表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁固365年の男  作者: 獅斬武
第6章 禁固365年まで
60/106

罪と俺、俺と最初の王

竜馬から語られた話は、俺の想像を越えていて別の誰かの話のように聞こえた。


「俺が、最初の王の…子孫…?」


思わず洩れた言葉に竜馬は頷いた。竜馬の真剣な表情に、冗談ではないと理解する。


「空白の王と大洋の事が書かれた本を俺様は見た。最初の王の本が見付からなかったのだが、ある程度の書物は王宮内にあるからな、推測するに、水無月の名である大洋は最初の王の子孫だ」


「いや、でも、俺は普通に一般家庭で生まれて、不老不死って言う自覚も全く無かったんだけど」


「……、それが、神宮司家の罪でもある」


竜馬の表情は、どこか怯えを含んでいるようにも見える。何に怯えているのかは俺には予想がつかないが。


「歴史上で最初の王は水無月の筈だった、しかし大洋も知っての通り、王は神宮司家だ。神宮司はとある12の月名だったが、名を変えておる。名を変え裏切ったのは……神無月。神無月は神宮司と名を変え、王になった」


「じ、神宮司が神無月で?えっと、つまりは?俺とどんな関係で、どんな話になるんだ?」


「つまり、大洋が捕まったのは、空白の王は水無月の名である大洋が本来の王である事に気付き、大洋を王にさせない為に、嘘の罪をでっち上げ捕まえたという話だ」


何とも言えない表情をする竜馬、俺は竜馬の言葉を理解しようと考える。


纏めると、俺はやっぱり何も悪くないと言う事だよな?何だかよく解らない罪で捕まってたが、俺が本来の王の子孫だから、王にさせたくねーとかで神宮司が捕まえたっていう事だよな?あ、合ってるか?と、俺の心に問い掛けてみる。


しかし、俺が本来の王とか、こんな悪役顔が王?いやいや、魔王の間違いじゃね?王様の顔がキラキラしてんなら神宮司とか竜馬とかが王で良いんじゃないかと思える。俺の祖先だと言う本来の王も長生きなだけで、器じゃねーとかそんな話をしてるみたいだしな。


黙った侭でついつい考え事をしてしまった俺に、竜馬が表情を歪ませてから頭を下げた。驚きここでも声を出さず竜馬を見詰める、え、突然何だ?


「すまん、大洋……、大洋の罪など何もなく本来なら自由の身。しかし、つまらぬ周りのしがらみの所為で、大洋を未だ刑期を終えるまでは捕まえた侭でおらねばならん……大洋の時間を奪い…すまん」


竜馬の声は震え、謝罪をしている声色は心からの謝罪に聞こえた。


竜馬が謝罪をしたんだが、俺はと言うと全く気にしていないと言うか、別次元の話みたいな感覚で取り敢えず俺は無実だったな、とかそんな考えしか浮かばなかった。


何百年前の話を竜馬が謝罪したとして、竜馬も悪くないし、かなり昔の話だし言い方は悪いがこの際どうでも良いや的な感覚もある。


寧ろ感謝こそするからね、俺が想像するに、王様ってほんと大変だし、ほんと俺が王じゃなくて良かった、と悲痛な表情と声の竜馬には悪いがそんな考えも浮かんでいた。


俺が未だに黙った侭なのを気にしたのか、竜馬は顔を少し上げ、怯えたような表情をまた見せている。


「……やはり、許さぬか。空白の王がした事とはいえ、俺はその子孫…である。話したくない、顔を見たくない……き、嫌われても仕方あるまい……っ」


「……へ?え?ん?」


怯えを含んだ表情は、まさか、俺に()()()()かも知れないとかそんな考えをしての表情か?


「や、き、嫌いとかはない、黙ってたのは、その色々と考え事を纏めてたっつうか…、その、竜馬が悪い訳じゃなく、そもそも神宮司も、あ、神宮司は竜馬もだけど、俺の時代の神宮司で。ま、まぁ、神宮司も色々あった訳だろ?俺も王の器とかじゃないから、現状維持で構わない…し」


未だに纏まってない言葉を、何と無くで話したが、ちゃんと言葉の意味を汲み取ったであろう竜馬の表情は、みるみる内に花を咲かせるみたいに輝きを取り戻す。女ならドキッとするだろう、俺は眩しッと思うくらいだが。


「大変はやはり、優しく流石は俺の親友だ!本来、大洋に王の座を返し……」


「いやいや、か、返すとかはいらないから、いや、いらないとかじゃ、言い方はアレだが、竜馬が王に相応しいと思うし、このままで良いから。俺は罪が間違いで、ちゃんと外に出れて、ま、まぁ、衣食住がしっかりあれば良いかな、って思うし」


竜馬が言いかけた言葉を、普段は遮ったりしないが、俺は遮り竜馬に伝える。


今更俺が王様です!なんて国民混乱するし、何も教育受けてない俺が王様とか無理、確実に無理!俺の今までにない気迫に押されたのか、竜馬は王の話を一旦止める。ただ、いつでも返すとは言ってはいるが、今度は丁重に断った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ