364年目、俺のターン3
竜馬がいつもの捨て台詞と共に帰っていく、毎回思うが普通に帰れないのだろうか、と。
セットされた机の上に煎餅とお茶、思うに王だとしても何処にでも売ってそうなお菓子を食べるのかと、散らかった机の上を片付けながら思う。
因みに最近解禁されたのか、ウイッスくんは普通に話しかけてきては、竜馬が散らかしていった菓子や食べ物の紙皿等のゴミをドアを開けて受け取ってくれていた。
「大洋さーん、王様また片付けなかったッスか?」
「うん、まあ、王様だからと思ってるけど」
「今、開けるッス。ゴミ下さい」
「あ、ありがとう、…ございます」
例えロボットだろうとも年下だろうとも、緊張して敬語になってしまう。俺のコミュ症は中々治らない。
俺の認識なロボットは、カタコトみたいに話すだろうと思っていたが、ウイッスくんは流暢に話す。
ロボットらしくないウイッスくんがドアを開け、ゆっくりと顔を出して中に入ってくる。ドアが小さいのか、頭を屈めていつも入ってきていた。
ウイッスくんを見上げ、ゴミを手渡す。
相変わらずデカイな、ウイッスくんと思いながら見詰めているとウイッスくんは俺に笑顔を向けた、これは所謂ワンコな笑顔だろう。俺に向けられても、男だしトキメキ的なもんはないが、これで相手が女ロボットならちょっとキュンとはするだろうか、とくだらない事を考え数秒。
ゴミを受け取ったウイッスくんは、開いたドアへ向かい再度笑顔の会釈をしてからドアを閉めた。
「まァ…ウイッスくんって名前じゃないとは思うけど…今更ウイッスくん以外で呼べないんだけど、うん」
呟きつつ、机と椅子を部屋の隅に重ねて片付ける。片付け終わると俺は定位置に座り竜馬が言った事や謎の少女の事、そして未だに聞けていない俺が長く生きて死なない体の謎を無い頭を使って考える。
「死なない体や長く生きるのはこの際、竜馬にいつか聞ける日が来る筈だから一旦置いといて……俺が学校に通う事になりそうな案件から行こう」
その辺りに散らばった裏が真っ白な書き込めるだろうカレンダーを取り、気に入っている鉛筆を掴み考える。竜馬が言っていた言葉を思い出しながらカレンダー裏に書いていく。
学園、王様枠、庶民枠、国々の王様、他交流。
学園…、俺の知る神宮司の時代にも学校はあったな、俺が通っていた学校だが。つうか、俺の通ってた神宮司学園ってまだあるのか?あるだろうな、神宮司王様だし。俺が通うのは、別の学校っぽい。
王様枠…、竜馬の作った学校の推薦枠みたいなもんか?けど俺は庶民枠で入る…庶民枠…庶民の推薦…か?庶民から推薦とかないよなァ、なら推薦枠じゃねーとか?
国々の王様…、国々の…王様!?え、王様が学校通うのか?ま、まァ、これは竜馬の経営概念みたいなもんだよな。
他交流…、国々の王様で他交流…、とんでもない規模の学校じゃね?色んな国から集う王様と交流って事だよなァ。というか、そんなに王様いるのか?ま、庶民や他もいるんだよな、庶民枠がある訳だし。
「書いてはみたが、全く纏まらない…」
書き殴った紙はぐじゃぐじゃと文字がざっくばらんに散らばっている。読み返したら解らなくなる書き方で俺は眉を寄せた。
そして、謎の少女。
竜馬に聞く限り、突然現れ突然消える。俺と竜馬の事を知ってて、確か俺をおじさんと呼んでるとか。……おじさんな見た目じゃないんだけど、いや、中身はおじいちゃんみたいなもんだけど。
「………、よし、止めた。考えても俺には全くさっぱり、微塵も理解出来ない」
書いた文字を見て、早々に俺は諦めた。




