リューゲル魔王国
リューゲル魔王国
その国は長い間戦いに明け暮れていた、他国との戦争だけではない。
国の中でも支配者に重労働を課せられて多くの民が無償で働かされていた。
暴君による支配で投獄は日常茶飯事、そして無残に殺される兵士や民。
数千年前その状況を一変させる出来事が起こった。
どこからやってきたのかは分からない、その大きな体と特異な能力を使って国を作ろうとした者がいた。
今ではその姿は伝説になりつつある、暗黒竜デルガルム。
だが史述にはその姿だけが残り、恐れられたと言う話だけ。
歴史上その竜は恐怖だけではなく魔王国において政治と統制をおこなったと言われている。
逆らう生き物などいるわけがない最強の竜種。
その生き物は人型に変身しこの国の王位に収まり大陸を支配することになったが、それもすでに過去の話。
時代は移り王の子孫や側近が国を治めるようになると、あっという間に国は乱れ乱世に戻ってしまう。
そしてさらに数千年が経ちようやく少しは国も落ち着いて、再び安定の時代を迎えることになる、その国が現在のリューゲル魔王国。
最強の生き物を使わせたのが神の仕業か今ではそれも分からない。
だが当時最強の竜種はこの大陸だけではなくこの星の各地に現れたと言う史述も残っている。
暗黒竜デルガルム、神聖竜オーパ、大地竜アバスト、天空竜ベルガード、戦闘竜ブルデスタ。
火炎竜ファーガン、海神竜リバイアス、各大陸に1体ずつ現れた竜族、それぞれに特殊な能力を持っていた。
彼らは何のためにこの世界に現れたのかは不明とされているが。
学者たちの間では神が使わされた建国の為の礎だと言う見方が大きい。
本来この世界にはいなかった竜種、その後さまざまな生き物と交配が進み今でもその遺伝子は残っている。
ラポーチの力で転生できた聖竜オーパはその性質上、過去の歴史を知る者の一人でもある。
「それでこれからどうする?」ドーン
「あたしらは戦いはできても政治なんてできやしないよ」
一斉にラーサーの方を向く。
「おいおい、そうなるのか…」
「ボルケールでもいいんじゃないか?」
【それは無理だ、俺にはドラグニアを統べると言う仕事がある】
ドラグニア、それは大きな島であり火竜達の住処でもある。
人口は1万程度だが全員が変身可能な竜族であり、火炎竜ファーガンの子孫だと言う話もあるが、それを知る者は現在ほぼいないと言って良い。
ラーサーとボルケールを比べても明らかに違う遺伝子が見て取れる。
戦闘竜以外はあまり交配が進まなかったと言えなくもない。
【わしよりあんたの方が向いていると思うがな】
「だがいいのか?」
「良い悪いと言うよりほかに誰ができる?」ドーン
「当分はこの地で魔族を助けることにして、まずは今までのやり方を変えて行かないとね」ジャクライン
「聖女様はどうする?」ラーサー
「う~ん でも戦いは終わったんだよね」
「そうなるな」ドーン
「じゃあ町を見て回りたい」
「やっぱそうだよね」マリー
「聖竜様は?」
(私は聖女様について行きます)
「分かったわお姉さま」エアルータ
どうやら聖竜オーパは多くを語ることは止めた様子、過去の歴史を聞いたとしてもこの先どうするのかなど分かるわけでは無い。
ただこれまでを振り返り今生きている者達が未来を決めればよいと思っているのかもしれない。
駄犬伝説 完
ラポーチの聖女としての旅はここで終わる、人に転生し助ける側を見てみたいと言ったその言葉から考えると神様はあまりにも極端な世界を見せてくれたが。
彼女にとっては全てが新しくそしてすべてが美しく見えていたのではないだろうか?
生きる事の全てが戦いであり、そしてどの国も人々が生きるために生活している。
中には悪いことを考える者もいたが、それがずっと続く世の中などありはしない。
ラポーチは神ではないし彼女自身もただの少女としか今も思ってはいないだろう。
著作者 夢未 太士
令和4年11月24日
あとがき
夢未太士です、この物語はお犬様を主人公にしてみようと思い立ったのですが。
犬の気持ちなど犬にしか分からないと言う事で、自分がもし犬だったらと考えてみました。
単純に考えてワンコちゃんが難しいことなど考えちゃいないですし。
転生などと言う言葉なども分からないのではと思います。
でも拾われた過程で家族として育ったのならばその思い出は犬も人も忘れはしないのではと思います。
転生と言う言葉は最近では軽く使われるキーワードではありますが、その中には色々と形の違いがあるのではと思います。
犬から人へもしくは人から犬へ、いろんなシチュエーションの中で犬から人への転生を描いてみました。
過去に捕らわれない彼女の生き方は、ドーンと言う守護者に守られながらも、日々の暮らしは楽しいものだったのではと思います。
この後も、もしかしたら物語は続くのではと思いますが一旦ここで終わりたいと思います。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。
それでは次回又別の作品でお会いしましょう。
完




