【二十七話】なんか、すまん
「で、これとリムジンの違いは?」
俺は今校門に夏と黒木と一緒に降りてきて、校門に停まっているロールスロイスを見た黒木になじられていた。夏はもうすでに初めて見るロールスロイスの虜になっていて、車の周りを回ったリ、等々力さんと仲良く話していた。
「え、えーと長さ、とか」
「硯馬鹿なん?」
俺が苦し紛れにそう言うが、黒木にはお気に召さない答えだったようだ。
それに校門の前にロールスロイスなんかが停まっていれば、否が応でも注目を浴びる。勿論今だって、部活でランニングをしている生徒や、少し遅くまで学校に残っていた生徒たちの視線が痛いほど俺たちに刺さってきていた。
「なんで、一高校生がロールスロイスに乗って下校せにゃいかんのだ」
黒木は腕を組み右手の人差し指で左手の二の腕をトントンと叩きながら、いかにも私怒ってます。と言わんばかりの様子だ。
「い、いやぁ、カッコいいかなって」
「やっぱ馬鹿じゃん」
「すいません」
「ま、いいけど。私もあんまり注目されたくないし、さっさと行こ?」
俺は黒木の怒りの視線に耐えかねて謝罪すると、直ぐに黒木は許してくれたようで、ほっと一息ついた。
「許してないから」
「は、はいっ!」
俺が一息ついていると黒木は背中に目でもついているのかと言いたくなるぐらいに振り返って一言そう言った。
全然許されてなかった。
「いやー空君がお金持ちなのは何となく知ってたけど、ここまでだとは」
俺たちがロールスロイスに乗り込んで学校を後にして数分。
夏の表情は少し笑っていて、人生初ロールスロイスを楽しんでくれているようで何よりだった。
「いや、夏。硯馬鹿だよ。なんでたかが下校にロールスロイス呼んでんだって」
「まぁまぁ加奈ちゃん。空君も楽しみにしてくれてたんだよ!多分」
「にしたってさぁ。私たち校門でめっちゃ注目されてたよ?」
「えーそうかなー?」
「あぁ、夏も硯の影響下に……」
「失礼な。」
「硯は黙って」
「はい。」
俺は女子二人に挟まれながら肩身の狭いをしながら二人の話を聞いていたが、黒木の言った言葉に突っかかると直ぐに黙らされた。
「それに、夏。硯あんなに綺麗な人を運転手にしてるんだよ?絶対顔採用だよ、それか胸採用」
「……そ、そんなことないよねっ?空君?」
「……」
俺は夏に聞かれて答える言葉は何もなかった。
だって等々力さんは顔胸採用だもの。 そら
「ほら、沈黙が答えでしょ?」
黒木これ以上俺をいじめないでくれ……
「そんなことは無いと思うっスよ~」
俺がさらに肩を縮こまらせていると、運転中の等々力さんが助け船を出してくれた。
今この車で俺の味方は等々力さんだけだよ……
「まあ、ウチの胸を見てないと言ったら嘘っスけど。それに性的な目で見られたことは無いっスよ……たまにしか」
「「………………」」
二人は等々力さんの擁護に見せかけた、援護射撃を聞いて思いっきりジト目でおれのことを睨んでくる。
「………………男の子だから」
「空君……ちょっと無理が……」
「まあ無理があるね。」
「……はい。すいません。割と性的な目で見てました。」
「「さいてー」」
俺が二人に詰め寄られてそう答えると二人に口をそろえてそう言われてしまった。
じゃあどうすれば良いっていうんだ!!だって等々力さんが何かするたびにお胸様がたゆんたゆん揺れるんだぞ!見るだろ!男ならさぁ!
「……ま、まあ私は、空君が普通の男の子だと知れてよかったよ?」
夏は思いのほか肯定派の様だ。
「あー確かに。硯ってなんかめっちゃ中性的な顔してるし、二次元じみた容姿の良さしてるし」
「だよね!女子の中でも、空君に魅了されちゃった子結構いるよ?」
「見てくれは良いからね」
「黒木!見てくれ”は”とはなんだ。見てくれ”は”とは」
「言葉通りの意味」
「あははは!やっぱり空君面白いね~」
俺と黒木のやり取りを見て夏は大笑いしていた。俺も黒木もその夏の笑い声を聞いて毒気が抜かれてしまって、二人で顔を見合わせて苦笑いするしかなった。
――――――――
「こんな感じでいいかな?」
「うん良いと思うよ。もし足りないなら、出前とか頼めばいいし」
「あ、そっか!」
俺はスーパーで黒木、等々力班と俺、夏班で二手に分かれて、歓迎会用の食材などを選んでいた。
俺たちはそろそろ必要なものを買い終わったので集合場所に戻ると既に黒木たちは集合場所に立って俺たちを待っていた。
「お、そっちも終わった?」
俺と夏が黒木たちの方に近づいていくと黒木が俺たちに気付いて話しかけてきた。
「うん!とりあえず、オードブルとか、お菓子買ってきた!加奈たちは?」
「私は等々力さんと一緒にケーキ選んできた。」
「結構美味しそうなの一杯あったんスよ~」
どうやら黒木と等々力さんはケーキを買ってきてくれたようだ。
「てか、お金足りる?俺が出そうか?」
「硯、やっぱお前馬鹿だろ?なんで歓迎される立場の奴が金出すんだよ」
「うんうん。加奈ちゃんの言い方はちょっと悪いけど私もそう思う!」
俺が二人に金を出そうかと聞くと直ぐに黒木がキっと目を吊り上げてそう言ってきた。その後夏さんも黒木に続くようにして俺が金を出すのに反対してきた。
「硯さん。いい子たちっスね?」
「……ほんとにな。」
等々力さんが二人の言葉を聞いて俺に耳打ちしてきたが、俺もその通りだと思った。
「夏。黒木。ありがとう。」
「いいよ~気にしないで!私たちがしたくて歓迎会するんだし!」
「そうそう。硯はどんと構えて歓迎されればいいんだって。」
二人はそう言ってくれた。
今日有馬先生の言っていたクラスは良いやつらばかりと言う言葉は間違いではなかったようだ。
「今度は、クラスの皆も呼んでBBQでもしたいな。俺の家で」
俺はふとクラスの他の皆とも、もっと仲良くなりたいと思って、マンションの屋上にある庭の存在を思い出してそう言った。
「「いいね~……ん?家で?」」
「あ、うん俺の住んでるマンションの最上階に大きい庭があるんだよね、芝生の敷いてある」
俺が二人に俺の住んでいるマンションの最上階は俺の部屋以外庭しかない事を伝えると二人は呆気に取られていた。
「……はぁ。硯。馬鹿だよお前」
「……あはは、空君ごめん、私も加奈ちゃんに賛成。」
二人に呆れたようにそう言われてしまった。
なんか、すまん。




