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禁固365年の男  作者: 獅斬武
第6章 禁固365年まで
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再三言うが、ここは談話室ではない

「ひゃっひゃ!よォー、大洋ちゃん!この前は話せなかったしィ、来てやったぜェ」


「ちょ、マズイッスよー」


今日はウイッスくんの日だったか、とウイッスくんの声を聞き安堵した。何故安堵したかと言うと、全裸だからである。


今日を洗濯の日にしている為、一枚しかない服を風呂場で洗い乾かしていた。そして突然重々しい独房のドアが開かれ、佐渡さんが現れては全裸の俺とご対面。


いつもの笑みを向けた侭、相手の視線が俺の下半身に下がる。


再三言うが、全裸である。


数秒対面し、にたりと佐渡さんが笑う。


「ひゃっひゃっ!悪ィ悪ィー、まァ、立派だしィ見られても気にしねェよなァ?あ、一旦出とく?隠すまで待っとくぜェ」


それは一瞬の出来事でもあった。確かに見られても男同士、気にはしない、しないが、わざわざ口に出さなくて良い事を口にする佐渡さんに何とも言えない気持ちを抱く。


だ、男子高校生の会話みたいなもんか?下半身の話って。


全裸の侭、取り敢えず佐渡さんが来たので椅子と机を用意する。しかし、いつも思うが佐渡さんは突然の訪問が多過ぎる。ウイッスくんに止められてる辺り、竜馬の許可はまだ取ってなさそうだ。


用意を終え、俺は下に置いてあった毛布を掴み体に巻き付ける。竜馬にも全裸で対応した時もあったなぁと思いつつ、俺は佐渡さんに声を掛けた。


俺の声にドアの外にいた佐渡さんが中に入ってきた、悪びれた様子は全く見えず笑う表情だが放たれてる空気は妙なのは変わらずだ。それでも、最初の頃よりは殺気みたいなものを向けられる事はない、ただ、竜馬の様に物凄い友好的な視線は感じられない。


良い言い方が思い付かないが、敢えて言うなら警戒していると言っても良いかも知れない。佐渡さんは何を考えているのかは解らない、けれど情報は惜しみ無く勝手に伝えてく、だから妙なんだと思う。


「全裸でビビったぜェ、そんな趣味ィ?」


「へ、や、ち、ち、違い、ます、服を洗濯してたんで」


佐渡さんと話すのはどうも慣れない、竜馬は場数を踏んだ結果、それなりにスムーズに話は出来るが、佐渡さんとの話す数は少なくついどもってしまう。


その事は気にしてないのか、佐渡さんは話を続けた。


「そォ、そォ、大洋ちゃんの姪っ子の神出鬼没女がよォー」


今日の佐渡さんの話は、洋子ちゃんの話が大半だった。最初は嫌ってるかと思っていたが、話を聞く限り嫌いではなさそうだ。最初の時と今の心境は違う感じに思える。


自惚れかも知れないが、姪っ子の洋子ちゃんは妹の美月くらいにモテてるかも知れない、しかも一人は王様、もう一人は目の前に居るSP社長。


一通り話終えた佐渡さんは満足したのか、すっきり表情で椅子から立ち上がる。立ち上がると言う事は帰るという意思でもある。


「おっとー、忘れる所だったぜェ。今度俺が来る時は大洋ちゃんが刑期終える日だと思うぜェ?竜馬ちゃんが何やら張り切って迎えに行くとか言ってたしィ。まァ、そんときに俺も一緒だからって事で宜しくゥ」


ニタリとした笑みを浮かべてから、背を向け佐渡さんは独房を後にした。


結局のところ、ただ話をしたかっただけかも知れないが、竜馬が迎えに来ると言う情報は俺に安堵をもたらした。


独房を出て、道に迷わなくて済みそうだ。

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