364年目、俺のターン
ヤンデレツンデレ要素満載の金髪の王様は、とんでもない発言をかました後に、公務がなんとかで独房を出ていった。いつもの捨て台詞も忘れずに。
「いやいやいや、まてまてまてまて」
じゃらじゃらと、鎖の音をさせながら独房内をウロウロする。 こんなに慌てた事はあったか?いや、生きてきた384年間ない。
不老不死に長寿、竜馬もそれに当たる、俺と一緒だと確かにこの耳で聞いた。然り気無く、日常会話のように何でもない当たり前のように。
竜馬は不老不死で長寿になる、何等かの原因を知ってるっつう事か?
「肉が嫌い…」
不老不死で長寿は肉が嫌い、これも竜馬が言っている。確かに俺はある時から肉が好きでは無くなった。前は普通に食ってはいたが、ある日を、両親が亡くなった日を境に。
俺の両親は、車の事故で亡くなった。俺もその車に乗っていたが、俺は奇跡的に助かったらしい、記憶に全くなくその前後の車に乗る前の記憶も曖昧だ。ただ、食事をした事は覚えている、美月に内緒で学校を休めと言われて食事をしに…、
「…っ、つぅ」
頭が痛くなる、両親の事を思い出そうとすると、思い出したくないのか頭が痛くなった。両親というよりも、食事の事を思い出そうとすると、頭が痛くなったかも知れない。
余りにも酷い痛みのため、無理に思い出すのを止めたのは記憶に残ってはいる。
葵さんが調べてくれた、空白の話、閲覧禁止事項の本。竜馬も空白の王がどうとか、って話していた。
俺の罪、空白の歴史、竜馬と俺の不老不死で長寿。364年前から何かがあったのか?そもそも考えるのは苦手だ、考えるのは美月や健次が得意なんだけどなァ…。
「美月、健次……もう、死んでるよな。二人は幸せだったのか」
ふと、二人を思い出した。兄としては、幼馴染である健次になら美月を嫁にさせても良いと勝手に思ってはいたが、二人はどうなったのか。此処を出たら調べてはみようと、やりたい事リストに追加する。
「それもそうなんだが、不老不死とか長寿とか空白の話とか、竜馬に聞いたら答えてくれるのかどうか」
人の話を聞かず、自分の話を聞かせるのが楽しみそうな相手に、コミュ症が酷い俺に遂行出来るミッションなのか?
ウロウロしながら考えていたが、歩き疲れ一先ず定位置の場所に腰を下ろす。机や椅子が出しっぱなしになってはいるが、今はそれどころじゃない、考えるだけ考えなけりゃ独房出たら竜馬と城でランデブーになりそうだ、何とか避けたい。やりたい事リストを遂行するに為にも。
次に来るのは二日後、俺は竜馬に聞こうと意気込んだ。




