【閑話】俺のQOL爆上がりな件。について話そうか。
桜が俺の家に住むようになってなんだかんだと色々んなことがあったが、一旦今は割愛しておこう。
俺と桜の共同生活が始まって何が一番変わったかと言うと、夜の生活と食事のレベルが上がった事だろう。桜さんは大和撫子然もかくやと言った活躍具合だ。
今までコンビニで買った弁当や食パンを焼いただけの朝食が桜が来てからと言うものの、俺がベットからもぞもぞと這い上がってリビングに行けばあるときは和食、ある時は洋食と言った具合に、俺が起きるよりも前に自分も大学で忙しいのにも関わらず、桜が朝食の準備をしておいてくれる。
今だって俺がベットから起き上がってリビングに行けばリビングのテーブルの上には焼き魚とだし巻き卵、ほうれん草のお浸し、みそ汁、白米がいつの間に買ったのかも分からないこじゃれた皿に盛りつけられている。
「桜。今日もありがとう。凄くおいしそうだ」
「どういたしまして、冷めないうちに食べて?」
桜はシンクに掛けられているタオルで今まで洗い物をしていたせいでびちょびちょになっている手のひらを拭きながら言った。
俺は何となくその光景を見て新婚さんみたいだな、なんて感想が浮かぶが、そういえば俺達って新婚さんだった!と思いなおす。
何日か前に市役所で籍を入れたので俺たちは晴れて夫婦になっている。手続きの時にはいろいろな人の協力を経て俺たちは無事結婚できたのだ。
「……うん。美味しい。」
俺は味噌汁をすすりながら言う。
桜の料理スキルは桜の母親に叩きこまれたものでそのことに関しては桜も親に感謝していると言っていた。
「そう?ならよかった」
「本当に美味しいよ。俺は桜と一緒になれて幸せ者だな」
俺はしみじみと言う。
桜は俺の言葉を聞いて、ほんのりと頬を染めて俺に向かってはにかむ。
前の世界では俺の歳が結婚は絶対に出来ないし、そもそも出会ってから結婚までの期間でいったら、相当に早い方だとは思う。
結婚に関する価値観の違いと俺の年齢でも結婚が出来るということにやはり別の世界なのだなと思ってしまう。
勿論俺も長く付き合って結婚するのが正義だとは言わないけど、それでも俺たちのスピード婚はこの世界でもなかなかないスピードらしい。
桜が仲のいい友達に報告したら物凄く驚かれたと言っていたから、そこに関しては前の世界もこの世界も変わらないらしい。
「……本当に俺より早く起きなくてもいいよ?」
俺は桜にここ数日で何度目かも分からない問いかけをする。
「良いんだって。私が空君にしてあげたいからしてるんだし」
桜の答えも何度聞いたか分からない同じ答えだ。桜は俺がこの話題を出すと直ぐに頬をぷくっと膨らまして拗ねたように機嫌が悪くなる。
桜の機嫌を悪くするのは俺にとっても不本意ではあるのだが、それでも俺はまだ桜に早起きをしてもらって料理を作って貰っていることに負い目を感じている。
「……この話は終わり!」
これもまたいつも通りだ、この話を俺が始めると、桜の機嫌が悪くなって話を切り上げられてしまう。
俺が桜に負担をかけている気がしてしょうがないが、桜が自分がやりたくてやっているのだと、桜のむくれた頬が無言の主張をしていた。
俺もこれ以上この話題を続けて変な雰囲気になるのは求めていないのでその話はやめておこう。
「……それより、何か私に言う事、無い?」
俺が焼魚を切り分けていると、桜はその今着ている服の裾をひらひらと揺らしながら聞いてきた。
俺はその言葉を聞いて、桜の言いたいことに直ぐに気が付いた。
……そう、今日から桜は少し前におねだりされたメイド服を着ているのだ。俺は余りにも桜がメイド服を着こなしているせいで桜に言われるまでメイド服を着ていることに気が付かなかったのだ。
正直、滅茶苦茶に可愛い。
結婚しているわけだし、桜のその質問に対して正直な気持ちで答えるのに羞恥心は無い。素直に思っていることをそのまま伝える。
「……うん、凄く似合ってる。メイド服が似合ってるって言われるのもなんだけど……」
「あは、良いんだよそんな事空君は気にしなくて!私が好きでしてる格好だし……でも、嬉しい。」
桜はふにゃっとはにかみながらそう言った。
俺の嫁が可愛すぎる件について。
なんてラノベの題名みたいな感想が思い浮かんだ。まあそれに関して否定的な意見は一切ないのだが、なにせ桜の平均より少し小さい身長や控え目なバストが少女的な要素に満ち溢れていて、メイド服を着ている今はその少女性がメイド服との兼ね合いでひどく背徳的な様相をしているのだ。
それもまた、俺が桜と一緒に住むようになって生活水準の向上に役立っている。なにせ、朝起きたら美少女(小さい)が美味しい朝ご飯を作ってくれているだけでなく、俺が学校に行くときにはネクタイを締めてくれ、行ってらっしゃいのキスと称して何度か口付けを俺の唇に落としてくれるのだ。
男の子の夢だろう?朝起きたら美少女メイドがいる生活ってのはさぁ
俺は「ふへへ……」とか「褒められたぁ」とか小さく呟きながら体をくねくねとさせている美少女メイド(嫁)を見ながら味噌汁をすすってそんなことを考えていた。




