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港町カーマン

港町カーマン


この時代船は帆船とは言えず手漕ぎが主流、大型船には数十人の奴隷が漕ぎ手として乗船している。

当然の事だが港町は各国からの船の出入りが激しく町はかなりの賑わいを見せていた。


「おじちゃんやっと着いたね」

「ああここからは船になる」

「なんだ、戦で手に入れた港にしちゃ賑わっているねえ」

「ああ、蛮族がこの港に攻め入った時俺たちがいたからな」

「なんだあんたここで戦ったんだ」


この港を占領できれば、蛮族はこの大陸に橋頭堡を築く事ができ、大陸占領の第一歩となるはずが、巨人族率いる聖王国の軍が撃退したことで。

今回の戦争は聖王国側の勝利と言う事になったが、蛮族は魔王国と手を組み別な地域を現在は攻めて来ている。

蛮族をやっつけても別な場所から又違う国が攻め入るという感じ、もぐらたたきのようだが、敵の背後には帝国まで関わっているという話しで。

港には傭兵くずれが多く食い扶持を求めるものも数多く訪れていた。


「おい」

「…」

「おい でかいやつ」

「ん なんだ?」

「やっと振り向いた」

「何か用か?」

「うえへへへ、どうだうちの船に乗らないか?」

「何処のだ?」

「ほらあそこに見えるだろ」


それは奴隷船、たぶんこの港から戦場へと行く船、どう考えてもまともな話しではない。


「すまんな他を当たってくれ」

「そりゃ無いですよ、良い話なのに、来れば金貨3枚先取りなんですぜ」

「その代わり逃げられないように鎖でしばられ奴隷にされるんだろ」

「な そんなことないですよ」えへへ

「あんた止めておきな、この旦那は金貨100枚でも雇えないぐらい強いんだよ」

「金貨100枚!」


スカウトをしている小男は顔を引きつらせながら他の場所へと移って行った。


「ねえおじちゃん船に乗るなら話しを聞いても良かったんじゃないの?」

「いやあの船はおれたちが行く場所とは違う所へ行くから話すだけ無駄なんだよ」

「ふ~ん」

「それにあの船は奴隷船だ、行くとあっという間に身包みはがされて逃げられなくなる」

「そうなんだ」

「それじゃ行ってくる」


この町で船に乗るには船主が集る組合へ行って話しをするのが一番なのだが、この賑わいの中で沢山の荒くれ者がいるという事は、船に乗るのも命がけと言う可能性が高い。

実際組合などと言う組織がこの港にあるかどうかも疑わしい、勿論あれば即話に行くが、どうやら組合はなさそうだ。

ならば船主や商人が何処にいるかといえば、この時代酒場へ行くのが一般的な考えだ。

一旦海に出れば海賊もいれば敵国の軍船もいる、海を渡るのならば商船に乗るのが一番の早道だが。

その商船もピンからキリまで、できればやや大きめな船で目的地へ真っ直ぐに行く船を捜したいところなのだが、果たして見つかるだろうか。

港の向かい側にある道を数分歩くとそこにはやや大きな酒場があり、中はどうやら酒場兼食堂のような場所だった。

中に入るとそれぞれのテーブルには船主や船長と見られる男が居て数人の取り巻きが椅子に座り次の船出を待っている間にゲームをしているようだ。


「オらこの一振りに賭けるぜ」

「おめえもう全部つぎ込んだんじゃねえのか?」

「まだこいつがある」


腰に下げた袋から小さな真珠と見られる粒を2つ取り出すとテーブルの上に置く。


「どうだ?」

「100ジールってとこだな」

「そんなはずねえもっとするはずだ」

「いやならいいんだぜ」

「くそ しかたねえそれでいい、早くよこせ」


彼らがやっているのはいわゆるチンチロリンと言うゲーム、サイコロを2つ以上振って出た目の数で優劣を測るというゲーム。

さいの目で勝敗が決まりぞろ目を出せば総取り、そんなゲームに海の男達は明日の食い扶持を賭けて勝負しているのだ。

負ければ数日ただ働き、勝てば酒がタダで飲めるそれだけの事。

そんな者達がいると思えば、反対側のテーブルには怪しげな雰囲気を醸し出し、いかにも悪人ですとでも言いたげな顔をしたひげ面の男もいる。

そんな荒くれ者達に一瞥し奥の方に陣取る一団へと近づいていく。


「なんだでかいの?」

「船に乗りたいのだが」

「俺の船はエイジアル王国行きだが、それを分かっているのか?」

「ああ」

「ふーん、金は有るのか?」

「ああ細かい金なら少しは有るが、できれば用心棒として雇われても良い」

「いまは用心棒は足りてるな」

「そうか」

「金貨3枚だ」

「高いな」

「おまえのでかさじゃそのぐらい貰わないと合わないだろう」

「食事は?」

「別料金だ」


ブリタス聖王国からエイジアル王国までは船で4日かかる、陸地を行く事もできるのだが、その場合3千メートル級の山々とゴッゾニア帝国が立ちはだかる、帝国は聖王国とは敵対関係。

陸地を進めば捉えられ拷問されるか奴隷になるか、だから海を行く道しか残されていない。

その代わり4日は海の上で暮らすことを我慢しなければならないのだが。

4日間、当然食料は必要で持ち込みも可能なのだが、大抵の場合それは持ち込み料金と言う形で別途お金を取られる、だから持ち込まないで食事付きの場合はと質問したわけだ。


「4日分一日一食で100ジールだ」

(100ジール1万円・金貨1枚1000ジール)

「出港は?」

「あさっての朝だ、決めるなら早くしねえと直ぐ埋まるぜ」

「そうか、3人分なんだが、一人は子供だ」

「てえ事はでかいの2人か」


そこからは商人と見られる人物と船長がどうやら話し合っているようだ、彼らの船はかなり大きいのだが、この時代の船の大きさは大きいといっても、せいぜい20メートルから30メートルあればよい方、漕ぎ手は20人から30人。

商船の場合は底が貨物室でその上に漕ぎ手が座る場所があり3層から4層と言う構造がほとんどだ。


「子どもは金貨1枚合計金貨7枚だ但し食事は3人分で300ジールになるがどうだ?」

「それで良い、海賊に襲われたときは対応しなくて良いんだな」

「ああ用心棒なら5人雇ってあるからな」

「そうか、わかったでは前金で金貨3枚、残りは後でいいか?」

「ああいいだろう」


子分達がニヤついていたのが気になったが、この船をはずすと後は奴隷船や他の国に行く舟ばかりになる。

まさか貸しきりに出来るような金銭を持っているわけではないし、船の大きさもこの商船が一番安定している。

費用が高いのも、彼らはそれを知っているからなのだ、だが用心棒がいると言ったのが気になる。


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