これからの
「どーぞ、水無月様ー」
俺に冷たいお茶を差し出すのは、先程の謎の美少女。
謎の美少女の名前は姫川さんと言うようだ。自己紹介はパッパッとされ、何かを聞く流れでもなく耳に届いた声の情報だけでの認識になった。
「ど、どうも、あ、ありがとう…ござ、います」
「やだー、私は年下で護衛兼務の従者なんだから敬語じゃなくて良いんだよー?」
「ちょちょいィ、待てィ、姫川、お前も敬語使えっつーのォ、こちらと大洋ちゃんは雇い主の…主……?」
曖昧な表情を見せた佐渡さんが、竜馬へと視線を傾け問い掛けた。
「それを言うならば学、貴様も俺様に敬う言葉使いを使っておらんだろう」
「まーまー、ほら、それは俺と竜馬ちゃんの仲だしィ?」
「竜馬ちゃんと呼ぶでない!」
ガタガタと揺れる部屋の中、俺は茶を飲みながら竜馬と佐渡さんの会話を聞く。しかし、部屋がガタガタ動いてるのは何なんだ?
珍し気に周りに視線を泳がせつつ、俺の傍に立つツインテールが似合う姫川さんへちらりと視線を向けると、直ぐに視線に気付いた姫川さんがニッコリ笑った。
「きゃはっ!すっごーい悪人顔!ねーねー、見せて見せてー」
グイッと顔を掴まれ、相手の顔が近付く。こんなに見知らぬ他人な女の子の顔が近付くのは、385年生きた中で無かった為、物凄い汗が吹き出た。尋常じゃない緊張により俺の眉間は深められる。
し、仕方がないだろ!?生身の女の子に実際近付かれたら緊張するに決まってる、俺はずっと独房に居たんだからな!
「姫川ァ、大洋ちゃんは接触慣れしてねーって、余り刺激すんなよォ?」
「えー、もっと見たいー。なら二人の時にしよー」
ぶーぶー文句をたれながら、佐渡さんの言う事を聞いた姫川さんは俺から離れた。二人の関係は、姫川さんが佐渡さんを社長と呼んでいたから、きっとSP会社の部下だろう。
何の説明も無しな状況に俺の困惑は続く。そして姫川さんの然り気無く言った言葉に恐怖する、二人きりでとか無理無理!何で護衛とか従者とかを女の子にした!?そもそも、俺に護衛や世話とかはいらないんだが。
物言いた気な表情を多分俺は見せていたんだろう、しかし凶悪な顔だったらしく竜馬の表情がひきつる。
「す、すまん、大洋。今回は起こさず、驚かせたいが為に連れてきてしまった」
「や、それは、まぁ、良いけど。何で俺に護衛と世話が?」
俺の問い掛けに、竜馬ではなく佐渡さんが答える。
「そこは、ほらー、大洋ちゃんが水無月だからだろぅ?色んな説明は、後にしようぜェ?王様もそこはきちんと説明するっしょ」
「ああ、先ずは刑期を終えた大洋に約束の場所だ!覚えているか?」
嬉しげな表情を見せる竜馬の問い掛けに、俺は考える。
「…………世界KANの、し、シチュー?」
次いで出た言葉に、竜馬はまた嬉しげな表情をし頷いた。




