【四十八話】ちょっと待てそんなの聞いてない
「さて皆様待望のARカップの開始まで数分を切りました!開始までの数分の間で出場チームの中でも注目されているチームの紹介をしたいと思います!」
ARカップ解説、実況配信の画面では、実況の佐藤と解説の元プロゲーマーアルが二人並びながら最後の確認とばかりに試合開始までの少ない時間で注目出場チームの紹介を始めている。
佐藤の掛け声で二人の間に注目チームのメンバー表とチームの特性が表示された。
「何といっても常勝雪原セツナ擁する魔王チームが今大会もと言うべきでしょうか、下馬評でもかなりの票を獲得していますね」
「そうですね、ですが。相変わらず雪原セツナ一人で全てを破壊していると言っても過言ではない今の状況を打破するチームは下馬評の二位につけているテレスコープになるのではないでしょうか」
「やはり、アルさんはスクリムの時点でテレスコープには注目していましたしね……そうなのです、テレスコープには雪原セツナを倒すのではないか、と注目が集まっております。勿論他のチームにも注目はしているのですが、どうしても目立ちますね、テレスコープは!」
「間違いないですね。皆さんが驚愕したであろう、sky選手の対面性能にミラー選手の安定した堅実な立ち回り、そして紅一点の明星選手は初心者ながら目覚ましい成長を私たちに見せてくれました。このチームなら。と誰もが想像したことでしょう、あの、雪原セツナが負けるのではないかと」
「それにARカップは出場選手にコストが振り分けられている関係で、雪原選手のチームメンバーはVPEXで言う所のシルバー相当のチームメンバーが二人と言う編成なので、試合中の連携にどこかミスが発生した瞬間にテレスコープが何か起こす可能性は大いにあります」
「勿論VPEXはバトルロワイアル形式のゲームになりますので、魔王チームとテレスコープが直接対決をする場面が必ずしもあるわけではないですが、雪原選手に関しては順位ポイントを得るためにも試合終盤まで残るのが予想されますので、テレスコープがそこまで生き残っていれば世紀のベストマッチが見られるかもしれません」
「おっとそろそろ試合が始まるようです!画面が試合画面に戻ります!」
佐藤がそうアナウンスをすると画面はすべてのチームがキャラを選び終え各チームが乗せられた飛行船を映し出す。
「概ねスクリムでの初動対決に勝ったチームがそこの町を取る形になるでしょうね」
「おっと!アルさんのおっしゃられた通りにもうすでに降下しているチームが何チームかいますが、すべてばらけて降下している様子です!」
「ただスクリムの時には雪原選手がいなかったので魔王チームがどこかに被せてキルを取りに行く可能性はあると思いますよ」
アルがそう言うと、カメラは雪原セツナを含めフルメンバーとなっている魔王チーム視点を写しどこに降下するのか注目を始めた。
そうしてどこからか固唾を飲む音が聞こえてきそうになるほどに誰もが雪原セツナの動向を注目していると飛行船から魔王チームが飛び出した。
問題はテレスコープと全く同じ方向、タイミングで降下した。と言うことだが。
瞬間実況の佐藤が大声で驚愕を露わにする
「おーーっと!!!魔王チームまさかまさかの初動をテレスコープに被せるのか!!??」
「これは強気ですね……私の方が絶対強い、問題ないと言わんばかりの被せですね!」
「スクリムでは打倒雪原を表明していたテレスコープではありますが、本人たちもまさか初動をかぶせに来るとは思っていないでしょう!初動から有力候補ツートップがぶつかり合う展開になりそうです!」
「雪原選手はまず一戦目で格付けをしに来ましたね……」
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時は少し遡って空達三人がキャラの選択を終え、町に降下を始める前の飛行船
「多分、ゆるなさんたちのチームは被せてこないだろうから、大人しく物資を集めてその後の動きを決めようか」
「うん。それでいいと思うよ~さすがにスクリムで負けた街に被せては来ないだろうしね~」
「了解です!じゃあとりあえずゆっくり漁れそうですかね?」
「多分ね……何か他のチームが急に仕掛けてこない限りは、だけど」
「お~不安にさせる事言うねぇ~」
「止めてくださいよ~フラグですよ、それって」
俺がちょっと不安に思っていたことを口に出すと直ぐに二人にそう言われてしまった。確かにもうすぐ町に最速で降りるためのポイントに着くという時に言うべきことではなかったかもしれない。
「じゃあ降りますね」
「「了解」」
俺はそう言い残し飛行船から飛び出した。
「ミラーさんどこか他のチーム来てたりします?」
ミラーさんが後方確認担当なので他のチームが来ていないかを確認するが、ミラーさんは何処か言いずらそうに言葉を詰まらせながら言う。
「……ん~とね……なんか被せてきそうなのがいるね~」
「ちょ、ちょっとskyさん!ほんとにフラグになってるじゃないですか!」
他のチームが来そうだと聞いて明星さんが少しテンパりながら俺の先ほどの発言を咎めてくる
「いや!そんなこと言ったってしょうがないじゃないですか!」
「どうする~バトる?」
俺も自分で言っておいて本当に他のチームが来るとは思っていなかったのでテンパっている節もあるが少しでも落ち着こうと深呼吸をして思考する。
この大会では順位ポイントももちろん大事ではあるが、基本的にポイントを積んでいくのはキルポイントが主となる。初動では簡単にキルを取れる可能性があるのでバトルするのは問題ないのだが、それは相手にも言えることで、もしこちら側の物資が渋い場合蹂躙される可能性を秘めている、ハイリスクハイリターンなのだ。
「……ふぅー。やりましょう、取り敢えずここでキルを取って少し調子をつけていきましょう」
初戦なので少し不安なところもあるが、ビビッて逃げていては雪原セツナに勝つことも出来ないだろうと思い、ここでキルを取り調子に乗っていくことが必要だと結論付けた。
「了解~」
「了解です!」
俺の判断に二人も従ってくれて、町に降下後武器とアーマーを見つけ次第すぐにバトルを挑むことになった。
バトルをすることに決まり、町に降りたった俺たちは直ぐに物資を探し、俺とミラーさんは一先ず戦えるレベルの最低限の物資はそろったので、直ぐに戦いを挑みに行く。
明星さんはアーマーは俺たちが青シールドなのだが、白と言う状況ではあるが、遠距離用のスナイパーを無事に見つけられたので、一旦後ろでカバーしてもらう形になった。
「あ、ちょっと待ってヤバイ!上手すぎ」
俺とミラーさんが集合しようとすると、ミラーさんが先に敵のチームと接敵してしまったようで悲鳴のような声を上げた。
ミラーさんのHPを確認すると、もうすでにシールドは割られ、HPも残り二割程度を残して削られていた。
「カバー行きます!」
直ぐに助けのいる状況だと思い、ミラーさんのほうへと向かう
流石のミラーさんと言ったところか、ダウンまではいかずに安全なところまで引いてこれていたので無事に合流が出来た。
ミラーさんが回復している間、俺は再度敵チームが詰めてこないか辺りを見張る。
「ちょっと嫌な予感がするね~あの当て感もそうだし被せてくるこの強気な感じ……」
回復を巻きながらミラーさんが不穏な一言を漏らした。
「と言ううと?」
「なんとなく雪原セツナっぽい」
「え!本当ですか?」
そのミラーさんの一言は俺は勿論明星さんも及び腰にさせるだけの一言だった。
「いやいやいや……マジっすか?」
「まだ確定ではないけどね~」
「それじゃあ、ちょっと丁寧に削って確かめますか」
「それが良いと思うよ~ちなみにやばいのは多分ゴーストだね」
ミラーさんほどのプレイヤーがそう言うのだ、仮に雪原でないとしても相当の実力者に違いない。丁寧に削ってからタイミングを作って詰めるのが正しいはずだ。
「了解です。俺も気を付けて顔出します」
「綺羅ちゃんはそのまま援護とスキャンだけお願いね~」
「了解です!」
ミラーさんがそう言うと同時に回復が終わったので、再度仕切り直しとなった。
俺もミラーさんに言われた通りゴーストを仮想雪原セツナとして、集中しながら敵を探していくと直ぐに自分たち以外の足音が聞こえたので武器を構え、相手の顔を出してくるのを待つ。
「ブラハアーマー割りました!ジブも一発当ててます!」
俺とミラーさんが射線を通しながらタイミングを見計らっているとどうやら敵のゴーストに着いていけて居なかった他の二人にダメージを出すことに成功したようで、明星さんからの報告が入った。
「詰めよっか?」
「了解」
ミラーさんの判断が出ると同時に俺とミラーさんは敵のゴーストのいるであろう地点まで詰めていくと、予想通りゴーストの体が半分ほど見えたので直ぐに銃を発砲する。
アーマーは俺達と同じ青。少し撃つと直ぐに遮蔽に隠れられてしまったので、アーマーを割るまではいけなかったが、出したダメージを直ぐに報告する。
「ゴースト28ダメ!」
「了解!一旦他は綺羅ちゃんに任せてゴースト落とそう!」
「任せてください!」
ミラーさんの掛け声を聞いて明星さんは直ぐにゴーストを狙うのをやめ、他の二人を狙いやすい位置まで移動していった。
俺達はと言うと遮蔽に隠れたゴーストを深追いにならない程度に射線を二人で通しながら、詰めていく。
すると敵のゴーストはミラーさんの方にフラグを投げてミラーさんの詰めを止めると同時に俺の方へ数発ずつ発砲しながら近づいてくる。
詰めている途中だったこともあり、バースト撃ちの弾丸を交わし切ることが出来ずにアーマー値の半分ほど食らってしまった。
「カバーするよ!」
ミラーさんがそういながらゴーストの方に発砲するとゴーストは急に動きに緩急をつけ俺の隣にある丁度ミラーさん側から射線が切れる遮蔽に弾をよけながら接近してきた。
俺もそこに入られるとミラーさんからの射線が切れてしまうのは分かっていたので、直ぐに応戦して遮蔽に入られないようにするが、右に行ったかと思うと左、ジャンプ、しゃがみを織り交ぜながらほとんどの弾をよけワンマガジンの発砲で俺のHPを残り二割弱まで削ってきた。
「ごめん!引く!」
「了解!そこまで詰められないようにカバーする!」
俺がそう言ってゴーストのスキルを発動するまでのコンマ数秒で敵はそれさえ読んでいたのか、サブ武器のモザンビークで俺の事をダウンさせた。
俺の方も体は半分ほど隠し、さらには弾避けをしながらのスキル発動時間だったのだがこのゴーストにはそんなことは関係なかったようだ。
「引けなかった!アーマー半分ぐらい!」
「了解!てかやっぱり雪原かよ!綺羅ちゃん一旦そっち置いておいてこっち来てほしい!」
「了解です!やっぱり雪原さんですか!?」
俺はミラーさんが雪原だと言ったのでキルログを確認すると、そこには確かに、雪原セツナのIDSetunaがその存在を主張していた。
ミラーさんが直ぐに俺の確殺をされるのを防ごうと俺の方に明星さんとはさみ合う形で詰めてきてくれるが直ぐに雪原はゴーストのスキルを使って味方の方へと引いていった。勿論敵チームの二人も明星さんから撃たれない間に近くまで詰めてきたので俺の確殺が出来るのには変わりない。
「あぁっ!ごめんなさい!落とされました」
雪原は一旦味方の方に戻ってから顔を出してこちら側まで寄ってきていた明星さんを味方の一人とフォーカスしてダウンさせる。
そこからは早かった。
味方の二人に射線を通すのだけさせ、自身は直ぐに全面まで詰めてきてミラーさんの事を大した時間もかけずに倒し切って俺達三人の初戦は直ぐに箱になることで終わったのだった。
「いや、バケモンじゃん」
「あははは~やばいね~」
「直ぐにやられちゃいました……」
俺達は直ぐに雪原視点の観戦に幽霊として入ったので今回の事は事故みたいなものだと割り切り、雪原視点を見ることにする。
「まぁ後二戦あるから、気にしなくていいよ~」
「あと今回分かったのが、雪原と正面から撃ち合ったら死ぬってことだね」
「とりあえず、雪原らしきパーティが来たら一旦引いて、他のチームとやってる時に漁夫るのが安パイかな」
「分かりました!とりあえず戦略的撤退ですね!」
「まぁそうなるね~」
「ですね」
俺達がその後も雪原視点で見ていたが、雪原は味方が落とされて一人になっても上手く立ち回り、順位を上げたが最後は回復も尽き安置に入る際に遮蔽の何もないところで、他のワンパーティから一斉放火を浴び最終順位は6位となった。
こう聞くと大したことないように思えるが、三人一組のゲームで一人になってから、キルポイントを取りつつ順位を上げるのは生半可なことではない。ましてや今大会は出場選手のうち半分ほどはプロか、それに匹敵するほどの実力者たちだ
それに六位で終わったとしても、ポイントは順調に増えている。ただ、皆が見たいのは安置で切られる雪原ではなく、正面からの打ち合いで負ける雪原なのだ。
果たして俺たちにそれが出来るのかどうか、先ほどの初動で少し不安になってしまったが、言ったからにはやるしかない。
二試合目にリベンジを三人で誓って、一旦は他の町に行くパターンも含めて、同じ町に降りることに決めた、ただ仮にもう一度雪原チームが被せてくるのであれば他の町に流れることになるが。
理想は最終付近の戦いの中で雪原との戦闘に入り、そこからは俺が対面し正面から泥をつけることに成功させるかに掛かっている。
何と言うかぼこぼこにされた俺達三人ではあるがそこまで精神的に崩れたりはしていなかった。これも信頼関係になるのか、それとも雪原ならこのぐらいはしてくると言った予想があったからなのかは分からない。
APEX用語
初動……試合開始直後の武器も物資も満足に無い状態。
弾避け……敵の予想外の移動を入力することによって敵の弾をよける技術
安置……時間経過でマップの外側円形に縮まっていきがダメージが発生するようになる中で、ダメージの発生しない円の内側の安全地帯




