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禁固365年の男  作者: 獅斬武
第7章 刑期を終えて
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俺の持ち物はアンティーク扱い

初ゲートを潜った感覚は、擽ったいであった。頭から爪先までを筆で触られて撫でられる感覚。気にしない人は気にしないだろうが、俺は擽ったいのが弱い為に背中がぞわぞわっとしてしまった。


出来ればゲートを潜りたくない。


帰りもゲートだろうな、と思いつつも無事にゲートを通れて安心はした。一応、ゲートを通る実施は合格と言えるかもなぁ。


隣の姫川さんを見ると降り立った秋葉原の地に目を輝かせている。


「大洋様、大洋様っ!あっち、あっち!あれ着たいんです!」


「え、あ、うん」


秋葉原、聞いてた場所は秋葉原だが、俺が想像と言うか知ってる秋葉原とはちょっと違う。


周りを見ると、道の真ん中を走る汽車、空に浮かぶ円盤状の何か。地面に置かれたピアノにオルゴール、ラジオやら、積み立てられたテレビはブラウン管って古っ!


歩いている人もいるが、殆どが機械仕掛けのロボットや、体の一部が機械の人、後は姫川さんみたいなメイドっぽい服装をした人やこれまたメイド服を着たロボットが歩いている。


「え、っと、あ、秋葉原……?」


「そうですよ?ジーくんから日本史まだ習ってませんでしたっけ?今の秋葉原はレトロな街でとっても有名じゃないですか!私の着ているメイド服も秋葉原でしか手に入らないんですよ!」


「そ、そうなんだ」


だから秋葉原に行きたかったのかと俺は納得した。しかし、これは、まさか、姫川さんの買い物に付き合わされるパターンか?


買い物と言えば、美月と出掛けた際に思い出される事がある。女の買い物はとても長く、服を買うにしろどちらが良いか聞いてくるが、俺が選ぶ方は選ばれないという理不尽さ。


「きゃは!楽しみっ!大洋様はどんな服が良いですか?」


姫川さんに連れられ、姫川さんが着ている服と感じが似ている服屋へと足を運ぶ。案の定、俺に服を選ばせようとしているが、どっちも同じに見えるためにどっちが良いかなど俺には解らない状態である。


「え、じゃあ、こ、こっち……いや、こっち」


「きゃは!やっぱり!じゃあ、これも買おうっと」


右側を指差そうとしたら、姫川さんの表情が歪んだ為に左側を指差した。表情が笑顔になったので、左側が正解と言える。いやいや、選ばせた意味なくね!?


姫川さんはルンルンと音がしそうなくらい服を沢山選んでいる、もう俺に聞く事はなく自分自身で服を選んでいた。こうなると、かなり長い事は妹の美月で検証済みだ。


「姫川さん、あっちで待ってるんで」


「はーい」


服に目を向けたまま、姫川さんが答える。俺は服屋の前で見た椅子の方へと向かった。暫く時間がかかりそうなため、座って待つ事にする。


「此処が、今の秋葉原……」


姫川さんを待つ間、俺は街並みを眺める。それが飽きると、マイディーを取り出して機能を確認したりする。それでも時間が余ると、俺はスマホを取り出した。


これは俺の時代からずっと持っているもの、つまりは365年前の携帯だ。これで電話が出来る訳じゃない、それでも持っていると安心はする、俺は機械に疎いがスマホくらいは使えていた。


「これは、あれだ、美月の誕生日だったか」


俺のスマホには写真が入っている、俺が撮ったものではない、健次や美月が送ってきたものが大半だ。懐かしさに表情が緩む、禁固を終えた時にスマホが帰ってきたのは嬉しいもんだ。


そんな時、声を上げられた。


「うわっ!ちょ、珍しいっ!ぼ、ぼ、ぼ、僕に見せてくれません!?」


突然の声に俺は驚き瞬時に顔を上げる、目の前には緑色の目をした緑髪の少年、というかキラッキラした美少年だ。


「え?な、何を……?」


「そのアンティークですよ、アンティーク!うわ、珍しいな、ここまで状態良いのは見た事ないや」


隣に勝手に座る美少年、服装は執事服っぽいのを着ている、この辺りはメイド服や執事服が主流なのか?


しかし、アンティーク…?え?スマホはアンティークなのか?


美少年の目には、俺が手に持つスマホへと向けられている。確かに365年前のスマホは珍しい物かも知れない、余り外で見ない方が良かったか?考えても後の祭りなため、俺はただスマホを眺めている相手を見るだけだった。


「ああっ!もうこんな時間っ!珍しいアンティークに出会えたっていうのに!うぅ……」


何とも慌ただしい美少年、懐から取り出した懐中時計を見ては残念無念な表情を見せる。隣でスマホを見ながら如何に素晴らしいかを話していた美少年が立ち上がる、俺は目まぐるしい慌ただしさにただ見詰めるのみ。


「あのっ、お名前は?マイディー交換しません?貴方の持つアンティークにかなり魅力を感じるんです、僕!」


「え、あ、え、みな……た、大洋です、マイディー交換…?」


「大洋さんですね!僕はリーナク・エムールと申します!ちょっと、マイディーお借りします!」


リナークと名乗った美少年、俺が名を告げたと同時に強引までにマイディーを奪い、美少年が持つ自分のマイディーと合わせ何やら打ち込み直ぐに返される。


「では!今度連絡しますので!」


綺麗にお辞儀をしたリナークくん、彼は嵐の様に去って行った。それと同時に姫川さんが俺を呼ぶ。


「大洋様ー!買い物決まりましたー!これ、買いましょー」


「え!?あ、は、はい」


俺はマイディーを持ち、姫川さんの所へ向かう。そうそう、今は試験中、マイディーでの買い物だった。


俺は買い物の仕方を脳内で繰り返しつつ意識を姫川さんへと向けた。

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