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待ち伏せ

待ち伏せ


港町トローレまでは後2つの村を経由する、だが魔族の先兵はこちらの動きを察知したのかすでに数百人規模で洞窟内を反対側から侵攻していた。

フィフス村からシクス村までは又岩だらけの洞窟になっているが今度は下りの為向こう側からこちらへ来るにはかなりの時間がかかる。

魔族の兵士はまずは使役しているブラッディバッド(吸血コウモリ)を100匹ほど解き放った。


「この岩だらけの道を進むのは危険が多い、すでに斥侯からは次にフィフス村に帝国兵が到達していると報告が有った」

「ではどうしますか?」

「我らはここで待ち伏せをする」

「待ち伏せですか?」

「土造成魔法を使い落とし穴と槍の仕掛けを作る、工作魔法兵を呼べすぐにだ、それからブラッディバッドを解き放ち敵が来るまで隠しておいてくれ」

「罠にはまるように誘導するのですね」

「そうだ、時間が少ない 今夜中に準備を終わらせろいいな!」

「かしこまりました」


魔族の軍は次のセクスタ村において罠を張っていた、帝国軍側の斥侯はその手前で様子を探る。

勿論情報を持ち帰るのが目的なのですぐに引き返す。

後は使役しているネズミに命令し敵に変化が有れば追って知らせるようにしてある。

魔族側の仕掛けはさほど難しいものではないが、普通の行軍をしてくる軍隊であるならばそれだけでかなりの痛手を被る、そしてその先に行くには罠を無効化する為かなりの時間が採られるだろう。

夜が明け午前7時、洞窟の中だが魔法の灯りがそこかしこで燈りだす。


「装備点検!」

「30分で朝食を完了、今のうちにトイレに行っておけよ」

「ははは」


魔法のある世界では生理現象の廃棄はさほど難しくない、洞窟内とはいえ一応湧き水が使える為その処理は簡単だ。

だが100人が一度に処理するのは難しい、あちらこちらで音と臭いが漂い出す。


「くさ~い」

「こういう時鼻が良いと大変ね」

「笑い事じゃない~」

「ふふふ」

「どうやら次の村では敵が罠を仕掛けているようだな」

「多分落とし穴か」

「はい一番簡単に作れますから」

「そうすると氷雪系魔法で地面全て凍らせてしまえば良いのでは?」

「そいじゃ私の出番だね」

(久しぶりに腕が鳴ります)エルアイス

「もしかして魔剣か?」ラーサー

「そうだよ」ラポーチ

「魔剣使いの聖女…」ミュール

「何か思い出した?」

「聖女ノリアーナも魔剣を所持していました」

「そうなんだ」

「魔剣と話せるのは今はラポーチだけだと思うけどな」レドラ

「剣の言葉が分かるのか?」ゴードン

「うん分かるよ」

「昔聞いたことがある魔剣は付喪神と同じだと」トマス

「何それ?」

「要するに古い道具には神が宿ると言われている、ましてや魔法が込められた剣には長い年月で意思が生まれてもおかしくはないと言う事だ」トマス

「フーン」

「ラポーチにそれを話しても分からないと思うがな」ドーン

【そうか、だが落とし穴は通る前に埋めておく方が良かろう】

「そうだな、氷雪魔法で邪魔な奴らを凍らせてまずは重さが軽い者を先行させた方が良いな」ラーサー

「じゃああたしとマリーそしてジャクライン、コッテロール、マーベル ラポーチで先に行くわ」アリスリア

「任せて」ラポーチ

「腕が鳴るゼ」マリー

「久しぶりに私の弓が活躍できます」マーベル

「できるだけ頑張ってみるわ」コッテロール


今まであまり活躍する場面が無かったマーベルだが、彼女も勇者となり聖弓を持っている。

その弓は矢などつがえなくとも魔力で矢を飛ばせると言う物、時折現れる敵の放った吸血蝙蝠に対して絶大な威力を発するとは、敵の将軍も全く考えの及ばない事だった。

まあ竜族が5人いること自体まだ敵には知られていない、敵も一応斥侯として使役コウモリを放っているのだが。

いつの間にかマーベルが数百メートル手前で片っ端から撃ち落としているのを身内でさえ知らない事だった。


(絶対通しません)

「さっき何かした?」アリスリア

「いいえ特に何も…」

「マーちゃんありがとうね」ラポーチ

(あ ばれてしまった)


女子、特に体の重さが軽いマーベルやジャクライン、そしてラポーチ、マリー、コッテロール、アリスリア。

レドラはその大きさから先行するには目立ちすぎる。

先頭はマリー次にラポーチと続く、細い通路とはいえ天井までは4メートルほどの高さが有り幅が若干狭いぐらいの通路。

途中から脇道はいくつも枝分かれしており、時たま潜んでいた吸血蝙蝠が顔をだす。


ビシュ!

パシン!

「100発100中?」トマス

「はい聖弓アルテラミスは矢をつがえなくても魔力をそのまま矢にできるようです」

「そうなんだ」コッテロール

(なんだマーベルちゃんも勇者なんじゃん)


そのまま1時間ほど進んだ時ラポーチの鼻が危険を知らせる。


「すごい嫌なにおいがする」

「それ どのあたりから?」アリスリア

「約2k先」


2k先と言うと本当に村の入口近く、どんな罠を仕掛けてあるのかは不明だが。

落とし穴ならばラポーチが凍らせてマリーとアリスリアが後に続き落とし穴をつぶすのが最初の仕事になる。

吸血蝙蝠はラポーチ達が村の入口に差し掛かってから大挙して出て来る手筈なのだろう。

セブンス村へ行く途中の通路では単発的にしかコウモリは襲ってこなかった。


「もうそろそろよ」アリスリア

「何か来た、魔狼だ」ラポーチ

「ホーリーアロー」マーベル

「ビシュビシュビシュシュシュ!」


通路の向こう側がうっすらと明るくなって来た所で魔王軍の放った魔狼まろうが10匹程度先行して攻撃を仕掛けて来るが、その出鼻をくじくようにマーベルの聖弓が複数の聖矢を放つ。

そしてすべての矢が魔狼を捉えると、数匹が逃げ出す。

多分わざと逃げるように命令されているのだろう、こちらが追撃するように仕掛けているのだが、そんなことはすでにお見通し。


「キャンキャンキャン!」

「ガウッ!」

「タタタタタ」

「逃げたね」ラポーチ

「逃げましたね」マーベル

「追わないの?」マリー

「あれは罠への誘いなのよ」ジャクライン

「そうなんだ」マリー

「私たちはゆっくり進めばいいわよ」アリスリア


数百メートル前方で半分以上の仲間を失った魔狼は落とし穴へと誘うために半分が引き返していく。

そのタイミングで分かれ道に潜ませていた吸血蝙蝠が一斉に背後から襲い掛かって来る。


「チーチー」

「バサバサバサ…」

「エルちゃん」

(かしこまりました)

「ヒュンヒュンヒュン…」

「キーキーキー」

「ドサバサドサ…」


「大した数じゃないわね」アリスリア

「マーベルちゃんがかなり減らしてくれたからね」コッテロール

「当然です」


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