閑話 18年、私のおじさんと金髪の王様
物心がついた時から、お父さんってちょっと可笑しいって思っていた。多分、お母さんも感じてたとは思う。
私の名前は相楽洋子、ごく一般家庭に生まれごく普通に人生を歩んでいる。多少可笑しいと言うなら、お父さんの時々言う可笑しな言動かも知れない。
「洋子、お前の叔父さんである大洋様……、た、大洋は365年生きるノベルゲームのシークレットキャラで」
叔父さんと言われている人の写真を見せながら、お父さんはいかに大洋おじさんが素晴らしいかを言ってくる。
大体、お父さんがノベルゲームの、って話をし出すとお母さんが飛んできて、変な事を私に吹き込まない!ってぷんっとした表情で怒る。怒るけど、怒り方が可愛いって幼いながらに感じてた。お父さんも、お母さんにデレッとはしてるとは思う。お父さんも娘の私から見てもそこそこ格好良いと思う、あの言動さえなければ。
それにしても大洋おじさん、365年生きる?に、人間?
大洋おじさんの写真を見ると、凄い怖い顔で。お母さんも優しいとは言っていたけれど、写真だけじゃ解らない。ノベルゲーム云々の話しにお母さんは咎めるけれど、365年生きると言う話は否定していない。だから大洋おじさんはきっと特別で、365年生きるんだ、って素直に信じていた。
幼い頃からお父さんの話を聞いて、お父さんが書いた本を読んで大洋おじさんは会った事も話した事もないけれど、知ってるような気になっていた。
お父さんは弁護士だけれど、私に読み聞かせるように書いた本が幼いながらも面白かった。いつの間にかその本は無くなってて、お父さんに聞いたらお城に勝手に置いてあるとか。え、いいの?って聞くとお父さんは笑顔でいつか役に立つって言っていた。
そのいつ、って言うのが今なんだけれど。
可笑しなお父さんと、365年生きる大洋おじさんの妹であるお母さんの子供である私も、どうやら特別なものを持っていたみたい。
普通に部屋で寝て、目が覚めたら見知らぬ場所。寝間着だった筈なのに、着ている服はお気に入りのワンピース。
ふと、視線を向けるとキラキラ金の髪を光らせる王子様みたいな人がいた。
思い出すのは、お父さんから聞かされたノベルゲームの話。何度も何度も聞かされて、格好良い王様達が沢山いるみたいで、その中から好きな王様とハッピーエンドに向かうとか、そんな話。まさに目の前にいるのは、見た目は王子様っぽいけど、金髪の王様かも知れない。
現実か夢かどちらにしろ、私はノベルゲームの中にいるのかも!って思って、主人公の少女が言う言葉を金髪の王様である竜馬さんであろう相手に言ってみる。確認は取ってないけれど。
私が言うと、凄く驚いた表情して、問い掛けられたから、やっぱり金髪の王様で、竜馬さんなんだって興奮した、だから私は問われた言葉をお父さんから聞かされた内容で話してみた。その途端に、私は目が覚めたのか気付いたら部屋にいた。
これはお父さんに言わなきゃっ!って思って内容を話すと興奮して女の人みたいな話し方をしてきたお父さんが次があったら、あー言え、こー言えって言ってくる。お父さんは大洋おじさんの事で興奮すると女の人みたいな言葉遣いになる、余談だけれど。
次は割りと直ぐに来て、私は竜馬さんにお父さんから言われた事を忠実に間違えず言ってみた。帰って来た言葉の答えは聞いてなかったから、多少私の言葉を織り混ぜて話したら急に元気になった竜馬さんから言葉を掛けられる。
またお父さんにノベルゲームの世界に言った事を伝えると、次はって話しになって私は頷いた。
けれどもそれから暫くして、ぱったりとノベルゲームの世界に、私は行けなくなった。
その間に、弟が生まれたり、ごく普通の生活をしていたけれど、私が二十歳になる頃、またノベルゲームの世界に行く事になった。
私、物語の登場人物になりそう?なんて期待して。




