秘密な生活?
俺が頼んだシチューは、前に葵さんと竜馬が持ってきてくれた事のあるクリームシチュー。前の時は少しぬるかったが、今食べてるシチューは暖かい。直ぐに作って、直ぐに差し出されたからだろう。
食事中は沈黙、竜馬はやはり王様だからなのか食べる姿や仕草が綺麗というか、言い方として美しいが合うかも知れない。俺は取り敢えず、音は立てないを心がける。なんせ、物音一つが響くくらい静かな空間だからだ。
独房以外の空間に居るんだが、どうにも慣れない。夢を見ているような感覚だ、いや実際はまだ刑期を終えていない状況で夢を見てるんじゃないか?いやいや、え、マジで俺は夢を見てんのか!?
思わず、自分の頬に指を近付けぎゅうっと摘まんでみる、うん、感覚はあるから夢じゃないかも知れない。
「大洋、何をしておるのだ?」
食事を終えたであろう竜馬が、俺の行動に訝しげな表情を見せる。
「へ?いや、あー……実感ないから、夢かと思って」
「夢ではないぞ、大洋は刑期を終えておる」
「実感はない、かもな」
ぽつり、ぽつりと話しながら俺と竜馬はシチューを食べ終えた。食べ終わった皿は控えていた店員らしき人が直ぐに片付ける、片付ける店員に竜馬は声を掛け暫くはこの部屋に人が来ないように言っていた。
店員さんが立ち去る前に、冷たいお茶を出されたので妙に乾いた口内を潤すために一口飲む。
「覚えておるか、大洋が刑期を終えた後の話を」
「え、あ、ん、一応は」
一瞬考えたが直ぐに思い出した、確か刑期を終えたら竜馬の家に世話になるみたいな話を。最初は嫌だと思っていたが、実際俺の住んでた場所は無くなってそうだし、衣食住をどうするか全く考えていなかったため、竜馬の申し出は今ならありがたい。
ありがたいのだが、竜馬の表情は言い辛そうな表情をしてる。前から思っていたが、竜馬は解りやすいよなぁ。
「住む場所についてだが、……俺様としては、非常に由々しき事態なんだが、周りの王族関係が羽虫のように騒いでおってな。俺の家で一緒に住むとなると、危ないかも知れん」
「危ない?」
俺が問い返すと、ゆっくり頷きつつ答える。竜馬の表情は苦虫を潰したような表情だ。
「大洋の立場から申せば他の王族関係から狙われるてる状況下になっておる。ゆえに姫川を護衛兼務の世話係りにしたのだが……、すまん大洋。一緒に住む事が当分難しい、だが俺様しか知らぬ小屋があるゆえにそこで住んで貰うが良いか?」
俺が狙われてる発言に俺はひきつった表情をするが、多分、見た目は凶悪な顔になっただけだろう、案の定竜馬の表情の方がひきつっている。しかし、狙われてるって命か?命を狙われても不死身で不老不死の俺は無意味なんじゃ…?何か政治的な狙われる方か?と思うが口には出さない。
「約束を違えてすまん、周りはかならず説得させるゆえ、待っていてくれ」
「…あー、うん、まぁ、別に俺は住む場所が一先ずあれば良い、よ」
ひきつっていた表情を真面目に真剣な表情にし、俺にゆっくりと頭を下げて告げる竜馬。俺としては家さえあればの感覚なため、そこまで卑下にしてはいない。
ただ、下らない事を考える。この状況、変な見方をすれば愛人にまだ結婚出来ないから囲っとくよ、な雰囲気に見える。無駄に顔は良い竜馬でしかも妻持ちだからだ。すっかり忘れていたが、竜馬は結婚してたな、こんな刑期を終えた一般市民を構ってて良いのか少し心配になる。
竜馬が金髪美女なら、と何度となく思ったが生憎金髪美青年なのでどうにもならないが、とまた下らない事を考えながら俺は竜馬の言葉に取り敢えず頷いていて答えていた。




