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禁固365年の男  作者: 獅斬武
第8章 ノベルゲームの始まり
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取り残され、そして出会う

居心地が悪いとは今の状況だ。


教室に入った途端、物凄い視線の数。最近でもないが、感じていなかった視線の数に妙な緊張が走る。


それでも、竜馬や佐渡さんが居るだけで軽減はされているがと思ったら、竜馬と佐渡さんが教室から居なくなった。


ちょ、え?居なくなるのかよ!


何か用事があるやらで俺は二人においてけぼり。いや、別にいい歳して緊張とか……いやいや、俺のコミュ症舐めんなよ!慣れた相手じゃねーと緊張するのは当たり前、当たり前。


多分、今の俺の表情筋はすん、とした表情になっている、周りから見たらかなりの悪役表情。だからか、誰も近寄らない、これはある意味都合が良い。


しかし、竜馬と佐渡さんは何処へ行ったのか、このまま教室には帰らない感じか?まぁ、竜馬は生徒兼務の理事長、佐渡さんは王である竜馬のSPなら仕方がないと言えば仕方がない。


周りを見渡す度胸もなく、俺はただひっそり背中を丸めて座るだけ。背景、そう俺は背景と言い聞かせた。


そんな俺の座る場所に、誰かか近付いた気配がする。気配というか、下を向いていた為に誰かの足が見えただけなんだが。


顔を上げるのはかなりの緊張、気付かないフリをするが声を掛けられた。小さな声だったため、多分俺しか聞こえない声。


ただ、聞き覚えのある声だった。思わず顔を上げ相手へ視線を向ける。


俺と視線があった、女の子。見た目は俺の妹に良く似た子。髪の色は健次の髪色と似ている、彼女はきっと……。


「大洋おじさん、やっと会えた」


俺と視線を合わせた彼女、洋子ちゃんが美月と似た笑顔で俺に話し掛けた。





※※※





「写真でしか見た事なかったけど、手紙のやり取りはしてたし知らないって感じじゃないかなって。大洋おじさんは?」


「想像するくらいだったな、洋子ちゃんの事は、美月や健次は?」


「大洋おじさんよりはかなり歳は取ってるけど、お母さんは若いかも?」


洋子ちゃんに連れられ、俺は教室の一番後ろの席へと移動させられた。周りに誰か近寄ってくる気配もなく、俺と洋子ちゃんに視線をわざわざ振り返って見詰める視線もない。


最初から後ろに座ればと思ったが、竜馬と佐渡さんに無理矢理座らされたなと思い出す。


洋子ちゃんとは、たわいもない話をする。美月に似てるだけあって、俺のコミュ症は発動しなく、スムーズに話は出来ている。話の内容や感覚も今の時代より、俺がいた時代に近いためもあるかも知れない。


洋子ちゃんに会ったら、色々聞こうと思っていた事があったが、俺の気持ちを汲んでくれたのか聞きたかった事を話に織り交ぜ言ってくれている。ただ、竜馬が言う様に意味の解らない事も言っていたが。


会って知りたかった事は、美月や健次、そして洋子ちゃんのこと。洋子ちゃんは過去から来たのは間違いなく、来る方法と言うのが眠っている間らしい。不思議な事もあるとは思ったが、今現状の時代が不思議過ぎて余り驚きはしない。


「ほんとはもっと言いたい事もあるけど、()()()()()()()()()()ってあるし、誰か聞いてるかも知れないから、大洋おじさん今度ゆっくり二人で」


「そうだな、まだ聞きたい事はあるし」


「そろそろ竜馬さん達もイベント終えるかな、竜馬さんには私から今度言っておくね!じゃあ、また」


椅子から立ち上がった洋子ちゃんが教室を出ていく。思わず俺も立ち上がり直ぐに後を追ってはみたが、廊下と思う場所には洋子ちゃんの姿は無かった。


佐渡さんが神出鬼没女って言ってたけど、確かにそんな感じがするかも。廊下を見詰めながら思った。

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