【三十九話】いつになってもお婆ちゃんはゲームの事ピコピコって言うよね
アオカミを楽しみにしてくださっている皆様、お待たせしてしまって申し訳ありませんでした。
「ただいま~」
俺が家に帰宅して玄関に桜の靴が置いていあるのを確認して言う
「あ!お帰り~!」
「今日もピコピコやるの?」
すると桜が雑巾を片手に玄関にひょっこりとリビングから顔だけ出して返事をしてくれ、続けて今日もVPEXをやるのかの確認をしてくる。俺はARカップ当日まであと一か月になったのでここからはほぼ毎日三人で大会に向けた練習があるので小さく頷きながら返事をする。
「ん、そうだね~」
「おっけい!じゃあ後でコーヒー持っていくね。」
「ありがとう」
初三人コラボ雑談配信でARカップに出場する際のチーム名を決めた次の日、最近はVPEXしかしていないな……なんて思いながらも、学校から帰ってきたときには既に大学が終わって部屋の掃除をしていた桜に軽く挨拶だけして俺は流れるような動きでゲーム部屋に入り、PCの電源ボタンを押してPCを起動した。
PCを起動すると既にミラーさんからはディスコードのメッセージが来ていた。どうやらもうすでにミラーさんはVPEXをプレイしているようだ。
俺はそのメッセージに返事を送りヘッドセットをはめ、ミラーさんに通話を掛ける。
「おつかれ~」
何回かコールの効果音が鳴ってからミラーさんが通話に出てくれた。
「おつかれ」
「明星さんはもうちょっと遅くなるみたい」
「ん、おっけ」
俺がVPEXを起動しながら答えるとミラーさんがテレスコープの最後の一人である明星さんが参加するまでにはもう少し時間がかかることを教えてくれた。
「そういえば、スクリムを週末にやるらしいけど、勿論出るよね?」
VPEXの起動後恒例の射撃訓練場でエイム合わせをしているとミラーさんが言った。
俺はその言葉を聞いてARカップが近づいているということを再度理解した。
「スクリム」とは簡単に言えば練習試合だ。限りなく本番に近い形の試合を何度か行い、各チームの動きや自分たちのチームの課題を見つける、大なり小なり大会には付き物のイベントになる。
ましてやARカップのスクリムはARカップを楽しみにしている視聴者たちがめぼしいチームを見つけるための大事なファクターになる為、他の大会に比べてもスクリムの重要度は高い。
「勿論!……ミラーさんは?」
俺はもちろんスクリムには出るつもりだったし、直ぐに答えた。
「でるさ。……雪原は今週のスクリムには出られないらしいけどね」
ミラーさんも即答した後、少し残念そうに言う。
どうやらミラーさんのお目当ての雪原セツナは今週末のスクリムには出られない様だ。
「そうなんだ?……やっぱり残念?」
「んーまあね。でも、僕たちならいい勝負ができるさ」
ミラーさんが自信満々に言う。
実のところ俺は本当にVPEX最強プレイヤーの一角である雪原に勝てるのかどうかは半信半疑ではあったが、ミラーさんはそうは思っては無かった。
「そうかな~?」
「できるよ。……僕たちが出来ると思っていればね」
「あはは、そうかもね」
「うん。きっとね」
俺が笑いながら答えるとミラーさんも少し笑っていた。
そんな問答を経て二人でタイマンの練習をしているとディスコードのグループに明星さんがそろそろ参加できるとメッセージを送ってきた。
「お待たせいたしました!」
明星さんの送ったメッセージを見てから数分後に明星さんが通話に参加してきた。
「お疲れ~」
「お疲れ様です~」
「お疲れ様です!……お待たせしてしまってすいませんでした……」
「いいよ、いいよ。事務所で用事があったんでしょ?」
「それはそうですが……」
「事務所の用事なら仕方ないですよ、俺たちはチームなんですしあまり気にしすぎないで下さい」
「……はい。テレスコープとしてこれからが、頑張りどころですもんね!」
俺達の挨拶に明星さんは遅れたことに対して申し訳なさそうにしていたがミラーさんが軽く流す。勿論俺もミラーさんと同意見なので、なおも申し訳なさそうにする明星さんに言う。
明星さんは礼儀正しさや真面目さはとても好ましいが、長所がそのまま短所になっている人の典型のパターンだ。そこそこの長さの付き合いなのだからあまり気を遣われすぎるとこちらも気まずくなってしまう。
勿論気にしいというか、空気を良く読んでいるところ、真面目さは明星さんの素敵なところでもあるのでそれに関しては余り言う事もないが……
――それにその事を言うと余計に気にしそうだし。
「ま、これでテレスコープ全員集合だね」
少し変な空気になってしまったが、ミラーさんがいつものように空気を読んで話題を変えてくれたのでそれに乗っかる。
「大会目指して頑張りましょう!」
「はい!優勝目指しましょう!」
俺がミラーさんに乗っかって明るく言うと明星さんもそれにつられて明るく言ってくれた。
「あ、そういえば綺羅ちゃん今週末ARカップのスクリムの第一回があるらしいけど、予定とか有ったりする?」
いい感じに三人でまとまり、試合に行こうかと言うときにミラーさんが言った。
ミラーさんに言われるまで俺もスクリムの事を完璧に忘れていた。
「確か土曜日の夜ですよね?事務所で彗ちゃんから聞きました!勿論出れます!」
「あら、じゃあ大丈夫か。スクリムについて詳しく彗ちゃんに聞いた?」
「はい!練習試合みたいなもので、ARカップのスクリムはその中でも特別で、視聴者の皆さんが応援するチームを決める大部分の要素になるんですよね?」
「そうだね。そこまで教えてもらってるなら説明もいっか……」
俺が二人の会話を聞いていると肩をとんとんとつつかれ、つついた本人の方に振り返ると桜がトレイにコーヒーを載せて後ろに立っていた。
「あ、コーヒーありがとう」
「どういたしまして。ピコピコの大会の話?」
俺が桜にだけ聞こえるようにお礼をすると桜もひそひそ話をするときの音量で返してきてくれた。
「そうそう。今週の土曜の夜に練習試合があるんだってさ」
「へ~空君が出るなら私も見てみようかな、ようつべで見れるんでしょ?」
「見れるけど……なんか恥ずかしいな」
「いいじゃん!また後でどこで見れるか教えてね」
「分かったよ……」
「絶対ね!」
最後に桜はそう言ってコーヒーをデスクの上に置き、相変わらず似合っているメイド服のスカートをひらりと翻してゲーム部屋の扉から出て行った
「なんか今、女の人の話し声が聞こえなかった?」
「えっ!?私は聞こえなかったです、SKYさん聞こえました?」
どうやらひそひそ声とはいえ、少し桜の声を拾っていたようでミラーさんが不審げに、明星さんは幽霊ですかね?なんて言いながら聞いてきた
「……いや。俺も聞こえなかったよ」
「そうですか。幽霊だったら怖いですね……」
何となく二人にはまだ桜の事を伝えていなかった事もあり、咄嗟に誤魔化してしまった。
ミラーさんは未だに「おっかしいなぁ。確かに聞こえた気がするんだけど」と訝しげにしていたが、何とか納得してくれた。
明星さんは幽霊じゃないならいいですけど……と少し声を震わせて呟いていた。
――明星さんが幽霊怖いタイプの人って本当に期待通りだな……それに陰陽師ぽい袴とか清明桔梗とかの要素ましましなのに幽霊が苦手なのは大丈夫なのか?
俺は桜の声の事を誤魔化しておきながら、明星さんの反応であからさまに幽霊に対して恐怖心を現したのでそんなことを思っていた。
APEXがスプリットが変わってひと段落したのでこれからは週に何回か更新できると思います。
隙あらば自分語りをさせていただくと私は今シーズンもマスターには行けずダイヤの1と2を彷徨って終了しました。レブ×オクタン構成考えた人。大人しく出てきなさい!正直に出てくれば先生絶対に怒らないから。
怒らない代わりに足の小指を割と本気で踏むけど。




