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【三話】ヤダ…イケメン!

神様とのLINEもほどほどにしてこれから過ごすことになる家?を探検することにした。とりあえず寝室はキングサイズのベットと大きいテレビ、外にはベランダというのは一目でわかったが、他の部屋はまだ探検していなかったので、どことなく楽しい気持ちのまま寝室の扉を開けた。


「でっか……」


そうして扉を開けて飛び込んでくるのは、一度も使われたことのないだろう広々としたキッチン。ソファーやテーブルが置かれていることからリビングルームだろう。

そして、ソファーの前には寝室のテレビの倍以上あるだろうテレビ、テレビの横には二本のスピーカーが立っている。


「マジでここで暮らすのか…」


リビングを見渡すと、扉が寝室以外にも何枚かありそこを開けてみると広々とした何もない部屋が三つほどあった。


「こりゃ、一人じゃ使いきれないな」


そんなことを呟きながら、リビングにある最後の扉を開けると廊下が玄関まで続いていた。廊下にも何枚か扉があり開けてみると、トイレと脱衣所があった。脱衣所には風呂が併設しており、風呂場は俺が大の字で寝ても足りないぐらいに大きい湯舟があった。


湯舟に寝転がってみたが特にすることもないため起き上がって脱衣所に戻ると大きい姿見があり、そこで前世との違和感に気が付いてしまった。



「あれ、俺こんな顔してたっけ?」


鏡に映っていたのは、記憶の中にある自分の顔ではなかった。

神の作りし美貌というべきか、自分が自分の顔を見て感嘆したのは初めての経験だった。


「はぁ~…カッコいいというか中性的というべきか、ほんとに男か疑いたくなるなぁ」


俺は鏡に映った自分の顔を見ながら顔に触れてみるが鏡の俺も同じように顔を触っていることからどうやらほんとに自分の顔らしい。

余りにも中性的な美貌のせいで自分の性別が気になり、服をまくってズボンの中を確認してみるがちゃんと()()()()()マイサンのサイズ感も記憶とは大きく異なっていた。勿論いい意味でだが。



「ほぉ~これまた神様に感謝するべきなのかね…体も芸術品みたいにムキムキだし」



自分の体のスペックが神様仕様なのは間違いないようだった。


「まあ、感謝しておくか…」


鏡から目を離してリビングに戻り、テレビをつけながら冷蔵庫を漁っては見たものの何も食材がなかったので適当に出前を頼むことにした。最近になってメジャーになっているウーバー〇ーツだ携帯を開いてアプリを入れ、ハンバーガーを頼んだ。

時間を潰すためにソファーに寝転がりテレビを眺めてみる。この世界はどうやら元の世界とは少し変わっているところがあるようなので、テレビを見ることで何か分かることがあるかもしれないと思ったからだ。


「ふーんニュースなんて元の世界もこの世界も大差ないなぁ」


テレビを見ていても特に新しい情報が入ってくることもなく惰性でテレビを流し見していると、一つのコーナーが始まっていた。


そのコーナーは『世界で活躍するスーパー女子高校生たち』というコーナーだった。高校生たち全員が非常に整った顔立ちをしていて、その子たちの紹介文ではFPSゲームの世界大会を二年連続で優勝した女の子、世界最大と言われるイギリスの迷宮で日本人としては初めての26階層踏破を成し遂げた女の子二人が紹介されていた。


「ほーこの世界では日本の女子高生で世界的な活躍をしている女の子が居るんだな…」


そのコーナーを見ながらそんなことを呟いてしまった。その二人が元の世界の俺では関わり一つ無かった遠い世界の人のように思えたが、この世界の俺は神仕様の肉体と容姿を兼ね備えている事を知ってしまったので、思っていたよりは劣等感はなかった。



――ピンポーン



その二


俺がインターホンに向かってそう告げると女の子がぶんぶんと頷いていた。インターホンに付いている解錠ののボタンを押して財布を探すが財布が見つからず急いで神にLINEをした。



俺『神様!財布どこにあります?』


神『あ~メンゴ!説明忘れてた!多分玄関に鍵と一緒に置いてあるよ!それ以外の生活用品とかは無いから後で買い物に行ってね~』


俺『あざス』


神とのLINEを終え急いで玄関に向かうと、下駄箱の上に言われた通りに鍵と一緒に財布が置いてあった。

財布の中身を確認すると革の長財布には無造作に帯付きの札束が居れてあった。どうやら紙幣に元の世界との違いはない様だよく見ると描かれている偉人は知らない人だったが。


偽札じゃないかと少し不安になっていると再度インターホンが鳴るのを聞いて目の前の扉を開けた。



「……あ、ど、どうも。ウーバー〇ーツ配達員の笹倉(ささくら)です。」


先ほどインターホンのカメラで確認した女の子が鞄から頼んだ袋を取り出しながらそう言った。帽子を深くかぶっていたせいでさっきは顔が良く見えなかったが、今こうして面と向かうと可愛らしい顔立ちなのが良く分かった。


――キレイ系というよりは、可愛い系だな色々と小さいし。


そんなことを思いながら商品を受け取った。


「ありがとう」


「…い、いえ仕事なので」


俺がお礼を言うと目の前の笹倉さんは呆けたような顔をして少しすると思い出したかのようにそう言った。


「ごめん、一万円しかないけど大丈夫?」


「…!あ、はい大丈夫です。お釣りあるので!」


財布から一万円を取り出すときにまだ帯を剥がすのを忘れていて少し手間取ったがどうにか一枚を抜き取ると、笹倉さんはえらくびっくりした様子で僕の手、いや財布から飛び出ている札束を凝視していた。


「そう?じゃあお願い」


「は、はい。少々お待ちください!」


笹倉さんは俺の返答を聞いてポッケから小銭入れのようなものを取り出して一生懸命お釣りを計算している。

俺は何というかその光景がとても可愛らしい小動物を見ている気分になっていると同時にいつか言ってみたい言葉ランキング6位のお釣り要らないよを言ってみたくなってしまった。



「あー、お釣りいいや。ジュースでも買ってよ」


「…?…い、いや!悪いですよ!貰えないです!」


俺が少し気合を入れてそう言うと笹倉さんはさんは最初こそ俺が何を言っているのか理解していなかったようだけど、次第に意味を理解したようで小銭入れに突っ込んでいた手を勢いよく取り出し胸の前で残像が見えるんじゃないかって程にブンブンと振る。


「いや、いいって!ほら貰って?」


「む、無理ですぅ~!!」


「いや、無理とかないから!ほら、ね?」


「ね?じゃないです!そんなに貰えないです!ほんとに何もしてないので!」


笹倉さんの小銭入れに一万円を無理やり入れようとするが笹倉さんは体をよじりながら俺の手にある一万円を小銭入れに入れられないように避ける。


――ヤバイ!このままだと失敗する!


俺はそう思い、一つの案を思いついた



「じゃ、じゃあ!俺ここに引っ越してきたばっかりで色々と買い物したいから、一万円の代わりに付いてきて!」


「いや!悪いですって!そんなことで一万円も貰えないです!」


「貰ってくれ!このままじゃなんかお釣り要らないよが変な感じに終わっちゃうから!ね!」


「ほんとに大丈夫です!私と買い物するだけで一万円も出す人なんかいないですって!!」


「…俺が君と買い物に行きたいの!」


「……?えぇ!!??」



なんかおかしなテンションになってしまって下心が変な事を口走ってしまった。

俺のその言葉を聞いて笹倉さんはびっくりしたような表情のまま固まってしまっている。今が畳みかけるのに絶好のタイミングだと思い色々と理由を考える。



「い、いや引っ越してきたばっかで知り合いも居ないし、色々と必要な物も買わないといけないし、ね?お願い!」


「…ほんとに私と一万円を出してでも買い物に行きたいんですか?」


「うん。できれば君と一緒に買い物したいな」


「…分かりました。今日はバイト辞めるので一緒に買い物しましょう。」


「その代わり!お金は要らないです!知り合いとして買い物に行きましょう。」


笹倉さんは納得してくれたようで一緒に買い物に行ってくれるようだ。少なくとも「お釣りは要らないよ」は完璧に失敗したのは確かだった。


「おっけ。それでいいよ、取り敢えず連絡先交換しない?俺もご飯食べたいし、笹倉さんも色々と準備あるでしょ?また少ししたら集合しよう。」


「はい。分かりました。とりあえずまた後で準備出来次第連絡しますね。あ、これお釣りです」


「あ、うん。ありがと」


笹倉さんと連絡先を交換してそのままお釣りを握らされ、そのまま笹倉さんはぺこりとお辞儀をして扉から離れてしまった。


音を立てずに閉まった玄関の扉の前で俺はどうにかこの世界の人との繋がりが、ナンパとはいえ出来たことに少し安堵していた。



――あれ、これって犯罪じゃないよな?…いや多分大丈夫だ。神様曰く15歳の体らしいし!うん、多分大丈夫。…え、大丈夫だよね?


安堵すると同時に俺は少し冷や汗が背中を伝うのを感じていた。







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