364年目、俺のターン2
「いやいやいや、まてまてまて、またとんでもない話を聞いた気がしないでもない!」
ヘタレのコミュ症の俺は、気になっている不老不死に長寿な話を未だに竜馬に聞けないでいたが、それに追撃する様な形で気になっている女の子の入学祝いを考えろって……。
「体の事で手一杯なのに、追い討ちみたいに何で竜馬の恋バナ及び入学祝いを…」
生まれてから今まで彼女が居た事もなく、童貞まっしぐらの俺に普通聞くか?や、まさか俺は女慣れしてると思われてるのか?そもそも、いつ俺は王様である竜馬の《《親友》》になってんだ!?
「色々、ツッコミどころが満載だ……」
これで親友じゃないです、って言った日にはみるみる内に不機嫌になりそうなんだが。不機嫌そうな表情の竜馬を思い浮かべ、ぶるっと体を震わせる。怒らせたら禁固が伸びるかも知れない。
一先ず俺はゆっくり考えようと、落ち着くいつもの定位置に座る。竜馬が置いていった椅子はどうにも慣れない、慣れ親しんでしまった床に座るが今はしっくりきている。
「……入学祝い……、美月に何をやったっけか…?」
俺が入学祝いやプレゼントを渡すなら、妹である美月か、幼馴染の健次ぐらいだしなァ。随分昔の、300年以上前の事をどうにか思い出そうとする。そもそも、健次にやるプレゼントは美月が選び美月が渡す、美月へのプレゼントは俺が渡すが健次に相談して二人で決めて、のサイクルを繰り返してきた。
俺は全くセンスがなく、美月曰く女の子の心を解ってない!と怒られた事もある。健次も一緒に怒られはしたが。
「センスがない俺が、果たして若い子の入学祝いを決められるか?いや、ないない、無理無理。え、どうすんだ…?」
体育座りでぶつぶつと呟く。良い案が浮かばない、入学祝い……か、鞄か?その辺りに纏められた捲られ破られたカレンダーの裏に俺は候補として鞄と書き記す。
「無難、無難…、財布、時計、ハンカチ、ティッシュ…いや、ティッシュはないな。これじゃあ、入学する相手の持ち物じゃねーか」
一応は言葉にした物を書き記すが、しっくりとは来ない。
不意に、我に返る。
「いやいや、何を真剣に考えてんだ?竜馬が考えれば良いんじゃね?そもそも、好きだろう子のプレゼントは自分で決めるもんだ、うん、俺は一個は考えた、よし、これで行こう」
考えるのを放棄した俺は、鞄の文字に丸をつけて一人満足な表情を見せる。
「に、しても、竜馬も長く生きる事に悩んだ次期もあったんだなァ。俺が葵さんに会えたのと同じに、竜馬もその子に会えて自分を取り戻した感じか」
どんな子だろうか思いながらしみじみと俺は呟き、ゆっくり床に横たわった。考え過ぎて眠くなってきた俺は、目を瞑り眠りの体制に入った。




