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禁固365年の男  作者: 獅斬武
第6章 禁固365年まで
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やっぱり主張は通らない

「良い案を思い付いたぞ、大洋!」


今日は来るだろうと、カレンダーを見て思っていた俺で席や机の用意をしていた所に竜馬が現れた。


現れたと同時に、告げた言葉に俺はぽかんとした表情を見せていたとは思う。何を思い付いたのか、何の話なのか、疑問が頭に浮かんだ。


俺の表情はお構い無しに、竜馬は用意中の椅子を引き座る。机は既に用意してあり、そこへ指先を乗せ、トントンと良い音をさせながら座る様に促された。


椅子を持ち、机を挟み相手の前に座る。これは竜馬と話す時のスタイルでもある。


「良い案、って?」


「忘れたのか?刑期を終えた後に通う学園を嫌がってただろう。俺様なりに考えたが、確かに長く生きてる大洋に心許す友がいないのは心細いからな。話も合わぬかも知れん懸念も解る。俺様もそうであった」


確かそんな話を、と共に何処か満足げに頷く竜馬に嫌な予感しかしない俺。予知能力的なものは備わっていないが、嫌な予感がヒシヒシと感じる。


相手を見詰めていると、竜馬は得意気な表情を見せ胸を叩き任せろといったような仕草を見せた。


そして告げる。


「俺様も学園に通うぞ!クラスは大洋と一緒だ、寂しくないであろう!」


告げられた竜馬の言葉を聞き、全くもって俺の主張は通らなく、学園には通うしかないという選択しかないのに絶望する。ただし、悪人顔な俺は見た目、絶望感は出ていないだろう、無表情ぐらいにはなってそうだが。


コミュ症の俺が勇気を振り絞り、あの日は拒否の言葉を言ったが、竜馬の妙な勘違いで俺が学園に通いたくないのは寂しいからという認識にされてしまったようだ。話を聞かない竜馬は、ある意味ここまで来ると特技に思えてくる。


話を自分の良い方に全て解釈する特技、された方は迷惑被めいわくこうむるが。


「…あ、まあ、うん」


二度の拒否の言葉は言えず、俺は得意の取り敢えず肯定するで頷いた。何を言っても、結局竜馬によって、学園に通わされそうな気がする。


俺の頷きを、そのまま肯定した意味に取った竜馬は、それはもう満面の笑みだ。例えば俺が女だとしたら、輝かしい笑顔にぶっ倒れて頬を紅潮させるかも知れない。生憎、顔面偏差値が強面部類に入る俺の頬は紅潮もしないが。


「ふっ、そうであろう、そうであろう!一緒に通えれば寂しくもなく、俺様という親友が居れば話も出来る、俺様も洋子と一緒に通えるしな!」


まさか目当てはその少女か!と、ツッ込んだが、言えずに聞く。確か少女は俺を知っていて、364年生きているのも知ってはいたなとぼんやり思った。


ふと、竜馬は立ち上がった、話していたら竜馬が公務に出掛けるだろう時間になっていた。


立った気配に視線を上げると、それと同時に差し出される一通の手紙。首を傾げて竜馬と視線を合わせる。


「洋子に渡してくれと頼まれたものだ、大洋が通いたくないと言ったのをどうすれば良いか相談してな、それで渡してくれたのが、この手紙だ」


グイッと押し付けられ、手紙を受け取る。


「次はちゃんと菓子の土産を持ってくる、それまで待っておれ!」


いつもの捨て台詞を吐いて、竜馬は独房を後にした。


受け取った手紙の裏を確認してみる。


「………さ、相楽……洋子」


相楽の文字に、俺は少なからず心がざわついた。

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