断れない雰囲気
この前は三生物に絡まれたが、今回は何もなくスムーズに図書室に向かえた。
図書室はやはり静かで一人で居るにはもってこいの場所。
黒髪イケメンはいないようだ。
洋子ちゃんの秘密ノートには黒髪イケメンは図書室に現れる確率が高いと書いてあった。
他にも高い確率で会える人の名前と場所が秘密ノートには書いてある。
龍馬は理事長室、佐渡さんは拷問室、熱血エルフは体育館、そして黒髪イケメンは図書室。
他にも知らない名前と、出現場所と書いてはあるがこれが俺に必要なのかと改めて疑問が生まれてくる。
此処で秘密ノートを見る訳にもいかず、チラッと見た内容を何と無く覚えている順番で思い出してはいたが、俺の記憶力が高い訳でもなく。
直ぐに思い出せなくなり、諦めて俺は図書室内で何か本を読もうといくつもある本棚を物色し始めた。
この学園の図書室は、図書館と言っていいほど広く色々な本が揃っている。
この学園に三年通うにしても全部は見れないと思うくらいの量だ。
と言っても、学園に在籍してなくても外から来る一般人も見れるらしい。
だからか、時々生徒じゃないようなスーツ姿や、白衣を着た、はたまは鎧を着たといった外部者がチラホラ目に入る。
セキュリティはしっかりしているが、外部者が行き来するため、姫川さんやウイッスくんは俺に図書室へ出向かないで欲しいと言ってるんだなぁと納得はした。
「いやいや、納得してどうすんだ。俺は納得する立場でもない、し」
独り言をぶつぶつ呟き、ふと気になった本を手に取ろうと手を伸ばす。
そして横から違う手も伸びる。
伸びた手は、俺が読もうとした本に伸ばされているため、必然的に俺と指先が触れあった。
そんなラブコメめいた事があるのか、なんて一瞬思いながら隣へ視線を向ける。
「あら、貴方、凶悪顔の」
「……ッ、え、あ」
視線の先、指先が触れあった相手は、自称俺を親友と言う竜馬の奥様、この国の王妃様だった。
指先が触れあった相手が王妃様、その認識が脳内に駆け巡ると慌てて指先を引っ込める。
そしてしどろもどろになる。
女性への接触に慣れていないのと、竜馬の奥さん、そして王妃様でと混乱する要素は沢山ある。
触ったから不敬罪とかにならないよな?な、ならないことを祈る。
そんな考えを余所に、俺が離した本を王妃様は取り自らの手で持つ。
その動作を見詰めていると、王妃様は俺へと声をかけた。
「ちょっと、宜しいかしら?」
「……へ?」
本を抱えながら、王妃様の声、そして視線は図書室に備え付けられた空いてる机と椅子。
視線と声と仕草で、王妃様は俺に座れと多分促している。
俺がどうしようかと悩むも、王妃様は有り無も言わずに席へと移動する。
無視をする訳にも行かず、俺は断りの言葉も言えずにただ、王妃様の後を着いていった。




