【四話】綺麗だろ?パラジウムカードって言うんだぜ。コレ
笹倉さんのナンパも成功してゆっくりとハンバーガーを食べながらテレビを見ていた。
玄関で笹倉さんとの問答をしていたせいで、もうすでに先ほどやっていたスーパー女子高生のコーナーは終わってしまっていた。大したことのないニュースを見ながらこの世界もハンバーガーのチープな美味さは変わらないんだななんて思った。
ハンバーガーと一緒に頼んだジュースを飲んでいると、携帯がピコンと通知を知らせた。
笹倉さんからのLINEか!?なんて思って急いで確認すると神様からのLINEだった。
「んだよ、神様か…」
明らかに不敬ととられるようなことを呟きながら携帯を開いた。
神『やぁ。この世界の女の子に手を出すのが早いね!さてはそういう方向でこの世界を楽しむことにしたのかな?』
空『いや、まあ。下心もありますけど、特にやることがないなら青春をやり直そうかと思って。』
神『うん!それもいいんじゃない?高校生活するなら、近くの白峰学園がおすすめだゾっ!かわいい子多いし、制服が可愛いからね!』
空『え、学校とかも行っていいんですか?俺20歳ですよ?』
神『え、逆に空君今15歳なのに学校行かないつもりだったの?君そのままだと最終学歴子宮卒だよ?』
空『子宮卒って何ですか』
神『言葉通りさ、君は疑似的に作った子宮から生まれた時点で僕が君の年齢や容姿、才能をこねくり回している状態だから、この世界の公的な書類にはおかしくないように中学を卒業した体で世界に落としたけど、実際は学校と名の付くものには一度も通ってないから、子宮卒』
空『あーなるほどです。じゃあとりあえずその白峰学園とやらの資料請求して見ます。でも中途入学でも大丈夫なんですか?』
神『ん。それは問題ないように弄っておくよ』
空『マジで至れり尽くせれりでちょっと怖くなってきましたよ…』
神『気にしない気にしない!これは僕の気まぐれみたいなものだから。』
空『ま、ありがとうございます。この世界で頑張ってみます』
神『そうしてちょ。ちな、白峰学園はマンモス校で色々な学部があるから、君がさっき見てたスーパー女子高生全員在籍してるから、手籠めにしちゃいなよyou!』
空『ここまで俗っぽい神様いるんですね。』
神『ん~?神なんてものは基本的に俗物ばかりさ!気にしたら負けさっ!』
神はそのメッセージと一緒にコーギーみたいな犬がグーサインをしているスタンプを送り付けてきた。
そのことに少し気が抜けたように息を吐いてしまうが、神が言うからにはそういう事なのだろう。
LINEをしながらも、ハンバーガーをぱくついていたのでもうすでに食べ終わっていたので、ゴミをまとめてゴミ袋に突っ込み笹倉さんとのデートの為にシャワ―をすることにした。
心なしかあの大きい風呂に入るのを少し楽しみにしてい居る自分が居た。
「…お、笹倉さんから連絡きた。」
風呂から上がり、タオルで頭を拭いていると、携帯が笹倉さんからの通知を教えてくれた。
笹倉『硯君でいいですよね?とりあえず準備がもう少しでできそうなので、14時に白峰学園前駅で待ち合わせで大丈夫ですか?』
空『大丈夫です!俺ももう少しで準備できます!』
笹倉さんからのLINEを見て壁に掛かっている時計に視線を移すと、14時までは後30分程度だった。
適当に髪の毛を乾かしてから寝室のクローゼットを開けると、普通の黒のスキニージーンズと白いシャツが何着かハンガーに掛かっていたので、一つしか服がないんじゃないか、という心配は必要なかったようだ。
「身だしなみを整えようにも、ワックスもないしなぁ…」
服を着ながらもそんなことを呟いていた。
「てか、いつぶりだろ。女の子と遊ぶの」
つい前の世界の俺の後悔の原因の女の子のことを思い出したりしてしまう。
もうすでに似ているようで違う世界に転生しているわけで、その後悔はもう手遅れなのは自分自身分かっていた。
「それに、現金持ち歩くのはあんまり好きじゃないから、神様パワーでクレジットカードでも作ってくれればいいのに…」
――ピコン
神『財布に入ってるから好きに使って!君の口座から引き落とされるから、使いすぎないように!』
そう呟いてから、一分もたたないうちに携帯が通知を知らせてきた。予想通り神様からのLINEでそのLINEを見て自分の財布を確認すると確かにさっきの支払いの時にはなかった一枚のカードが財布のカード入れに納まっていた。
「何このカード…」
そのカードは普通のカードとは違い何かの金属でできたカードだった。visaのマークがあることから、普通に使えそうなのでデザイン自体は特に気にしてはいないけど、何というかカッコよかった。
「ま、使えそうだからいいか。そろそろ14時だし行くかぁ」
時計を見るとすでに待ち合わせの時間は20分ほどに迫っていた。
髪を乾かしているときに白峰学園前駅はこのマンションから徒歩5分ほどにあるようだし笹倉さんにLINEだけ送って余裕をもって家を出ることにする。
空『今から駅に向かいます!』
笹倉『それじゃあ、私も今から家を出ますね』
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「ていうか、このマンションはハイソ過ぎて慣れるのに時間が掛かりそうだなぁ…」
駅に向かって歩きながら、そう呟いた。
家の鍵が良く分からないカードキーなのにビビり、玄関から出てエレベーターの大きさにビビり、
実は俺の住んでいる階が最上階で、同じ階には他の部屋は無く、小学校の校庭ぐらいありそうな芝生が敷かれている庭しかないことにビビり、高級ホテルも顔負けの広々としたエントランスにビビり、外に出た時の庭の大きさにビビり、
なんで笹倉さんがビビり散らかしていたのか俺にも分かってしまった。
――元は一市民である俺にはいろいろと追い付かない豪華さのマンションだな。
駅前に歩きながら近づいてくると急に大きなビル、様々なテナントが並ぶ大通りに出た。
人通りも自宅マンション辺りとは比べ物にならないぐらい多く、あちらこちらから視線を感じ始める。
前の世界では自分の容姿は悪くはないけど、良くもない程度だと理解していたし、こんなに異性同性両方からの好奇の視線を受けたことは無いので途轍もなく居心地が悪かった。
まあそれもこの神スペックの容姿をしていることのせいなのは自分でも分かっていた。なにせ鏡を見て自分自身に見惚れてしまうぐらいに中性的で下手したら人間とは思えないほどに整っている容姿なのだから。
「お、あれか白峰学園前駅。思っていたよりでっかいなぁ」
俺は駅が見えてきてそのあまりの駅の大きさに、どこか現実逃避をするようにそう小さくこぼした。
俺、今日が初対面の女の子とのデートまで、約10分。