久々の快適な日々、の筈
364年目、俺の禁固が終わるまで後一年、正確に言うと半年近くになる。……ざっくりし過ぎか。
とにもかくにも、ここ数ヶ月は親友と宣言してくる偉そうな王様、竜馬が来てた訳なのだが暫くは学園行事で忙しいらしい。
話を聞くと、俺が通うであろう学園の理事長のようだ。お忍びで生徒のふりをすると、聞いてない事を相変わらずべらべらと俺に話す。
話し好きの女子か!とツッコミたくなったが、それは心の中で行い、俺は黙っていつもの何でも頷き肯定する戦法を行っている。これは聞き流すよりは相手に良い印象を与えるが、生憎俺の顔は悪人顔の為に意味は成さなかった。これが適用されるのは、妹の美月か幼馴染の健次くらいだ。
「今日は、久々にゆっくり出来そうだなぁ」
竜馬が来ると考えさせられる事が増える、増えると竜馬が来なくとも、一人の時に考えさせられる時間が自然と増える。繰り返し、繰り返し行われ休んだ気にならない。
ゆっくり出来そうな日は、昼寝に洒落込むに限る。意識が薄らぐ中で、美月がだらしない!なんて怒った気がした。
うとうとと、それはもう微睡みの中は最高でやっとゆっくり出来ると嬉しくなる中で、俺に話し掛ける奴が一人。
「大洋さーん、ちょっと良いッスか!?」
出来れば無視を決め込みたい為に、呼ばれても俺は返事をしなかった。俺みたいな野郎に話し掛けても面白味はないからね、と言わずに念を飛ばしたりしたが、まあ、受け取らないだろうなと思いつつ黙った侭でいる。
諦めるだろうと思い、黙っているもウイッスくんは諦めずに俺に声をかけてくる。
「大洋さーん、大洋さん!大洋さーん、大洋さん、たーいーよーさーんー」
壊れたレコーダーのように、俺の名前を連呼するウイッスくん。これは、俺が返事するまで名前を呼び続けるパターンか?
それでも動きたくない、返事も面倒な俺は黙っている。これは、俺とウイッスくんの根気比べだ、と勝手に考えた。
何度も何度も俺を呼ぶウイッスくん、それほど大事な話なのか、これは返事をするべきなのか迷っている所に、ドアが開く音が聞こえた。まさか、ウイッスくん、開けたのか?
壁側に向けていた顔を、開いた重苦しいドアの方へ向けると、立っていたのは見知らぬ青年。
銀髪の細目、俺を見詰める瞳は蛇を想像させる様な雰囲気だ。真っ黒い服に身を包み、表情は笑顔何だが本当に笑っているのか解らない。
「ひゃっひゃ!何だ起きてるじゃん、シカトすんなよー。看守くんかわいそーだろぅ?」
妙な雰囲気の男に、俺は背筋がビリビリと悪寒が走る。や、やばい奴か?前に俺が想像で作った本の登場人物みたいな話し方だ、あれは拷問する人みてーな登場人物で…。
何も言えず、俺は相手を見詰めるのみ。
俺は初めて、竜馬なぜ今日は来ない!と心の中で叫んだ。




