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魔族は戸惑う

魔族は戸惑う


静まり返った洞窟村、洞窟の入口前には意思を乗っ取られた村人たちが50人ほどラポーチ達が村の中へと入って来るのを待ち構えていた。


「まだか?」

「焦っては作戦もうまく行きません」魔族

「村人を使い敵と戦わせて混戦になったら退く作戦です、そうしなければ敵も全員は村に入らないですから」

「分かった、タイミングは任せる、絶対しくじるなよ!」魔族の隊長

「隊長来ました!」


そこには少女が一人、隠れもせず堂々と村の中へと入って来る。


「ぐあ~やめてくれ~」

「体が勝手に」

「とめてくれ~」

「それじゃあ行くよ、汝らの帯たる魔の因子を全て取り除け、マジカルクリーン」


ラポーチは村人たちの数メートル前まで近づくと、聖女の力を使い彼らに掛けられた魔法を解いていく。

その様子を遠目から見ていた魔族は、予想通り戸惑っていた。


「な なんだあの娘は?」

「隊長隷属の魔法が全て解除されました」部下

「それではどうするのだ?」

「これでは作戦が…」

「とにかくやつらが奥まで入らなければ全部無駄になる、もう少し様子を見よう」

「はい」


村びとを後ろからついてきたミュールがどんどん後方へと逃げるように指示していく。そしてラポーチはエルアイスを抜くと、その力を使い洞窟の壁と天井を全て凍らせる。


「エルちゃんお願い!」

(かしこまりました主、グランドフリーズ)


エルアイスを前に向けると、その先から洞窟の中全体が白く氷り付いていく。

その速さは魔族が起爆スイッチを押す時間さえ与える事は無かった。


「なんだこれは、いかんすぐに起爆しろ!」

「隊長起爆しません!」

「ぬぬぬ 撤退だ!」

「今度は私ね、水よその流れよ来たれ全てを押し流せアクアストリーム」ミュール


何処から出てきたのか分からない、いつの間にか壁や通路の下からどんどん水が出て来る。

まるで噴出した源泉、しかも一か所だけでは無く辺り一面から水が吹き出し、その水が流れとなり洞窟村の奥へと一気に流れ出した。


「ぐあ~~」

「ザッパーン」

「ゴゴゴゴゴ~」

「た 助けて…」

「おぼれるー」兵士

「ぐあ~」


濁流は仕掛けられた起爆魔法を洗い流し、そして魔族の兵士数十人をも巻き込んだ。

エイト村から先の洞窟は少し下り坂になっている為勢いは衰えず、その先の山脈出口10k先へと魔族もろとも押し流していく。

撤退中の魔族もさらに巻き込み洞窟内の魔族は全員が港町トローレ側の青の洞窟入口から勢いよく濁流と共に噴き出す。


「ゴゴゴゴゴゴ…」

「なんだ?」


青の洞窟トローレ側では魔族のキャンプが張られていた。

そこには当然のことだが今回、魔王国から派遣された将軍がいる。

そして駐留している魔族の兵士達はその光景を目の当たりにする。


「なんだ!」

「ど 洞窟から水が!」


魔将軍デラウエア・ジ・クールの元へ伝令の兵士が来た時にはすでに洞窟の入り口近くに設営して有ったテントや荷馬車の停車場はその勢いで全部流され、荷物担当の兵士たちが対応に追われていた。


「将軍!鉄砲水です、設営して有ったテントや荷車が流されました」

「敵の攻撃ではないのか?」

「現在調査中です」

「今すぐ1個中隊を戦闘準備させておけ」


港町を制圧したのは3日前、その知らせは敵にも知られたと言って良い。

そして洞窟を行軍するには洞窟内を全て占領してさらに向こう側の出口に橋頭保を作ってから進軍する、そう決めていた。

先行した部隊からは敵の軍隊が山脈の中心まで迫っているとの知らせは入っている。

この洞窟を全部制圧できなければその先へと進むことはできない。

洞窟の中で戦いが起これば負けても勝っても、足止めするため洞窟を埋めてしまう事はすぐ考え付く。

だが目の前の出来事からすると、味方の魔族は全てやられてしまい足止めが失敗したとみて良い。

ならば洞窟内を進み相手の足を止める事は難しい、それよりこちら側の入口で敵を待ち構えた方が有利になることは誰でもわかる。


「私も出るフエン将軍にも連絡して置け!」

「はっ!かしこまりました!」


デラウエア将軍は魔王国の中でも勇猛な戦い方を好む野戦の勇士だ、その大きな体を鎧で包み。

敵の兵士を文字通り吹き飛ばしながら戦斧を振り回す。

魔族であることに胡坐をかかず、日々武術の訓練を欠かさない、そしてフルプレートを纏うのは少しでも欠点をなくすためだ。

総重量150kはあるフルプレート、彼の体が4メートル近くあり、その腕が500kの重さをものともしない膂力があるからこそ装着できる代物。

戦斧の重さも200k近くある。

すべての鎧を付け終わり兜をかぶる、眼には闘志を燈らせテントから外へと出ていく。


「ズシンズシン」


外にはすでに1000人の部下が整列していた。


「将軍一個中隊準備完了しました!」

「ご苦労」

「これより洞窟前に置いて敵を待ち受ける、うまく行けば青の洞窟は制圧できるだろう、お前達一人一人の力を試すときだ、魔王国軍の力を見せてやれ!」

「お~~」


洞窟の出口では将軍以下1000人の魔族がラポーチ達の到着を待ち構えていた。


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