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捨てられていた

捨てられていた



その犬は段ボールに入れられ道端に捨てられていた、薄い茶色の毛に包まれ小さな鳴き声を上げていた。


「キャンキャン」

「ク~ン」


数日その場所にいたが、3日後その犬は近所の子供の手により食べ物と家を与えられる。

だが彼はいわゆる駄犬、その理由は生まれながらに目が見えていなかったから。

但し、彼が捨てられた理由は目が見えないからではなくただの廃棄だった。

飼うことが許された家でも、いずれ捨てられていたかもしれない。

運よくたどり着いた家では、そんなことなどお構いもしない優しい家族が待っていた。


「ポチ、おいで」

「ク~ン」

「ハッハッハッ」

「お~よしよし」


いつものスキンシップが始まった、いつもこの人間は私のおなかをくすぐっては私が喜ぶのを見て自分も喜んでいる。

だがおなかが減っていた3日間から救ってくれたのは彼だ、それから私は彼と家族になった。

私はずっと真っ白い靄の中にいた、よく椅子の足に体をぶつけては泣いたこともある。

トイレの場所さえ最初はどこかわからなかったが、鼻は何とか利いたので一月後、匂いを嗅ぎ分け場所を特定することができた。

慣れれば何とかなったが、散歩に行くと私は早く走れなかった、目の前に何があるかわからずにおいを嗅ぎながらゆっくりとしか進めなかったからだ、最初は助けてくれた彼もそれが分からず、かなり首を引っ張られたのを覚えている。


「ク~ン」

「ハッハッハッ」

「早くこいよ~」

「パパ ポチは走るの嫌いなのかな~」

「違うよ雄太、彼は目があまり見えないんだよ、ほら目を見てごらん瞳が白く濁っているだろ」

「ほんとだ」

「だからあまり引っ張ったりしたらいけないよ」

「ふ~ん」


そんな優しい家庭のおかげで何とか天命が過ぎるまで育てられ10数年が過ぎた。

犬の寿命は長くない、特に私のような障害があるものの命は短い。

最初捨て犬だった私だが、概ね幸せに一生を迎えることができた、できれば次の生をまたこの家族と一緒に迎えてみたいが。

そんなうまい話が来ることはないだろう、そして目の前がどんどん暗くなり私は難もあったがほぼ普通に一生を終えた。


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