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海賊戦

海賊戦


それは夜だった、近くに小島が数か所ある割と浅瀬の海峡。

そこにはゴッゾニアから金をもらって海賊を生業とする一味が暮らしていた。


「おい明かりが見えるぞ」

「どこの船だ?」

「帆の数は3つだな」

「おかしいな」


月明かりに照らされて浮かび上がった船影は下半分がマフィアが所有している船に似ているが、その船の帆は2つだったはず、だが目の前に現れた船の帆は3つある。


「おい船を出せ」


それは小舟の様だが数は3隻、長さ12メートルほどの5人乗りの釣り船のような船だが、乗り移るにはこの方が早いし、3か所から同時に乗船することで敵のかく乱も兼ねている。

大きい船もあるにはあるが、横付けして乗り込むには人数がよほど多くなければ数で負けてしまう場合もあり得る。

目の前に浮かぶ船はどう見ても商船ではない、それは船底の沈み方でもわかる。

と言う事は戦艦の可能性もあり得る、ただし戦艦というには船首にあるはずの飾りがない。

よく船首に女神やライオンなどの飾りが取り付けてある場合がある、あれは持ち主の紋章や国のマークをあしらったものだが、目の前の船にはそれが見当たらない。

そう考えると帆の数から、改造船という見方もできなくもない。

まずは近寄り乗っているやつを確かめてみるのが先決、そして貴族なら金や女を奪う。

マフィアや同じ海賊ならば話し合いで解決する。

ブリタス聖王国の船なら奪ってゴッゾニアに高く売れる、捕虜として捕まえて引き渡せばさらに儲かる。


「ゆっくり近づけろ」

「へい」


夜11時を回り船は3名の船員が交代で操舵していた、夜間でも風が吹けば帆をはりゆっくりと進んでいく。


「おねえちゃんなんか来たよ」


ラポーチの鼻はこんな時もしっかりと利いていた。


「レドラ」

「なんだ?」

「お客さんだって」

「そろそろ出る時間か」

ゴンゴツン


船底にごつごつと何かがこすれる音がする、ドーンとレドラは甲板に、船員たちもその声で起きだすと5人が甲板へそしてラポーチ達は船室の窓下に潜み何者が近寄ってきたのかを探ってみる。


【お姉ちゃん海賊みたいだよ】

【わかりました、少し様子を見ましょう】


「おーいこの船の船長は誰だ?」

「俺だが」


誰かが声をかけた時に女性だと甘く見られるため最初の対応はドーンが行うことになっていた。


「きょ 巨人族!」

「悪いか?」

「いやあんたの船か?」

「そうだ」


海賊の一人がそう話している間にほかの船に乗っていた仲間が乗り移ろうと、ラポーチのいる船窓にロープをかけた。


【こちらからも来たわ】

【任せて】


海賊がロープをかけて上りだしたところでラポーチは剣を抜く。


「いっけ~」

バリバリバリ

「ギャー」

バコン!ドン!


船の横から稲光がする、小舟からロープを伝い上ってきたところでラポーチの剣から稲妻が走る、その船に乗っていた海賊4人は全員感電して動かなくなってしまった。


「何のつもりだ!」

「あ?仕方ねーやっちまえ」


ロープをかけて登ってきたところでドーンとレドラには敵うはずもなく。

海賊たちはなすすべもなく全員お縄になる、全部で17人。


「ちきしょーなんだお前ら」

「巨人族だが」

「ほどけこのやろ~」

「ほどくわけないだろう」

「どうすんだいこいつら」

「連れていくには面倒だ、それに今のエイジアルではこいつらの罪は問えなさそうだ」


結局縛り上げた状態で小船に乗せて流すことにした、運が良ければ助かるだろう。


「てめーら覚えてろ、絶対殺してやる」

「ああ覚えていたら相手してやるよ」

「くそ~~」


この海域は小島が多いためいずれ島にたどり着き生き残れる可能性もある。

本当ならば全員殺してしまうことも仕方ないのだが、ラポーチや王妃の手前それはできなさそうだ。

聖女2人を連れた旅に殺しはあまり似合わない、甘いと言われればその通りなのだが。

だからと言って皆殺しじゃ海賊とさほど変わらないのも事実。

出来れば奴らを懲らしめてまっとうな道へと心変わりさせてやるのも方法の一つだが、今はその猶予もあまりない。

後3日もすればエイジアル王国の港が見えてくるはずなのだから。



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