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禁固365年の男  作者: 獅斬武
第7章 刑期を終えて
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外に出かける禁固365年の男3

「よーしィ、次は大洋ちゃんの性欲発散に行くぞォ」


「ちょ、さ、佐渡さん!こ、声、でかっ…っ!」


佐渡さんは良い感じに酔っ払っている、頬は赤く染まりフラフラしながら歩いていた。


俺は佐渡さんを支え、街中を歩く。場所が俺には解らないが、雰囲気的には新宿っぽい。夜の街だが全体的に明るく、出歩く人も沢山いるが出歩く獣人、ロボット、全身緑なゲル状の何か、佐渡さんがさっきまでお店でイチャイチャしてた触手みたいな系統のも歩いている。


…………テーマパークか何かに思える、又はハロウィンの仮装大会。


街並みは変わらずだが、歩く者は変わっている。ファンタジーの世界に来たような感覚だ。


「佐渡さん、酔っ払ってんなら帰りませんか?」


「俺ァ、酔っ払ってませェんー」


酔っ払いは酔っ払っていないと言う、健次も酔っ払っているのに酔っ払っていないと良く言っていた。俺も酒は飲んだが余り酔わない体質らしく、酔うという状況になった事がない。介抱する役はもっぱら俺だった。


なので、佐渡さんのこの状況は慣れたものだ。ただ、俺は今の時代、タクシーと呼ばれるものがあるのか知らない。お金を持っていない、携帯電話も持っていない。


そう考えると、佐渡さんが酔いを醒ましてくれないと帰れないのだと理解した。


「…………いや、マジか」


「ヤベェ、ねむっ……」


俺に支えられた佐渡さんの力が抜ける。


「ちょ、さ、佐渡さん!ね、寝ないで下さいっ」


「眠ィし、むーりー」


歩く事を放棄した佐渡さん、力が抜け一気に重くなる。俺の力だと佐渡さんを引き摺るしかなく、周りを見渡し休めそうな場所を探す。


俺の視線に、公園が移る。


佐渡さんに心の中で謝りつつ、佐渡さんを引き摺って公園まで歩いて行く。公園の中は街中とは違い静かで、備え付けられまベンチを見付けると、ベンチまでどうにか佐渡さんを引き摺った。


力の抜けた佐渡さんをベンチに座らせ、俺も隣に腰を降ろす。久々に運動みたいな事をした。


昔はまだ体力はあったと思うが、独房内で運動や筋トレなんてする訳がなく、単純に体力がない状態。息切れは半端なく、汗も滲み頬から首筋まで垂れ気持ち悪さに掌で拭った。


「…………つ、疲れた」


佐渡さんは隣でうつらうつらと、首をガクンガクンとさせている。佐渡さん、あの触手にゅるにゅるに沢山酒を飲まされまくっていたからなぁ。


俺は見た目人間な女性に空になったグラスに次々と酒を注がれ、女性達も飲みたいと言われれば俺が答えるよりも先に佐渡さんが飲め飲めと答える。


まぁ、佐渡さんが全部お金を出していたが、一体いくらだったのか、聞くのも怖い。かなり高そうだ。


「大洋ちゃん!あれだ、ほらァ、性欲ぅー」


「ちょ、ま、まだ言ってるんですか?そ、そういうのは、良いですから」


急に顔を上げた佐渡さんが、俺に詰め寄る。女の子の店を後にした佐渡さんが何度も言ってるのは、性欲を発散してくれる店に行くやら何やら。


軽く溜め息を吐くと、据わった目をした佐渡さんが更に詰め寄ってくる。俺は仰け反る、佐渡さん酒臭い。


「うーん、おっぱい系?触手系は結構良い筈だぜェ、ひゃっひゃっ!」


「な、何ですか、しょ、触手系って」


佐渡さんは触手フェチか何かか?あのお店でも触手にゅるにゅるとイチャイチャしていたが、そもそもあれは生きてるもんなのか、疑問に思う事ばかりだ。


「んー、触手ちゃん達はァ、触らせてくれるしよォ。今日も凄ェ、俺は触ってただろぅ?お触り禁止ィとかねェしー。触手ちゃん感じてるの見るの好きなんだよなァ」


全くもって、意味不明な言葉だ。触手が感じてるって、何が?え?感じてたのか!?佐渡さんに触手にゅるにゅるが絡まってたように見えたが、違うのか!?


そういえば、佐渡さんは宇宙出身者。触手にゅるにゅるは宇宙では割りとポピュラーなのか、どうなんだ?


疑問は深まるばかりだった。取り敢えず俺は酔っ払いの佐渡さんを軽くあしらいつつ、酔いが覚めるのを待った。


覚めるまでの間、触手にゅるにゅる、いや、ニュル子ちゃんと言うらしいが、お気に入りのニュル子ちゃんとの馴れ初めを聞かされた。


これは、何の拷問だと思いながら。

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