港町での生活
港町での生活
マフィアとの戦いが終わり、これから本当の意味での生活がこの町に住む人々に訪れる。
浮浪者だった乞食は全員がラポーチの力で体力を回復し、港の作業が出来るようになっていた。
子供達は市場での店番や小間使いの仕事をあてがわれ、ちゃんと賃金も支払われるようになり皆喜んでいた。
巨人族の二人も船の改造に手を貸すことにした、大きな帆を取り付けるにはやはり力持ちがいた方が早く済む。
そして本来の港にあるべき姿、それは漁業の自由。
船はあれど魚を獲る事を制限されていた漁師達も金を稼ぐ為に競って漁へと出て行った。
そして港はいつに無く賑わっていく。
その噂を聞きつけ各地から仕事を見つけに人がどんどん流れてくる。
「どう船員は見つかった?」
「いま面接しているところよ」
「今のところ3人かしら」
「後7人ね」
「いいえ最低20人よ、あなたが乗る船だけじゃ任せられた船の乗組員が足りないのよ」
「ああそうよね」
マフィアと商人から手に入れた船は5隻大型船が2隻と中型船が3隻。
中型船1隻はアリスリアが貰いうけ帆船として外交航路を行く、だが後の4隻は運搬船と他の国に行くようになる。
もともとの船員もそのまま雇う形になったが、それでも人が足りない。
それに港に停泊している漁船の乗組員もいきなり漁が解禁になり何処も人手不足は否めない。
まあ他の地区から仕事を求めてやってくる人も増えたので数ヵ月後には解消されると思うが。
出来るだけ早いうちに自分が抱える船の乗組員だけでも確保しておきたいところだ。
そこにドーンがやってくる。
「船の補修が完了したぞ」
「有難う、見にいってくるわ」
「いってらっしゃい」
港はいつに無く活気に溢れ、天候も良いため次々と漁船が収穫した魚を積んで入ってきていた。
一方ラポーチはと言うと、レドラの監視の元剣術の訓練に励んでいた。
「そうそこで右に避ける」
「こう?」
「そう、その時にちゃんと相手がどう動くか見ておくのよ」
「次の動作を探るのね」
「その通り」
剣術の相手は浮浪児だったザックとクロナ、今は昼休みで他の仲間と交代したところ。
「あんた達もちゃんと覚えておくのよ」
「解ってるよおねえちゃん」
レドラも休みの時間以外にはアリスリアの命令で見回りや守備隊の訓練に付き合っている。
マフィアが壊滅した為に急遽作られた守備隊だが現在5人その任に着いている。
だが見回り警備隊も2人はそう言う仕事の経験があるが、後の3人はど素人の為レドラやアリスリアが教えてやらない事には警備も任せられないのだ。
2人共に後数日でこの町と離れるために、それまでにもう少し訓練しておきたいところだ。
「そっちもちゃんと見ておくのよ」
「はいあねさん」
「そうしないと死ぬ事もあるからね」
「おどかさねーでくださいよ~」
「脅しじゃないんだけどね~」
「大丈夫だよおじちゃん、いざとなりゃ俺らが守ってあげっから」
「だとさ」
「こりゃまいったな~」
浮浪児たちも町の見回りを買って出てくれるらしい、彼らは仕事ができ飯を食えるというだけで、今が一番幸せな時だろう。
しかも現領主が彼らの後ろ盾となってくれるのだから。
「え?あたしのこと?子供は好きよだって美味しいもの作ると喜んでくれるもの」
いつの間にか領主の館で子供たちも食事を摂るようになり、この時から丘の上の洋館では楽しそうな笑い声が絶えなくなった。