんだい?」
「まあ行くしかないだろう」
「聖剣持ちが3人いるんだ何とかなるだろ」
「私もいますからまずは接岸して私がお話いたします」
船は徐々に桟橋へと向かい他の船と並べて停泊する、するとすぐに兵士が乗り込んできた。
「貴様らどこから来た!」
「ブリタス聖王国だが」
「なんだと!」
「全員捕縛しろ!」
「お待ちなさい、私はマリアルーナ・ブリタス・エイジアル・クルスローこの国の元第5王女です、国の危機と知りブリタスから帰還したところです、ブリタス聖王国と戦争するおつもりですか?」
「な…」
「剣を下ろしなさい」
「まずは船の中でお話ししましょう」
港町を警護するアイオン・トルマイン男爵の抱える警備兵は彼女が元王女であり現ブリタス聖王国の第三王妃であることは知っている。
過去にも数回この港から王女が出入りしていたからだ、だが今はどうぞと言ってすぐに国の中へ入れるわけにはいかない。
「それであなたが受けている命令は?」
「この国へゴッゾニア以外からの船は入れないことです、もちろん人もですが」
「入った場合の罰則は?」
「捕縛して留置場に入れたのち領主の判断で死刑か奴隷にするよう申し付かっております」
「ではまずはその法律は私の権限で変更します、アイオン男爵をここに呼んでくださいますか?」
「かしこまりました、少々お待ちください」
【お姉ちゃん魔族がいる】
【どこに?】
【港町の大きな建物の2階でこっちを見てる】
「待って!」
「はい?」
「この街には魔族がいるわよね」
「はい今は全部の町にリューゲル魔王国から、同盟国の証だという名目で全ての爵位持ちに1名から数名常に同行しております」
「まずいわね」
「ポーチ魔族だけ雷王剣で狙い撃ちできないか?」
「ちょっと待ってて」
(らいおうちゃん魔族だけやっつけられないかな?)
(あ?なんだとめんどくせ~な~)
(そういうこと言うんだ、せっかく暴れさせてあげられそうなのに)
(マジ!)
(そうだよ~手始めに魔族ね)
(やるやる、どこにいる?)
ラポーチは人の考えていることが分るだけではなく剣や槍などの武器、特に魔剣や聖剣などの魔法具が考えていることもわかってしまうスキルに目覚めていた。
特に所持している時間が長いほどその力を扱える力は増大し、今は武器の意思までわかるようになっていた。
「見つけた!らいおうちゃんやっちゃて~!」
(いくぜー)
ゴロゴロゴロピシャーン!
バリバリバリ
「ぎゃ~~」
遠くで約2名ほど叫び声を上げてその場で意識を手放した。
「それじゃ行くよ」
「おお」
「久しぶりだわこの感覚」
「やった~」
以降は町を警備する衛士と共に乗ってきた船を降りる、町の中は歩く人も少なく目を合わすとすぐに建物の中へと逃げるように立ち去ってしまう。
歩くこと数分、それは港から見えた一番大きな建物の中。
「ここ?」
「うんここだよ、匂いもする」
確かに焼け焦げたような香りがあたりに立ち込める、意を決して建物の扉を開けるとそこには数人の男女が落雷を浴びて倒れている魔族の介抱をしていた。
「ちょっとお邪魔するよ」
「あなたたちは?」
「私はマリアルーナ・ブリタス・エイジアル・クルスロー第5王女です」
「私はラポーチ」
「アリスリア・フローゼルよ」
「ドーン・ボルカノだ」
「あたいはレドラ・ガリオン」
「アイオン・トルマイン男爵はどこにいる?」
「あそこです」
建物の屋根は一部がはがれ穴が空き少し煙が出ていたが、火事が起きるほどの状況ではなかった、誰かが魔法で火を消したらしい。
床には3名の人間が伸びて居る、2名はその容姿から魔族と判断した。
「この方が男爵です」
「汝の傷を癒し束縛から解放せよ、オールクリア」
すると男爵とみられる男性の顔から苦しみの跡が消え去っていく。
その間にアリスリア達は魔族2名の手足を縛っていく。




