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禁固365年の男  作者: 獅斬武
第7章 刑期を終えて
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世間様は色々変わっている

一旦、俺は整理したいと思ってはいる、いるんだが中々考えさせてはくれない。


今、向かってる場所は竜馬が刑期を終えたら行こうと言っていた世界KANの本店。竜馬が王子だった頃に王になる為の第一歩として経営したシチュー専門店だと説明を受けた。


そう言えば、独房内で竜馬が世界KANのシチューを土産に持ってきた時に言っていた気もする。そして葵さんの好きな食べ物だったと記憶する。


ガタンっ、とまた揺れた。揺れたのだが、揺れ方は激しい訳でもなく、あ、地震だ、みたいな程度だ。頻度も高くはない。


俺は寝ている間にこの部屋のような乗り物に乗せられている。俺が世間にいた頃に記憶する乗り物とは、車、飛行機、電車、バイク、船……。こんな、部屋が丸ごと動くような乗り物は知らない、世間は色々変わっていると痛感する。


他にも色々と変わっているのはあるんだろうか、365年分はきっと変わってるんだろうなと少し期待してしまった。いや、でも対して変わってないか?変わったら変わったで大変そうだ。


「王様、王様ー、私もシチュー食べても宜しいのですかー?」


俺の傍らに立つ姫川さんが、一応、敬語っぽい言葉使いで竜馬に問い掛けた。


「駄目駄目、姫川は部屋の外で俺と護衛ィ、シチューは王様と大洋ちゃんだけェ」


それに答えるのは佐渡さんで、その答えに再度ぶうたれたような表情を姫川さんが見せた、喜怒哀楽が激しい、俺と違って解りやすい表情をする。


「えーっ!社長と一緒やだー、水無月様とシチュー食べたーい」


「我が儘言うんじゃありませーんー、俺だってシチュー食いたいっしょ、でも仕事だから仕方ねェのォ」


二人の会話を聞いていた竜馬が、二人に向かって口を開く。


「終わったら好きなだけ食べれば良いぞ、それまでは我慢してくれ」


竜馬の言葉に、ぴょんぴょん跳ねながら姫川さんが喜ぶ。


「きゃは!やったー!王様ありがとうございまーすっ」


会話の流れからして、俺と竜馬だけ個室か何かで世界KANのシチューを食べるようだ。てっきり四人で食べるもんだと思っていたが、それは違うみたいだな。


暫くして、部屋みたいな乗り物の動きが止まる。この乗り物の名前は何か、竜馬に後で聞こうと思いつつ俺は乗り物から降りた。


外に出て、最初に目に入ったのはド派手な建物。パチンコ店な看板を思い出すようなネオン光る看板。世界KANという看板がキラキラに光る、眩しい。


そして周りを見渡す、町並みは俺が知っている頃と対して変わっていない気がする。人も多く、オフィス街の様なビルが立つ。俺の知るような町並みに安堵した。異世界やら宇宙やら言うから、見たことがない人に見えない者が歩いたりと想像したが、今の所は俺の視線内には見当たらなかった。


「いらっしゃいませ、竜馬様」


「うむ、個室を頼む」


「かしこまりました、此方へ」


ド派手な建物内に竜馬達と入ると、ズラリと並んだ店員さん達が出迎えていた、余りの人数の出迎えにびびる。流石は王様だと竜馬の背中を眺めながら思った。


支配人っぽい男が、俺達を案内する。


最上階までエレベーターで上り、俺と竜馬は案内された部屋へ。佐渡さんと姫川さんは外で待つようにドアの端と端に立った。


中に入ると、異様に広い。VIPルームと呼ばれそうな部屋に俺は見えた。やっぱり竜馬は王様だからなのか、それとも世界KANを作ったオーナーだからなのかは解らないが、特別な部屋に見える。


「では、失礼致します」


俺と竜馬を席に着かせ、支配人らしき相手は出ていく。世界KANって、高い店だったのか?庶民が気軽に食べれるシチューを想像していたんだが、俺は。


そわそわする俺に、竜馬が声を掛けてメニューを差し出す。


「先ずは、腹拵えだな。食事を終えたら、話しを始めさせて貰おう」


いつになく真面目な竜馬に、メニューを受け取りつつ俺は頷いた。

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