会話の中にあるのは、驚く話
今現状に思う事は椅子が足りないと、くだらない事だった。
今日は朝から騒がしかったと、眠い脳内で俺は考えている。朝早くに佐渡さんの愚痴を聞き、朝も昼も飯を食わずに寝ていたと記憶し、夕方前のこの時間に竜馬に起こされ学園や洋子ちゃんの話を聞いてる途中にまた佐渡さん登場。
今、佐渡さんが登場した後の話だ。
凄い狭い独房でもないが、男三人入るには狭いと感じる。そこに椅子と机があれば、まあ、そりゃあかなり狭いだろう。椅子をもう一つ追加は難しいんじゃないかと考えた。
そうなると、順位からいって俺が床に座るのが妥当だ。竜馬は王様、床に座らせるのは恐れ多い、佐渡さんはお客さんだとして、床に座らせるのはどうかと思う、で、残る俺が床に座るだ。
一先ず床に座ると、竜馬と佐渡さんが訝しげな表情を見せた。
「何ゆえ床に座っておる、大洋」
「そうーそうー、大洋ちゃん何でェ?」
「いや、竜馬は王様で、佐渡さんはお客さん?だから」
佐渡さんへの言葉が疑問系なのは仕方ない、本来独房内に客は来ないしね、うん。
俺の言葉に竜馬が座る俺の前へと来る、そして腕を掴まれ引っ張られると、腕を掴まれた侭、いつも竜馬と話す時に座る椅子へと座らされた。
一連の流れはスマートかつ、無駄はない。
「学は立たせておけば問題ない、大洋が座ってれば良い」
「へいへーい、立ってますよォ、王様のご命令だしねェ。つか、今日は何でいる訳?来ない日だっただろぅ」
椅子に座る竜馬と俺、座る竜馬の右側に背を丸め立つ佐渡さん。自然に立つ姿は、多分いつもそこに立っているからだろうなァ、習慣ってあるし、竜馬のSPでもあるだろうしね。ただ、佐渡さんの目付きが悪いから与えられる印象が王様と隣に立つガラの悪いチンピラみたいにしか見えない、言わないが。
目線に捉える今の状況を見ている中で、竜馬に問い掛けた言葉を聞き俺も疑問に思い意識を竜馬に向けた、確かに今日は竜馬の来る日じゃなかったな。
「学園に入る前に、大洋に言っておきたい大事な話があった。だから学、貴様は帰れ」
「いやいや、そりゃ無理っしょ。一応、王様の護衛だしィー俺も大洋ちゃんと話してェし!」
「いいから先に帰っておれ!学、王命だ」
王命の言葉に、佐渡さんの唇がへの字に曲がる。その顔は不貞腐れた表情にも見えた。
「王命、ねェ……、なら帰って神出鬼没女をからかってくるわー」
「な、学!洋子には手を出すなと言ったであろう!」
「大洋ちゃんと話せねェしィー、神出鬼没女からかうしかねーじゃん。ねー?大洋ちゃん」
俺に話し掛ける佐渡さんだが、何かを言う前に竜馬が遮る。
「何故、大洋と話せぬからで、洋子に近付く話になるのだ!?」
「大洋ちゃんの姪っ子だから、だなァ?俺が神出鬼没女に、ちょっかいかけても別にイイじゃん、王様のもんじゃねェしィ」
洋子ちゃんへの好意は、佐渡さんにもバレてるんだなと思ったが、色々と雲行きが怪しくなる。ツン王様の竜馬を刺激しない方が良いんじゃないかと。
「…っ、よ、洋子を物扱いするでない!た、確かに俺様の、では…し、しかし俺様は、す、す、すっ…い、て」
うん、どうやらツンではなく照れまくっているようだ。聞いてるこっちがこっ恥ずかしい。
それに気分を良くしたのか、佐渡さんは意地の悪そうな笑みを浮かべて今度は竜馬をからかい出す。
「ひゃっひゃっ!なァに、恥ずかしがってんだよォ、初じゃねーの、王妃が見たら発狂もんだぜェ。そんなんで神出鬼没女を側室に出来るのかよォ」
「う、煩い!さっさと行け!」
「へいへーい、じゃーなァ、またな大洋ちゃん!」
すっかり不貞腐れは直ったのか、俺にひらひらと手を振り独房を出ていった。
しかし、なんだ、ちょっと、まて、まてまて、え?竜馬…結婚してんのか!?
佐渡さんの言った言葉に、王妃や側室と言った類いに俺は反応してしまった。そりゃあ、王様である竜馬だ、既に結婚してて可笑しくはない、歳も見た目と中身は違うしな。
驚きに何も言えず、そして聞けずに竜馬を見詰める。
竜馬は俺の視線に気付き、一旦咳払いをしてから真面目な表情で俺へと視線を向けた。
「本題に入るぞ、これから話すのは、神宮司家の罪…、そして大洋が捕まった事と不老不死の話でもある。聞いて、大洋がどう思うかは俺様も正直解らぬが……親友に隠し事はしないと決めた、聞いてくれ」
真面目な表情をする竜馬だが、俺はそれよりも竜馬が結婚していた事に衝撃を受け、真面目に話している俺が知りたかった情報が薄れた話になってしまった。
いや、まぁ、俺の罪や不老不死の話は聞くけどね。




