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禁固365年の男  作者: 獅斬武
第8章 ノベルゲームの始まり
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熱血エルフ

学園に通いだして数日、妙な視線を何と無く感じる。それは主に、俺が一人になった時だ。


神宮司と知り合った頃から培った視線の感じ方、悪意もあれば物珍しいのもある。竜馬と一緒に居る事も多い俺は同じような視線を感じていたが、悪意とも物珍しいとも違う。


観察、監視、そういった類いにも思える。


害がある訳じゃなく、ただ、見られてるだけ、余り気にしないようにしているが、ずっと見られているのはやはり居心地が悪い。


話し掛けるべきか、話し掛けないべきか。ただ、俺のコミュ症からして話し掛けに行くのはかなりの勇気が必要で、結局は現状維持の状態だった。


視線を感じていたが不意に消える。それと同時に見知った声が耳に届いた。


「大洋、次は何の学科だ?」


振り替えると、竜馬がキラキラした笑顔で俺に話し掛けてきた。視線が消えたのは竜馬が現れたからか、と納得した。


周りの生徒等から溜め息が洩れている。普通にしてれば、確かに竜馬はイケメン、綺麗系男子な印象だ。


「え、っと、今から美術の方」


「おお、大洋の絵は目を見張る物であるからな、今度俺様を書かぬか?」


「そ、そうだな」


誰かを描いたりするのは良いが、肖像画だと話は別だ。もっと上手い奴はいるだろし、そんな考えをしながら曖昧に返事を返す。この曖昧さは竜馬には良い返事と勝手に解釈するだろうが。


「竜馬ちゃんー、急がねェとだぜー」


「だから竜馬ちゃんと呼ぶでない!」


竜馬と話していると、側にいた佐渡さんが竜馬を促す。何か用事があるようだ。


「へいへーい、んじゃァ、またなァ大洋ちゃん、取り敢えず気を付けろよォ?ジーの野郎は後で向かわせるからよー」


佐渡さんの言葉に首を傾げる、学園内で何かある訳がないと俺は思っているが、竜馬達はそうでもないらしい。因みに佐渡さんが言ったジーとはウイッスくんの事だ。


この数日、視線は感じるが何かをされた訳じゃない。佐渡さんの思い過ごしだろうと思い俺は竜馬達と別れ美術室へと向かった。





※※※





美術室に向かったのだが…………


「地球人、佐渡さんに気に入られてる野郎みたいだな?」


「佐渡さんは何で弱い地球人をよォ!」


「その凶悪までの顔は美しいが、佐渡さんには敵わないね、何を気に入られてるのか」


……美術室に向かう途中、触手にゅるっとしたのと、とんでもない長い牙と爪をする目が空洞なゾンビみたいなのと、蝶の羽を生やした顔色が紫の人間でいう所の美形部類に入る人っぽいのに囲まれた。


しかも竜馬関係ではなく、佐渡さん関係だ。


多少の周りの環境には慣れてきてはいたが、やはり地球人とは見た目違うのに囲まれるのは怖いものがある。ただ、何度も言うが俺の顔は悪役顔の魔王みたいな表情のため、逆に怖がられるパターンが多い。


この三人?いや、三生物さんせいぶつに関しては俺の顔は関係ないかも知れない。なんせ、住んでた場所が違う俺よりヤバい系な顔をした奴等はいただろう。


「お前達!何をしている!」


他人というものは、物凄い正義感があるものぐらいしか、トラブルに自ら飛び込もうとしない。俺の認識はそうなんだが、どうやら俺を助けようとする他人が現れたようだ。


「チッ、嫌な相手に見付かったか」


「美しくないね」


「行くぞ、覚えとけよ地球人!」


三生物が各々の言葉を発して、素早く居なくなる。飛んだり、小さくなったり、隙間に入ったり。逃げ方が個性的だ。


「大丈夫か!?くそ、悪を逃がしてしまった!」


猛ダッシュしながら俺を助けてくれたのは色白な耳が尖ったエルフという種族。薄クリーム色の髪は短髪にカットされ、ブルーな瞳。俺から見ても美形部類、気品もあるようだが、どこか暑苦しさもある、妙な相手。


「え、っ、と、た、助けてくれて、ありがとうございます」


雰囲気からして、王様っぽいと感じる。竜馬と同じような溢れる王族、みたいな雰囲気を彼も纏っているからだ。


「いや、構わん。複数に囲まれた人間を助けるのは当たり前だ。私の名はマンノール、何かあれば私を頼ってくれ」


「ど、どうもです。俺は大洋って言います」


「地球の周りにある太陽と同じ名か、良い名だ。ではな、気を付けるんだぞ」


そして猛ダッシュで去る。本や俺の想像ではエルフって冷静で自分以外の種族って馬鹿にしてなかったか?とぼんやり思ったがそうでもない。彼、マンノールさんは熱血系に思える、猛ダッシュしたりしてるし。


後ろ姿がもう見えなくなった相手に感謝しつつ、俺は授業を受けに教室へと再度歩きだした。



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