幻術使い
幻術使い
その男はいつの間にかアリスリアの目の前まで移動していた、走っているのかも分からないほどの速さだがその挙動はまるっきり予測がつかなかった。
「運が悪かったな」
「なに?」
キャイン
何時差し出したのかも分からないほどの速さ、とっさに槍を自分の前に戻し正中線上に縦に受ける。
相手の剣と言うより刺突針に近い鉄の棒がアリスリアの槍によって急所からはずされたが、その代わりアリスリアの肩を突き刺す。
「ぐっ」
その男は直ぐに離れると呪文を唱える。
「オーム・トラール・エクローム」
「我幻術の糧となれ」
そう唱えると懐から魔法札を取り出し投げ捨てる、その魔法札は地面に落ちる前に消えると、アリスリアの目の前にはいつの間にか同じ姿をした男が5人現われた。
彼女は直感で、まずいと思ったが時すでに遅し、男はアリスリアに迫っていく。
「幻術か!」
「そうだ、使うのは久しぶりだがな」
(体が言う事を利かない)
「針の先には痺れ薬が塗ってある、無駄な事は辞めるんだな」
「クッ」
カン キャン キャン カン!
痺れた体を無理やり動かすが5人に見えている敵をかわすのがやっとだった。
「よく見れば中々いい女だな、そろそろ薬も利いてきただろう、この場で可愛がってやろう」
「やめろ近づくな!」
最後の力を振り絞り槍を目の前に掲げて自分の足へと突き刺す。
ようやく5人に見えた敵の数は一つにまとまりだすが、自ら足に突き刺した槍の痛みでさえ痺れ薬に抵抗する事はできなかった。
グサッ!
「クッ はあはあ」
「おやおやまだ諦めないとは」
アリスリアはめまいと痛みをこらえて更に足を突き刺す事で幻術から逃れようとしたが。
今度はその槍さえも男に取られてしまう。
「面白い槍だな」
その槍は弾力があり良くしなる蔦の茎で作られていた、加工にはかなりベテランの工芸師が時間を掛けて作ったものだと伺えた。
補強のために銀と鉄を使い装飾のように模様が入っていたからだ。
「だが残念」
バキッ!
男は槍をまっ二つにたたき折ってしまった。
「これで得物は無くなったがどうする?」
「だんな、殺さないでくだせい、その女は良い値で売れます」
「いいやこいつは俺が貰う」
「え~」
目の前で朦朧としているアリスリアの体を嘗め回すように見ると、次に男は背後に回り後ろから抱きしめると傷口を掴み指を押し込む。
「ぐあー」
「どうだ、痛いか?ではこいつはどうだ」
男はそう言うと又懐から何かを取り出しアリスリアの口を覆うように押さえる。
「なにを…んん」
「どうだ?東方に伝わる媚薬の一種だ、痛みが快感に変わる」
男の指が食い込んでいたはずの痛みはいつの間にか消えそしてドロッとしたえもいわれぬ心地よさが襲ってきた。
「ほらどうだ」
男は徐々に大胆にアリスリアの体を触りだした。