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禁固365年の男  作者: 獅斬武
第6章 禁固365年まで
53/106

情報交換は大切に

俺の選択肢は、佐渡さんの圧に敗北し俺が知っている侭の情報を間違える事なく伝えた。


「姪っ子………、大洋ちゃんのォ?」


佐渡さんの確認めいた語尾に俺は頷く、手紙にも書いてあったし、信じるか信じないかと問われるなら、俺は信じる方にかけている。


わざわざこんな俺に手紙を書いて、姪っ子ですなんて嘘を言っても何にもならないだろう考えての事だ。


「いくつか質問してェんだけどォ、大洋ちゃんイイ?」


「こ、答えれる範囲なら」


急に真面目な表情を見せた佐渡さんが、俺へ視線を向けて問い掛ける。


「大洋ちゃん、日本生まれの日本育ちかァ?」


「あ、はい、え?、た、多分?み、身分証明は日本なんで」


何の確認だ?と思いつつ、佐渡さんの問い掛けに戸惑いながらも頷き答えた。俺が外人さんにでも見えたんだろうか。


()()()()の可能性はねェ?」


「……は?え?い、異世界…?」


「そそ、異世界人、異世界人。それならあの神出鬼没女の神出鬼没具合もそれなりに理解出来るんだけどよォ、異世界ビザねェとかで弄れっしィ」


「い……異…世界、人ではないで、す」


「だよなー、ちっ、神出鬼没女、あの現れ方は何か絶対ェ秘密があるぜ!」


佐渡さんが洋子ちゃんに何か怒りを感じているのは理解したが、それよりも何よりも理解不能な単語が佐渡さんから語られていた。


いや、意味は理解出来るが、出来るがそれが当たり前みたいな口調で話している佐渡さんに俺は驚く。


俺が黙っている事に気が付いた佐渡さんが、目線を合わせ首を傾げる。


「大洋ちゃんも聞きてェ事があるなら、どーぞォ」


真面目な表情から一変、ニタリと普段の表情を見せた相手に、俺は口を開き問い掛けてみる。こうやって聞かけれると、言いやすいのは確かだ。


「お、俺が捕まって、正直長い年月で…、外の世界がどんな状況か全く解らないので、その……」


拙い俺の言葉で相手に伝わったか不明だが、佐渡さんは俺の話を聞いてくれてはいる。


「おゥ、そーいやァ、そうだったそうだった!大洋ちゃんはそうだった!俺と大洋ちゃんの仲だしィ?どうせ後ちょっとで出れるしィー、少しくらい知っとかないとなァ?」


一人納得する様に頷き、佐渡さんは俺の疑問というか、知りたい情報を教えてくれた。


「大洋ちゃんの時代は歴史上である程度の認識はあるけどよォ、今の時代は異世界からの訪問、移住は普通だぜ?」


「い、異世界から……、そ、それって、その、海外から日本に住む感覚と一緒のような?」


「ひゃっひゃっ、考えは古いがそォだぜェ?昔は飛行機とか船とかで来てたが、今はゲートがあるからなァ、ビザ発行すれば世界各国、宇宙全般、異世界からの訪問は当たり前だなァ、俺は一応、宇宙出身者だぜ、今は地球に移住してっけどォ」


佐渡さんの言葉に、俺が生きてた時代と今の時代はかなり違うようだ。何もかも遮断されたこの部屋は、俺の想像を遥かに越えてはいる。佐渡さんから聞いても、いまいちピンとは来ない。


「まァ、神出鬼没女の事は調べ続けるしかねェかァ。異世界移住者辺りかと思ってたんだけどよォ」


唇をへの字に曲げ、悔しそうな表情を見せる。俺が見る限り、洋子ちゃんと佐渡さんは仲が宜しいとは感じられない。


「さァて、聞きたい事は聞いたしィ、そろそろ行くわ。また何かあったら邪魔するぜェ、大洋ちゃん」


椅子から立ち上がり、佐渡さんがドアの方へ向かう。俺はと言うと座った侭、相手の背中を見詰めるだけ。


「あー、そうそうォ!もう一個ォ」


不意に佐渡さんが振り返り、俺へ顔だけを向ける。


「大洋ちゃんが学園来るだろー?護衛対象に大洋ちゃんも入るから宜しくなァ」


それだけ言うと、ひらひらと手を左右に振って出ていった。


お、俺も護衛対象って、え、一般人なんだが……俺は首を傾げた。


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