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閑話 ?年、見知らぬ者の独り言
彼を王にしてはいけない。
王と彼を一緒にはしていけない。
それがあの方の願い、あの方の想い、あの方の命令。
やっと手に入れた、あの方の幸せを。
王をずっと見ていたのはあの方だ、王の想いを知るのはあの方だ。
あの方の邪魔をする者は許さない。
彼を王にはさせない、彼は王ではない。
だからほんの少しの亀裂を、綻びを。
王になりたくないならば、彼は選ぶべきだ。
王を捨てるべきだ。
あの方がいれば、王に彼はいらない。
彼が全てを終える日まで、あと、少し。
あの方の幸せのため。
彼に、罪を。




