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【二十四話】硯空です!夜露死苦!!

「自己紹介は考えてきたか?」


校内の廊下を歩きながら有馬先生が後ろを振り返ってそう聞いてきた。

一応有馬先生に言われた通り簡単な自己紹介は考えてきてはいるが、そんなに大層なものは考えてきていない。


「……まあ一応。」


「そうか。私のクラスの奴らは少し騒がしいが、いい奴らばかりだ。」


そう言った有馬先生は凄く優しい顔をしていて、「ちゃんと先生をしているんだな」なんて思ってしまった。


「そうですか。少し楽しみです。」


「まあ、お前なら上手くやれるだろう。」


「……だと良いんですが。」


「心配するな。一応お前の事情は簡単に皆に伝えてある。」


その言葉を聞いて、本当に大丈夫なのだろうかと不安になるが、まあそこまでひどい説明はしていないだろう。


「さて、着いたぞ。私が呼んだら教室に入ってきてくれ。」


有馬先生はそう言い残し先に教室の中に入っていってしまった。


俺は一人廊下に取り残されてしまって、前の世界で廊下に立たされていた時のことを思い出していた。

教室の中からは、有馬先生が俺のことをクラスの皆に紹介しているのか、廊下にも聞こえるぐらいに騒がしくなっていた。漏れ出てくる声は基本的に女子の物ばかりで、既に俺が男子と言うことは説明済みなのだろう。


――有馬先生変にハードル上げてなければいいんだけど……


「硯!入って来い!」


そんなことを考えていると、有馬先生が教室の中から、俺の事を呼んでいた。

俺は少し緊張しながら、教室のドアを引いて中に入る。


――――――――!!!


教室に俺が入った瞬間、女子生徒たちの声にならない悲鳴が聞こえてきて、少し顔をしかめてしまった。

音量が大きいのは勿論、これが黄色い声援なんだろうか……何て思ってしまった。


「静かにしろ!!」


有馬先生が悲鳴より大きい声で一喝するとクラスは一瞬で静まり返った。

少しすると、ざわざわとするぐらいには戻っていったが、それでも、最初よりはましになっていた。


「えー硯空だ今日から私たち1-4の一員になる。硯、自己紹介」


未だにざわざわとしているクラスの中で有馬先生がそう言うと、俺の自己紹介を聞き逃さないためにだろうか、直ぐに教室がシンと静まり返った。


どうにもこう注目されると緊張してしまうが、有馬先生が顎をクイとふり急かしてくるので俺も覚悟を決めて口を開いた。


「……えーっと。硯空です。ちょっと家の都合で入学が遅れてしまい、転入と言う形になりましたが。仲良くしてくれると嬉しいです。趣味はゲームとアニメ、美味しいものを食べる事です。」


俺が一息で自己紹介を終えると、直ぐにクラスの皆は大きな拍手をしてくれた。


「あーとりあえず質問とかがあれば、このホームルームの時間で済ませてくれ。……いいな?」


有馬先生が俺の方を向きながら、そう言ってきたので、俺も頷いて返事をした。


「……はい!はい!」


有馬先生の言葉を聞いて俺に最初の質問をしようと手を挙げたのは、綺麗に染まっている茶髪をポニーテールにしている女子にしては少し背の高いこれまた容姿の整った生徒だった。イメージとしては陸上部のアイドルみたいな感じ。


「じゃあ佐伯」


有馬先生は手を挙げた生徒を佐伯と呼んでいたことから佐伯さんと言うらしい。


「はい!あの、硯君ってすっごい高そうな車で登校してきた人ですよね!?」


「あーそうだね。やっぱ変かな?」


「い、いや!いいと思います!」


佐伯さんは俺の答えに少しテンパって敬語で答えてくれた。正直車での登校は控えたほうが良いのかと思っていたので佐伯さんのその答えは少し有難かった。佐伯さんは敬語で答えたのが恥ずかしかったのかそれ以上は何も言わずに席に座った。


――まあお世辞かもしれないけど……これからも車で登校しよう。歩くの嫌だし。


それからは皆手を上げることもせずどんどんと俺に質問をしてきた。


「彼女とかいんのー?」

「なんか部活とかやってた?」

「な、何のゲームが好き?」

「どこに住んでんのー?」

「お金持ちって事?」

「バスケとか興味あるか?」


等々その質問にすべて答えていくと直ぐに時間が過ぎてしまって、ホームルームの終了を伝えるチャイムが鳴ってしまった。


「そろそろ終わるぞー、他に質問のある奴は休み時間にな~。硯はあそこの開いてる席に座ってくれ」


有馬先生はそう言って一つの席に指を指した。

その席の隣にはくだんの佐伯さんと後ろには一人俺に興味がなさそうに小説を読んでいる女子生徒が座っていた。別に俺に興味の無い人もいるんだなと少し安心してしまった。


俺はそのまま有馬先生に言われた通りに席に着いた。


「さっきも言ったけど、硯空です。よろしく」


俺が佐伯さんとその後ろの女子に話しかける。


「おー!佐伯夏です!よろしくっ!」


「……どうも」


「もう!(すみれ)ちゃん!ちゃんと挨拶しないと。」


「……うるさいわね、そもそも私こいつに興味無いもの」


「もー。ごめんね?硯君、菫ちゃんこういう子だから……」


俺の挨拶には佐伯さんは元気に答えてくれたが、菫さんはフイと直ぐに小説に視線を移してしまった。


「あ、俺のことは空って呼び捨てにしていいよ!タメだし」


「じゃ、じゃあ私も夏でいいよ!皆私の事夏って呼ぶし!」


「じゃあ夏ね!よろしく」


「空!よろしく!」


俺と佐伯さんが二人で話していると後ろの菫さんが、パタンと少し大きい音を立てて本を閉じていた。


「あ、ごめん菫さん。うるさかった?」


「……高城。私の事名前で呼ばないでくれる?」


「ごめんね高城さん」


「……別に」


高城さんに少し怒られてしまった。と言うか菫ちゃんって夏が呼ぶからてっきり名字が菫なのだと思っていた。


俺たちが話していると。前の扉から、一時間目の先生が入ってきたので、いったん話を辞め、俺は鞄から教科書とノートを取り出した。


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