【三十二話】ミラーさんと俺のようつべ戦争
ミラーさんとようつべにVPEXの動画を投稿し始めて一か月が経った。なんだかんだミラーさんは二人でプレイした動画や、二人のクリップ集などをカッコいい感じに編集して動画を一週間に三本ほどのペースで上げてくれている。
その成果もあってか、今現在俺達二人のようつべチャンネル「空鏡」は登録者が二万人弱に差し掛かっていた。
「伸び悩んできたね~」
「ですね~」
今俺はデスクの上に置いてある、桜さんが入れてくれたコーヒーを飲みながらミラーさんと作戦会議をしている。
ミラーさんが言う通り、登録者が二万人を超えたところでチャンネル登録者数の伸びが鈍化したのだ。
「なんでだと思う~?」
「分かんな~い」
俺達は一旦ランクマッチに行くのを控えて、動画映えするようなプレイやクリップを取るためここ一か月は大体カジュアルマッチにしかいっていない。
そうして動画をポンポン上げても今現在伸び悩んでいるのが今の俺たちの間延びした会話に繋がっていたのだ。
正直動画を投稿し始めた時は俺もミラーさんも凄いスピードで伸びていくチャンネル登録者数に案外楽勝だななんて言っていたが、大会まで残り二か月ほどになっても未だ三万人と言う条件を満たせていないことに焦燥し始めてきた。
「やっぱりさ、コラボだよ!SKY君誰かいないの?」
こりゃ名案だ!とばかりにミラーさんが言うが、俺にようつべに動画を投稿している知り合いなどは居ない。
「いないな~。ミラーさんの方がそう言うの多そうだけど……?」
「僕は基本的にプレイヤー側の人間だからなぁ。」
「ダメじゃん。……それか飛び込みで大会とか出て無双してみる?」
続けてミラーさんがした提案はそれなりに効果があるものだとは思うが、増えたとしてもVPEXを知っている少数しかチャンネルを登録してくれないような気がした。
「いや、もっと登録者を増やすなら、知名度ある人と絡まないとじゃないですか?」
「でもその人がVPEX知らないと、急に良く分からない人に絡まれて困るでしょ」
それもその通りだった。知名度が俺達よりもあって、VPEXに詳しくかつ俺達が飛び入りで絡みに行っても困らない人。
俺もミラーさんの言葉を聞いて、考えてはみるがこれと言った候補は思い浮かばなかった。
「……VPEXのコーチングとか?」
俺が候補は思い浮かばなかったが、一つ思いついた案を呟いた。
「誰にさ……僕たちより知名度があって、VPEXに興味があって、僕たちが急に絡みに行っても困らない人なんていないでしょ~」
「……それは、初心者講座とか?」
「初心者講座は一週間前に上げたよ~」
俺の提案は完膚なきまでにミラーさんに叩き潰された。
こうなってしまっては俺はもう役に立てそうにない。
「……ん?あれ、……いるかも、条件に合う人。……いや、でも……いけるか?」
俺が思考を放棄してコーヒーに舌鼓を打っていると、ミラーさんが何かを思いついたかのように呟いた。
マイクが拾うか拾わないかギリギリのラインでぶつぶつと思考をはじめたミラーさんが何を言い出すのか俺も黙りこくって静かに耳を傾ける。
「……うん。行けそう!……時にSKY君や、バーチャルヨウツーバ―って知ってる?」
俺がコーヒーをすすりながらミラーさんの考えがまとまるのを静かに待っているとミラーさんがそう言った。
ミラーさんはバーチャルヨウツーバ―を知っているかと聞いてきた。バーチャルヨウツーバ―とは、2Dや3Dのモデルを人間が動かし、あたかも二次元の登場人物がようつべで配信しているかのように活動する人たちの事だ。
知ってるか知らないかで言うと前の世界でもバーチャルヨウツーバ―と言うモノは存在していたが、名前自体は知っているが、特別詳しいわけでもなかった。
「そりゃ、名前は聞いたことあるけど……それがどうかしたん?」
「バーチャルヨウツーバ―は基本的に企業の所属の人たちは、僕たちよりも登録者が多いんだけど……ここまでは良い?」
ミラーさんが何かの授業をするような口調で話し始めたので俺もそれに乗っかっていくことにする。
「まぁ……はい。」
「でだよ?バーチャルヨウツーバ―は女性が多い。……基本的に消費者が男性が多いからね。これを大前提として、バーチャルヨウツーバ―はゲームもする。でも、女性はゲームをあまり得意にしている人は少ない傾向にある。」
「まぁ、女の子全員がゲームが下手なわけではないと思うけど、その傾向があるのは確かだね」
「……そう!そこが狙い目なんだよ。バーチャルヨウツーバ―は勿論ARカップに出る人もいるし、視聴者を集めるためにも、出たいと思っている人はそれなりにいるはず。えてしてそう言った大会に出るバーチャルヨウツーバ―は自分の知名度で視聴者の中にいる、VPEXの有名プレイヤーからの申し出で、指導配信等をしている。……そろそろSKY君も分かったんじゃない?」
ミラーさんが一つ一つ細かく説明をしてくれたので、さすがの俺もミラーさんが何を言いたいのか理解してきた。
「……つまり、そこまでVPEXは上手ではないが、ARカップに出たい俺達よりもチャンネル登録者の多い配信に行って、コーチングをさせてくれと、頼み込む?」
「正解!僕たちはようつべこそ伸び悩んではいるけど、腐ってもプレデターランクの最上位層だし、その教える子をギリギリ戦力にできるぐらいに鍛えれば、その子とARカップに出ても良い。……完璧じゃん?」
「しかも、その子のチャンネル登録者から、俺たちのチャンネルの登録も期待できると。」
俺もここまでくればミラーさんが言いたいことは完璧に理解した。
「その通り!……残り一人を見つけて、しかも育成して一緒にARカップに出てもいいし、チャンネル登録者も恐らく一万人ぐらいであれば直ぐに増える。一石二鳥どころか三鳥だね」
確かにミラーさんの言う通りだった。俺達は二人でずっとやってきたが大会ともなれば、三人の連携力も試されるし、最初から俺たちが教えた子ならいくら初心者からのスタートだとしても連携もそこまでひどい事にはならないだろう。
追加で売名のようなこともでき、俺たちのチャンネル登録者数を伸ばすことも出来ると言った概ね完璧な作戦だった。
「問題は、どの子にするかってことだね。」
俺はミラーさんの作戦の中で不安に思うことを質問した。
「そこは、まあ、人柄がよければ……あと二か月叩きこめば、何とか?」
ミラーさんも俺と同じく誰にするか。と言う点はまだ決めかねていたようだ。
「でも、俺バーチャルヨウツーバ―は全然詳しくないけど……ミラーさんは?」
「SKY君よりは知ってる……と思うけど。僕もそこまで詳しくない。」
「ダメじゃん」
「……い、いや。まだ慌てるような時間じゃない……多分」
ミラーさんのほぼ完璧な作戦が飛び出したのは良いが、俺たちは「その人をどう選ぶのか」と新たな問題に直面した。
一応俺の方でもバーチャルヨウツーバ―を検索してみるが、さて、どうなる事やら……
私はVTuberに特別明るいわけではないので、知らず知らずのうちにVTuber界隈の禁忌に触れてしまう描写をしてしまうかもしれませんが、悪意等は全くございません。もしちょっとよろしくない描写がありましたら、こっそり感想等で教えてください。
最優先で修正します。
by白熊獣




