第4話 ブルーの家
遅くなってすいません
最近忙しいのでまた遅くなりそうです
狭い穴の中を子どものドラゴン、ブルーの後ろをずっと屈みながらついて行く
するといきなり開けた場所に出た
俺が立っても大丈夫そうな広さだ
「いたたた」
ようやく立てる
「明るいな」
壁に光る小さな鉱石があり明るい
迷宮には光る鉱石があるので明るいということは聞いたことがある
「ここが迷宮なのか?」
聞いていた迷宮の広さではない気がする
人が3人ほど入るくらいの広さだ
『違うよ!ここは僕の家だよ!』
『ここがベットだよ!』
部屋の端にある藁や草などが敷き詰められた所で飛び跳ねる
ブルー可愛くね?
「すごいな」
「これ全部掘って広げたのか?」
『うん!』
『こっちにも部屋があるよー』
そう言いながら部屋の横にあった穴に入っていく
ブルーに続いて隣の部屋に入る
「おお」
「なかなか広いな」
5人程寝転んでも大丈夫だと思われるくらいの広さだ
「この部屋は…貯蔵庫か?」
周りに沢山ある木の実などを見てそう言う
『うん!そうだよ!』
『これ食べる?』
するとブルーが近くにあった赤い木の実を持って来た
「ああ、ありがとう」
受け取って食べて見る
「美味しいよ!ブルー」
さくらんぼの様な甘酸っぱい味がした
『よかった!』
『もっと食べてもいいよ!』
「じゃあ迷宮に行く前に腹ごしらえとしますか!」
『うん!』
ブルーが集めた木の実は赤いものや、青、黄、紫など様々な色の木の実がありどれも違った味で美味かった
少し昼食には早いが昨日から何も食べていなかった体に優しい木の実の味が沁みわたる
「ぷはぁ」
ココナッツのような中に飲み物が詰まった木の実を飲み終えた
「よし、迷宮行くか」
『うん!』
またベットがあった部屋の方に行き入口とは正反対の位置にもう1つ穴があった
『こっちから迷宮に行けるよ』
ブルーが先に穴に入っていく
その後に続くとすぐに行き止まりになってしまった
「ここで合ってるのか?」
不思議に思って聞く
『うん!』
ブルーはそう言うと目の前にあった壁にあった窪みに手を掛けて力いっぱい横に引く
『んん』
ズリズリと音を立てて岩が横にズレていく
その先には
「おお!ここが迷宮か」
『うん、ここが迷宮だよ!』
穴から出て少し歩いて見る
目に見えるのはとても広大で入り組んだ洞窟
洞窟の中とは思えないくらいに明るい
これは壁のいたるところにある光る鉱石のおかげだ
キラキラと光る景色に見惚れていると
グルルルルッ
という唸り声が右から聞こえてくる
すぐにそちらを向くと大型犬ほどの大きさをした狼の様な魔物がいた
コボルトだ
昔、孤児院に居る時に冒険譚などで読んだ事がある
コボルトは迷宮では弱い魔物として知られている
「よしっブルー一緒に倒そう!」
『うん!』
と、意気込んだのはよかったがある事に気づく
「あっ俺武器もってねぇ」
『来るよ!』
ブルーがそう叫ぶと
コボルトが飛びかかってくる
「うわっ!」
急いで避ける
グルルルルッッ!
またこちらを向いてギラりと光る牙を剥きだしにする
ガアアアアアッッ!!
また飛びかかって来た
これもまた横に飛んで避ける
また攻撃に失敗したコボルトが着地した瞬間
コボルトの体に氷で出来た槍が突き刺さる
グゥァァッッ
体に氷の槍が刺さった事でコボルトが絶命し倒れる
『危なかったね!』
槍が飛んできた方向には一撃でコボルトを倒したニコニコのブルーがいた
「助かったよありがとう」
武器も持たずに迷宮に行くなんて馬鹿だった
ブルーがいなければ殺されていただろう
「今のもスキルなのか?」
それはそうと先程のコボルトを一撃で倒した氷の槍の事を聞く
『うん!今のは《アイススピア》だよ』
『ほら!』
そう言うとブルーの目の前に氷の槍が形成されていく
そして出来上がった槍を凄い勢いで射出する
バァァン
迷宮の壁に当たり壁も一緒に崩れる
「す、すげぇ」
こんな小さい子どものドラゴンからこんな高威力の物が放たれる事に驚いてしまう
『これより強いのもあるよ!』
「ま、待ってくれ!」
ブルーがさっきより強いのを撃とうとしているがそんなの使われたら壁や天井が崩れて来て危ない
『ん?わかった』
少しブルーがしょんぼりする
「ごめん、でも危ないから」
「一旦戻らないか?」
ブルーの家の方を指して言う
『うん!』
よかったあまり落ち込んでないようだ
戻るのは俺の武器をどうするか、それと俺の魔法を練習して少しでも戦える様になりたいからだ
先程のブルーの部屋に戻ってきた
その場に2人とも座る
「よし、じゃあどうするかな」
アゴに手を当てて考える
『なにをー?』
ブルーが聞いてくる
「俺の武器なんだけど」
「自分で作れないかな?」
俺の魔法のあまり思い出したくはない記憶、
町の人々を殺したあの土の槍のようなものを作り出せれば、と思っている
『どうやって作るの?』
「魔法で作ろうと思ってるんだけど、そういえば俺の魔法ブルーに見せてなかったな」
ブルーに見せて欲しいと言われるが俺はまだ魔法を上手く扱えていない
「じゃあ俺もまだ上手くないから練習しながら見せようかな」
そう言いながら立ち上がる
『やったー!』
ブルーがぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶ
「まずはどうしようかな」
まずは武器だ
俺の魔法は使いこなせればかなり強い
だから石の棒でも作れればいいだろう
「こうして」
しゃがんで手を地面に付ける
昨日の事を思い出して少しわかった事がある
この魔法は想像力が大事だ
想像する
出来た後の棒の長さ、形、素材の種類、硬さ
全てを想像しながら地面に魔力を込める
手に盛り上がってくるような感触がある
それをゆっくりと引き抜く
「おお…」
手に取った土でできた棒を見る
「…」
「……」
「…………」
『スカスカだね』
「ブルー俺もう泣きそう」
手に持っていた棒がボロボロと崩れていく
「くそぅ…」
何がいけなかったんだ?
もう一度昨日の事を思い出して考える
「あ、もしかして」
目に魔力を込める
じわ〜と言う感じで色々なものが見えてくると同時に自分の周りにあるものが感覚的に分かるようになる
いつの間にかこの目の効果が切れていたようだ
この状態でまた先程と同じようにする
手に盛り上がってくるような感触がある
それをゆっくりと引き抜く
「おお…!」
「出来た!」
『やったね!!』
形も長さも硬さも申し分無しのただの棒が出来た
もっと魔法に慣れていけば刃物なんかも造れるかもしれない
武器は出来た、次はこの魔法で攻撃出来るようにならなければ
「次は攻撃魔法だな」
この目の効果はいつまで続くか分からないのですぐに次に取り掛かる
〜3時間後〜
「出来た!!!」
『んん〜』
俺の大きな声で途中から寝ていたブルーが起きる
「ごめんブルー起こしちゃって」
『ううん大丈夫だよ』
『出来たの?』
「ああ出来たんだ見てくれ」
そういう俺の目の前にはバスケットボールほどの水の玉がふわふわと浮いている
『すごい!!』
『出来たね!』
「ありがとうブルー」
ブルーは自分の事のようにぴょんぴょんと飛び跳ねて喜んでくれている
そう、やっと出来たんだ
やっとコツを掴んで出来るようになった
前にやったように目に魔力を込めると周りの魔力では無いものが色々見えて来る
これを勘で組み合わせてたりしてみた
すると水が目の前に集まってきた
ん?ちょっとまてよ…
これ落としたら水浸しになるな…
『その水どうするの?』
背筋が凍る
「い、いや今から消すよ」
また目に魔力を込め先程組み合わせたものを逆に分解していく
「はぁ…やっと消せた」
数十分後
目の前にあった水の玉は消えていた
消すのはかなり時間がかかるようだ
『よかった!』
「ああ、よかった…」
あの時のブルーから感じた恐怖感は微塵も残っていない笑顔だ
『いまからどうする?』
『外はもう暗くなって来てたよ』
「もうそんな時間か」
集中していた間にブルーが外に見にいったらしい
「じゃあもう寝るか」
「疲れたしな」
『その前にご飯だよ!』
『疲れてるんでしょ』
「ああ、そうだな」
ブルーの謎のお母さんのような気遣いで気づいたが早めの昼食から何も食べていない
『じゃあっちの部屋にいこう!』
ブルーがウキウキで俺の手を引く
「もしかして俺が終わるまで待っててくれたのか?」
『うん!一緒に食べた方が美味しいからね!』
あぁ…ブルーなんていい子なんだ…泣きそう
食べ終わった俺たちはすぐに眠りについた
ベットは俺が魔法の練習をしている間にブルーが草などを集めて作ってくれていた
正直固めのベットだったがぐっすりと眠った