突然で唐突な事実
また、夢だ。
大昔の、捕まるよりずっと前の朧気な、両親がいた頃の夢だ。
何故今頃、こんな夢を見るのだろうか、見た目が若くとも生きた年数は年老いているから昔を思い出すのか、結局解らない。
あの前後、両親が死ぬ数日前の俺は……、
「……っ、……」
目が覚めた、何かを思い出しそうで思い出せない。
禁固365年と言い渡される前の数ヶ月は、色々と周りで変な事が起こっていたかも知れない。今更思い出しても、何か出来る訳じゃないが。
何かが狂い始めたのは、両親が死んでからかも知れない、結び付けるのもあれだが、死んでから俺が禁固365年と言い渡されるまで、生きてきた中で一気に何かが起こった数年だった。
定位置に座っていた場所から立ち上がり、俺は風呂場へと向かう。
ふと、周りを見渡し364年ほど過ごした独房内の内装がすっかり変わってしまった事に軽く溜め息を吐き、妙な気持ちになる。
竜馬が此処に来るようになり、座る場所がない事にご立腹、ウイッスくんに言って椅子が二つ持ち込まれた、まァ、狭くなる。
次に、テーブルまでもが持ち込まれた、食事を一緒にする為やら何やら、まァ、これでまた狭くなる。
竜馬が居ない時は椅子とテーブルは端へ重ねてスペースを作る、余計な仕事が増えているがそれを顔に出す事が無いため、竜馬の機嫌は損ねてはいない。
風呂場で顔を洗い、戻ってから俺は椅子とテーブルを設置する。今日は竜馬が来る日だ。
「今日は世界KANのクリームシチューだ!」
「世界KAN…」
世界KANのシチューと言えば、葵さんが好きだったものだ。自然と俺は緩んだ表情をしたのか、竜馬がそれはもう、誇らしげな表情と自慢げに言葉を発した。
「ふふふ、知っておるか?世界KANのシチューは俺の発案だ!特にクリームシチューに拘っているぞ、食べた事はないだろう、食って良い!」
ここで、食べた事があるはマズイだろう、俺は頷き竜馬からクリームシチューを受け取る。
「肉は入っておらんシチューだ、食えるだろ?」
「…知ってる、んですか?俺が肉嫌いなのを」
シチューを食おうとした瞬間、竜馬が告げた言葉に視線を向けた。肉は食えない訳じゃないが、好きでもない。多分、昔は食っていた気もするが、食わなくなったのはいつ頃だった?何かを考えようと眉を寄せて俯いた時、竜馬は告げる。
「知ってるに決まってる、不老不死で長寿とされる者は肉嫌いになるだろ、俺もそうだ」
竜馬の言葉に、俯いた顔を上げ相手と顔を合わせる。
多分、驚愕な表情を俺は向けていたと思う。竜馬の表情は平然とした、何でもないような表情を見せている。
「ふ、不老不死、で、長寿…?」
俺の驚いた表情に、竜馬も驚いたのか目を見開き首を傾げた。そして直ぐに、頷く。
「嗚呼、そうか。懸念しておった、俺様のベクトルで考えてしまっていたな。昔は神宮寺家のみの王族しか閲覧出来ない事項もあったか」
一人納得する竜馬に、俺は何も言えずただ洩れる言葉を聞くのみ。
「遅かれ早かれ、大洋は俺と一緒に過ごすしな、これからも一生」
無邪気な表情で、竜馬が笑う。
本当に無邪気に、何でもないように。
「一人、ずっと一生、一人で生きると俺様も思っていたが、大洋も居るなら二人だ。俺は空白の王とは違う、長く生きる意味を知らなかった空白の王とはな」
一気に流れ込む、情報量に俺の頭はパンク寸前だ。
ただ、言わせてくれ。
ツンデレかと思ったら、ヤンデレ要素もかっ!
そっと、心の中でツッコミをした。




