復活した俺の妄想的な本
目の前には真っ白な紙、カレンダーの裏紙。そして鉛筆、俺が何かを書き記す時のスタイルだ。
「学校に通うにしろ、通う為のお金はどうなるんだ?無理に通わせておいたとしても、金を払うとかになった場合、やっぱり金は必要だよな?……本か、やっぱり本か?」
定位置の床に座り込みながら、俺は前に断念した本について考える。
あの時より俺の知り合い、知人と増えた筈だ。今なら…いけるかも知れない。前回考えた時にいた人物は、神宮司、妹の美月、幼馴染の健次、妄想してた銀髪の男又は女。
書き慣れてはいないが、名前をカレンダー裏に書いていく。前に書いたのはいつの間にか消えていたので、仕方なく最初から書き記していった。
神宮司綾諭殿下、いや、王に一応なったのか?空白の王って竜馬も言っていたし王様になったとして、神宮司は王子様な俺を禁固刑と突き付けた人物と書く。意味ありげに空白の王とかも書いておこう。
水無月美月は俺の妹、愛されゆるふわ少女で、俺の願望として、幼馴染の健次と結婚するとかにしよう。妄想の本だ、何を書いても今さら美月や健次に見られる訳じゃないからな。
相楽健次は俺の幼馴染で、世渡り上手だが見た目に騙されるな的な事はやっぱり書いておく、美月の婚約者とも。こっちも健次に見られる訳じゃないからな。
で、断念してた銀髪の男か女にするか、……実在するって言うなら俺を拷問するのは佐渡学が妥当だな。細目の銀髪、常に笑顔だが瞳の奥は笑っていない不気味な男。名前はちょっと変えとこう、出版されたらバレる。
望月葵さん、妄想だ、これは妄想だ。妄想だから何を書いても許される……、葵さんは俺を支えてくれた人で後にこ、こ、恋人……となる、と言う設定にしよう。本の中くらい良いよな?……、うん、よしとしよう。
葵さんの研究仲間、こっちは恋敵で盛り上がる為の当て馬、実際俺が当て馬みたいなもんだが、妄想、妄想でご都合主義、と脳内で繰り返す。
結構、登場人物は出てきた感じか?俺の本とか本当に出来そうじゃね?と少し興奮した。
次は神宮司竜馬、金髪の王様で俺の秘密を握る重要人物その一とする。まァ、今現状の王様を書いて良いのかわからねーが、妄想な本みたいなもんだし、大丈夫だろうと一人納得してみる。
謎の少女、重要人物その二として、俺の秘密を知ってそうな子とか書いてもおこう。
後は、ウイッスくんだな。ウイッスくんは俺を見張る看守ってだけで、一息入れる人物みたいなものにしよう。物語には起承転結の中にもゆっくり出来るパートは必要な筈だ、と納得してみる。
カレンダーの裏が、文字でびっしりと埋まる。俺の知り合いも独房入る前と後じゃ、後の方が増えてるな。これを物語として書き記すのかと考えたら、俺のいつものパターンがやってくる。
「……後、半年で書くとかムリムリ、やっぱり地道に働くしかねーよな」
面倒と無理を悟り、俺はまた本を書く事を諦めた。




