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貴族の政略結婚

貴族の政略結婚


アリスリアが地元へ帰りその一ヵ月後お見合いの席が設けられた、両者共に退くに引けない状態まで追い詰められた。

断れば勘当を言い渡され、一般人へと格下げされる今までの贅沢な暮らしや人より上の優越感が全て無くなるのだ。

それはお貴族様にとっては死活問題、良い酒良い果物、何処へ行ってももてはやされ名前を聞くだけで人々は傅く、そんな暮らしを捨てなければいけない。

中には本当に捨て去る人も居るのだが、この2人はそれを捨てるような覚悟はこの時点では持っていなかった。


「それでどうするのよ?」

「そんな事決まっているじゃない、両方の親を騙すには一応形だけでも結婚すればいいのよ」

「でもあたしは縛られるのはいやよ」

「だからそうじゃなくって装うだけよ」

「あんたはそれで良いわけ?」

「仕方ないじゃない、私は男の子の方が好きなんだから」

「そうなんだ、あたしも始めて見たわよ、おねえとか」

「あら結構多いのよ、このご時勢知られるとまずいから皆黙っているけどね」

「そうなの?」

「あんただっておにいみたいじゃない?」

「ち 違うわよ、あたしは正常よ!」

「じゃあ何でお見合いを断っていたの?」


まあこの時代の男でアリスリアの相手が務まる男はほぼ貴族の中には居なかっただけ、居たとしてもすでに結婚しているかもしくは妾を数人囲っているような御仁しかおらず。

それならば一生独身でもかまわないと思っていただけだが、その考え方自体が彼女をそちらの性癖だと思わせていたとしても分からなくはない。


「まあいいわあたし達の利害が一致していればこの先上手くやればいいのだし」

「じゃあ良い男が見つかったらそっちへ行っても良い訳ね」

「かまわないわよ、但し離婚するとなると面倒だから気をつけてね」

「ああ確かにそこは面倒そうね」


フレアフィールという部隊を解散しひと月経った時、部隊の仲間は全員ばらばらになってしまったと後で聞いたが、それも仕方の無い事。

皆幸せになってくれればよいと思うが、このご時勢強い女は何かと生きるのは難しかったりする。

そう言うアリスリアも何とか親の勧めをこなし公爵の3男と結婚する事に同意した。

両家はこれで心配事を一つ片付けることができたが、それからの方が大変だった。

アリスリアは事あるごとに宴や模様し物へと借り出されていく、要するに人寄せパンダのようなもの、毎週事あるごとにパーティだの祭りだのと本来兄である次期当主がやるはずの事を、新婚の女剣士だという珍しさだけで呼び出される日々。

一年が経った時にはスレンダーな身体は太りだし、過去のりりしい姿はどこへやら。

だが、彼女はそうなってからある事を始めた、昔取った杵柄とでもいえる、そう私兵の訓練。

ローゼンバーグ公爵家では私兵である騎士隊を有していた、その人数は100人規模だが全て精鋭であり、それぞれの剣術の腕もかなりのものだった。

そこにアリスリアは出稽古に通いだしたのだ。


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