【五話】%というよりかは/
評価ありがとうごぜえます。モチベ上がります。
この世界での駅前がどうなっているのか少し不安はあったが、特に元の世界との違いがなく少し安心した。
少し違う所と言えば、学園前駅ということもあり学生が多い事と容姿の変化に伴ってこちらを見ている視線の多さが気になるくらいだ。
「あと五分か……」
ポケットから、携帯を取り出し時間を確認すると約束の時間までは後五分に迫っていた。
――視線がうっとおしいがこれも慣れるしかないんだろうな…
「あ、硯君!お待たせしちゃいましたかね?硯君目立つので直ぐに分かりましたよ~」
そんなことを考えていると笹倉さんも着いたようで声を掛けられた。
笹倉さんはバイトの時とは打って変わってかなりお洒落してきてくれたようでとても可愛らしい服装だった。
今は春とはいえ、少し肌寒いということもあり上はベージュのゆったりとしたセーターになんと言うか俺には分からないけれどひらひらとした黒のスカートというコーディネート。
それ何が入るの?ってレベルの小さい肩掛けのバックを身に着けていた。
くそ小さいバックの肩ひもが左肩から右にかけて笹倉さんの体を両断しているが残念ながら、笹倉さんにには肩紐を固定するほどのボリュームがなかった。
何のボリュームかはあえて言わないが。
「あぁ、いや俺もさっき来たとこ!そういえば良く俺の事直ぐ分かったね?」
「そうですか!ならいいですけど。いや直ぐ分かりますよ!硯君綺麗な顔してるので」
「あーそっか。やっぱり俺目立つ?」
「……正直顔だけ見たら性別がどっちか分からないです。体はがっしりしているので直ぐに男性だと分かりますけど」
「さいで…」
「ま、まあ!いいじゃないですか!それより今日は何処に行くんですか?」
女の子に綺麗な顔と言われるのも前の世界では考えられない事だったが、どうせなら格好いいと言われたい男心が素直に喜べない。
まあ褒めてくれているのでありがたいが。
「とりあえず、家電と生活用品を見に行きたいんだよね…あとはぶらぶらとって感じ!」
「……ホントに引っ越してきたばかりなんですね。てっきりご飯とか行ってそのままホテルとかに連れていかれるのかと」
笹倉さんは俺の返答を聞いては豆鉄砲を食らったような顔をしてそう返してきた。
いや勿論下心がないかと言われたらあるんだけどそこまでの度胸は俺にはない。と言っても信じて貰えないだろうな。
「い、いやあ本当に買い物に付いてきて欲しかっただけなんだよ。ここら辺の事全然知らないしさ」
俺が取り繕うようにそう言っても笹倉さんはまだ納得行かないように少し疑り深く俺の事を見つめてきている。
「……ふぅん?ま、そういう事にしておいてあげますねっ?家電なら近くに大きい電気屋さんがあるのでそこに行きましょう」
「あ、うん。ありがと!」
笹倉さんはそう言い残しずんずんと進んでいってしまうので置いて行かれないように小走りで付いていく。
――――――
「あ、そういえばなんで硯君私にため口なんですか?年下ですよねたぶん」
二人並んで電気屋に向かって歩いていると不意に笹倉さんにそう話しかけられた。
俺が笹倉さんのほうに視線を向けると笹森さんは少しむっとしたような顔をしていた。
確かに何となく前の世界の感覚で同い年ぐらいだろうと思って普通に話していたが今の俺の体は15歳なのだ、いきなり15歳にため口を使われるのはさすがに少し嫌だったのだろうか?
「あーすいません。嫌でしたか?敬語使います」
「あ!いやいや、敬語使え!ってことではなくて、ただの買い物といえどもデートしてるのに私だけ敬語ってものあれかなと思いまして」
俺が急いで笹倉さんに敬語を使って謝ると、笹倉さんは直ぐに胸の前で手をパタパタと振ってそう言った。
――というか笹森さんもデートだと思ってくれてるんだ。
なんて思ってしまった。
「それに、私たちちゃんと自己紹介もしてないじゃないですか?」
確かにその通りだ。
「確かに…ごめんなさい。硯 空15歳ですよろしくお願いします」
俺は軽くお辞儀をしながら自己紹介を済ませる。
「てか、15歳!?見えないね~一個下ぐらいかと思ってました私」
「じゃあ私の番だね?…笹倉 桜19歳大学二年生です。桜お姉さんと呼んでもいいですよ?」
桜さんは俺と同じように少しお辞儀をしながら自己紹介をして最後には茶目っ気たっぷりの上目遣い+ウインクをかましてきた。
可愛すぎる。
「あ、あと私も敬語使わないけどいいよね?空君もさっきみたいにタメでいいよ~」
「わかった。よろしく桜さん」
「……やっぱり空君だいぶ遊んでるでしょ?女の子の下の名前呼ぶのに少しも躊躇わないし、私の事急にナンパするしぃ?」
桜さんはにやにやとしながらそう言ってきた。
勿論前の世界で遊んでいたからということもなく、ただ、仕事の時にバイトの子を下の名前で呼んでいたから抵抗がないだけだ。
それをなんと言うべきか…そのままいうのはあり得ないしなぁ
「いや、桜さんが下の名前で呼ぶ初めての人だよ?」
嘘はついていない。この世界では初めて他人の事を下の名前で呼んだのだし。…うん、ギリセーフなはず。ちょっと調子乗って少女漫画を意識したイケメンスマイルをしながら言ってみた。
「ふ、ふ~ん?そ、そっか」
「う、うん。ほんとほんと」
いや、しおらし!俺が返したら直ぐに俯いてなんかもじもじしてるし!髪の間からちらりと見える耳は真っ赤だし!なんか指で髪の毛くりくりしてるし!
桜さんから攻撃してきたくせに防御力が低すぎる。騙そうとしたわけではないが少し罪悪感を感じてしまった。
その後も桜さんは照れが収まらないようで、髪の毛をくりくりしたり両手の人差し指をくりくりしたりと話しかけられる雰囲気ではなかったので二人で無言で歩くこと数分。
目的の電気屋が目の前に迫っていた。
どうやらヨ〇バシカメラはこの世界にも存在している。その事実が桜さんの反応で少し興奮していた俺を冷静にしてくれた。
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