懐柔作戦
懐柔作戦
フエン将軍は聖女と話し合う事に同意した、跳ね橋が徐々に下がると町の門が開いていく。
ラポーチは臆することなくその橋を渡り出した、当然マーベルとマリーが離れずに付いて行く。
渡り終わるとすぐに敵の兵が周りを取り囲みその隙間から指揮官とみられる女性が現れた。
「うちは魔王軍を指揮するフエン・トリトニ―や一応将軍やで」
「私は新米聖女ラポーチです、突然ですがこの町から撤退してほしいのですが」
「それはむりやな、魔王様から直接この町を橋頭保にして帝国を攻め落とす手筈や、将軍として退くなんて無理な話やわ」
「それじゃあ力ずくになると思うけど良いの?」
そう言うと取り囲んでいた兵士達が一歩引き下がる、もちろんラポーチの言葉に気圧されたわけでは無い、その後ろからいつの間にかドーンとレドラが付いてきていたからだ。
勿論、ドーンはすでにラポーチの背後で聖剣ブレイブロックを背中から抜き、周りに寄ってきている魔族たちを威嚇している。
そして下ろされた橋を渡りボルケールやラーサー達が砦化された町の中へと次々に入って来る。
(う…あれはボルケール、そしてジャクライン、それに魔族まで居るじゃないの)
「将軍お久しぶりですコッテロールです」
「何故魔族が敵に回ってはるんや!」
「あ~では詳しく説明いたします」コッテロール
魔将軍フエンはコッテロールの先輩であり上司でもある、もちろん直属ではないのだが、階級通りならばコッテロールは中尉もしくは中級士官であり4階級以上差がある。
但し、帝国の王城管理官として派遣されたことで地位は3つほど上がり、魔王国側からの地位は中佐かもしくは上級士官となる。
裏切った時点でそんなもの全て白紙になっているのだが、そんな立場の魔族がどうして敵に寝返ったのか知りたいと思うのは仕方がない。
「ほんまか?竜族が5匹、5人もおるんやと!」
いつの間にか町の一角にある食堂へと場所を移し、話し合う事に。
そこで驚愕の事実が魔将軍フエンに語られる。
【おぬしも言い伝えで聞いたことがあるじゃろう、5竜会いまみれる時世界が変わり変遷の時が来ると】
「そないなこと聞いたような聞いておらぬような…」汗
「まあかなり昔の言い伝えだからな」ラーサー
「1万年も前の物語ですものこの時代の魔族には分からないと思うわよ」エアルータ
目の前に旧ドリゴニア王朝のラストエンペラー、それに聖竜オーパ。
2千年前に海をさんざん荒した水竜ミュール、竜王国の竜王ボルケール、それに血の魔女ジャクラインまで敵に回して勝てる未来など占いをしても無駄と言う物。
先ほどまでは聖女を人質にとって何とか敵を捕らえようなどと考えていたのだが。
無謀な作戦を強行したとして敵の怒りを買ってしまえば、無残な死にざまをさらすシーンしか浮かんでこない。
「引かぬならこちらについてしまえば良かろう」ラーサー
「裏切ってしまったらええと?」
「他に方法があるのか?」
(あかんそないな事ほんまにあかん、せやけど…)
「じゃあ私が魔王に聞いてきてみようか?」ラポーチ
周りの仲間がラポーチの言葉を聞いて目を見開き、全員が首を高速で左右に振る。
「いやいやそれは無いだろう」ドーン
「どうやって行くのさ」レドラ
「だって空飛べるって言ってたでしょ」
「はい確かに空を飛べますが」エアルータ
「私も海を渡るぐらい造作もないです」ミュール
「私も飛べるよ」ラターニャ
そこからはとんでもない計画を練ることになって行った、どうしてそうなったのかフエン将軍にもわからなかった。
(何故魔王様に聞いてくることになるの?それって魔王様をやっつけるのと同じでしょ!)
魔王が言う事を聞かなければ魔王を倒すしかなくなる、確かにそうすれば敵も味方もなく戦争は終結。
後は聖女指導で魔王国の再建と言う計画を練って行くことになる、他の国に危害を及ぼすことが無いように。
沢山の国がかかわり平和条約を結ぶことになって行くだろう。
聖女ならばそうするラポーチなら絶対そう考えるだろう、憎しみが無くなり皆が笑顔で暮らせる世界。




