閑話 364年目、俺様と少女とSPと
学園行事を終わらせた俺様は、久々に大洋に会いに行った。俺様という一緒の孤独を抱える相手は中々いないからな、寂しいだろうと思いの判断だ。流石は俺様、慈悲深い王だ!
大洋はとある罪で捕まっている俺様の親友だが、この罪は空白の王がでっち上げた罪に近い。
今、現状の王である俺が直ぐに解放しても良いんだが、頭の硬い連中がそれを許さない状態だ。
大洋が捕まっている罪は、神宮司家を揺るがす歴史的罪でもあるからな、これがバレれば王族としての地位は地に落ちる、だから多少の理解は出来るのだが……もどかしいのもある。
「親友のピンチに助けにならんなど、俺様は親友失格だな」
学園の理事長室、座り心地が最高な椅子に座り、大理石で出来た机に頬杖をついて呟いた。
「悩み事ですか?竜馬さん」
急に聞こえた声は、俺様を救ってくれたと過言ではない少女。と言っても、今は二十歳だから少女ではないだろうが、俺様から見たらまだ少女ではある。
少女、相楽洋子の方へと振り返った。
彼女が神出鬼没なのは変わっていない、突然現れ、突然消える。この学園の生徒として通っているのは確かで、学園以外で見掛けるなら、俺様達が出会った場所くらいだった。
会う度に彼女の事を聞くが、いまいち状況が理解出来ん時もある。の、のべ、げむやら、俺様はいつか大恋愛するなど。
その話をする時の彼女は生き生きとしていて、俺様は聞くに徹している。
「何処から入ったか解らぬが、相変わらずの神出鬼没具合だな洋子」
「前にも言いましたけど、寝てたら来ちゃうみたいです。自由自在は難しいんですよ?最近は、竜馬さんを考えると来れる気がしてます」
タレ目がちの目が笑顔を作るように細められる、その笑顔と告げられた言葉に俺様は嬉しくなり自然と俺様も笑顔になる。
「で、何か悩み事ですか?」
首を傾げ問われた言葉に頷き、答えようと口を開く。
「うむ、大洋がな、学園に入りたくないと言っていてな。何か良い方法がないか考えておる所だ」
「大洋おじさんが?」
彼女の問い掛けに俺は頷く、彼女な眉間に皺を寄せ考えているような仕草を見せる。その姿も、悩む表情も可愛いと感じるのは俺様が彼女に好意を抱くからだろうなとは思っている。
彼女も考える中で、ぶつぶつと、物語が変わる?やら、もうすぐ主人公が、やらと言っておるが、俺様にはさっぱりだ。
彼女が良く言う主人公は俺様と大恋愛するらしい女だったか?俺様が興味あるのは洋子であるのだが、歳も離れておるし、王という身分で周りも王妃については煩いし中々前に進めん。
考えている姿を眺めていると、理事長室のドアが前触れもなく開く。多分、俺様のSPだ。
「チッ!まァた、現れやがったか神出鬼没女ァ。王の部屋に勝手に入るんじゃねェーのォ。うっかり撃っちまうぞ」
「撃つでない!それに、貴様にも言えるだろう、学。入る時はノックくらいするべきであろう!」
「へいへーい、けどォ、竜馬ちゃん守る仕事だしィ、仕方なくね?」
「ちゃん、などと呼ぶでない!」
「へいへーい」
軽いノリで話す男は、俺様の専属SPである佐渡学。この学園に学も通ってはいる、だから現れた今の姿はこの学園の制服姿をしての登場ではある。
「竜馬さんが許してるから、良いんじゃないですか?ね?竜馬さん」
「うむ、俺様は構わん」
「……だーかーらー、守ってる俺の身になってくれませんかねェ、王様ァ」
洋子と学、二人は余り仲が良いとは言えぬ関係ではある。
洋子の方は、きゃら?のSPの王様が大洋に何かするとかしないとか独り言が聞こえた事があったが、好きなタイプではないと言っておったな。
学は学で、俺様のSPに関わらず神出鬼没な洋子の侵入を許す事にプライドを傷付けられているようであった。洋子は俺様を暗殺するような相手ではないんだが。
「今は佐渡さんに構ってる暇はないんで、竜馬さん、次までに悩みの解決、お手伝いしますよ。また来ますね?」
そう言った洋子は、学が開けたドアから出て行った。洋子が出て行った後を学が追い掛けたが、既に見えなくなったのか悪態らしき言葉を吐き出しながら俺様の部屋である理事長室に入る。
「チッ、次は絶対阻止してやんぜ」
無理だろうな、と俺様は思った。




