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【九話】一日の終わりとこれからの始まり


「それじゃあ、空君また何かあれば連絡してください!予定がなければまた一緒にデートしましょ!」


「はい。是非!桜さんも何かあれば、LINEしてください。自慢じゃないですけど俺基本暇なので。」


生活用品を一緒にテナントを回って買った後、集合場所にしていた駅前で俺は桜さんと別れの挨拶をしていた。

桜さんと一緒に服を買ったり、お風呂セットを桜さん一押しのブランドでシャンプー、リンス洗顔石鹸を店員さんに選んでもらったり、化粧水や、美容液も選んでも貰い俺は桜さんセレクトされた男と言っても過言ではないだろう。


細かい物の買い物も多かったがそのすべてがととても楽しい時間だった。楽しい時間は過ぎるのは早く、もすでに日は沈んでしまって、駅前の街灯と店の明かりが俺と桜さんを照らしていた。


「それじゃあ、またね。」


「はい、また。」


最後に桜さんは僕に向かって手を振りながら家の方向へと消えていった。

前の世界ではそれなりに一人というものに慣れていたが、この世界に来て一日目でここまで一人が寂しく感じるとは思っても居なかった。


それも桜さんの明るさや、たまに攻撃してきては俺が返り討ちにするとすぐに赤面してしまう所が少なからず影響している気がした。


「帰るか。」


桜さんが見えなくなりポツリと呟いた。

自分が思っているよりも暗い呟きが漏れていることを理解しながらも、そのことをかぶりを振って振り払った。



―――――――


「ただいまー」


マンションに帰ってきても返事が返ってこないのは当たり前だけど、今のおセンチな気分の俺はそのことにすら少しテンションが下がっていた。

服を脱ぐこともせず買い物袋をリビングに放り出してソファーに体を投げ出した。


――ピコン


ソファーに寝転がっていると、携帯が光った。


桜『空君も家に着いた頃かな?私ももう少しで家に付きます。今日は凄く楽しかったです。今度は私の買い物に付き合ってもらおうかな?笑』


桜さんのLINEだった。俺はそのことが分かっただけでも気持ちを持ち直してしまった。


――俺、こんなにちょろかったかなぁ?


何て思ってしまった。


空『付き合いますよ!連絡さえもらえれば。』


桜『ほんとにぃ?笑楽しみにしてるね!お休みなさい』


空『おやすみなさい。今日はありがとう!』



「いや、出会って一日だぞ、マジで俺大丈夫か?」


桜さんのLINEに返信をしてから、ソファーに埋もれながらそう呟く。


今ばかりはこのソファーの柔らかさが俺の気持ちを落ち着かせてくれなくて恨めしく思った。



「風呂入るか…」


まあそんなに悩んでも仕方無いし、桜さんと選んだお風呂セットを持って気分転換でもしようと風呂に入ることにした。



―――――――


「相変わらず、どっちかわからんな」


俺は風呂上りに顔のスキンケアをしていた。

鏡を見ても初日ということもあるし、前の世界の顔とは似ても似つかないこの顔は違和感の塊だった。


「慣れるのを待つしかないか…」


リビングに戻るとリビングのテーブルに置いたままにしていた携帯を開くと神様からLINEが来ていた。


「んだよ、神様からか」


神『そういえば昼間も言ったけど、白峰学園に転入手続きの書類だけ送ればすぐに転入できるようにしておいたんでヨロシクゥ!』


どうやらそうゆう事らしい。確かに白峰学園に行くとは言ったけれど仕事が早いな。


空『有難うございます。明日送っておきます。』


神『おっけ。どうよ、一日目を終えて。』


空『楽しいですよ、女の子とも仲良くなれましたし。』


神『いいねぇ。存分に楽しんでくれたまえよ。えーっと確か笹倉桜ちゃんだっけ?その子男性との交際経験はなかったはずだよ!良かったね!』


空『ソースは?』


神『アカシックレコード』


空『さいで』



「へぇ付き合ったことないんだ。桜さん」


ついキモイとは思いつつも呟いていた。

別に処女信仰ではないけれど何となくもやもやするのは確かなので桜さんがおそらく男性経験ないであろうことは俺にとっては神様からの福音でもあった。


神様とLINEしながらも寝室に来ていたので、携帯を枕元にぶん投げベットに飛び込んだ。馬鹿でかいベットは俺一人が飛び込んだところで音一つ立てずに受け止めてくれた。


ベットに寝転がりながら今日の出来事を振り返ってみても、本当に現実かと疑いたくなってしまうぐらいには、色々なことがありすぎた。

死んだと思ったらイケメンの金持ちに転生。変なテンションのまま出前の女の子をナンパして、一緒に買い物。


「前の世界じゃ考えられないな…でも、本当にこの世界で青春を取り戻せるかもしれない。」


俺は碌な人生を歩んでいないという自覚もあるし、死んだときにも転生した時にもあれだけ泣かせた母親のことなんて何とも思っていなかったことにびっくりしていた。


――まあ死んだら死んだだし、別の世界に来てるんだから正直もう関係ない人って意識が強いのかな?


俺はそんなことを思えてしまうこの自分のクズさは別に嫌いじゃなかった。そのまま瞼を閉じて、どうか目が覚めた時にもこのままで…と祈る。


あの神様が俺の祈を叶えてくれるとは思っていないけれど。この世界に連れてきてくれた事に感謝はしていた。



――お供え物とかした方がいいんだろうか…


そんな事を考えながら俺は気づけば眠っていた。




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