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禁固365年の男  作者: 獅斬武
第1章 禁固365年の男、罪状知らん
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独房での過ごし方

解らない罪で捕まり、反論しようにも出来ず、連れて来られた独房で鎖に繋がれ、俺は狭い部屋の中で過ごす事となった。狭くても足は伸ばせるくらいのスペースはあるし、寝るスペースもある。ただし、ベッドや布団と呼ばれる物はなく、毛布が一枚。




「此処で、一生過ごすのか」




閉じられた狭い空間に、光が当たるのは上の方のみ。顔を上げれば鉄格子から差し込む光が辛うじて見えた。此処に連れて来られ、問い詰められ拷問でもされるかと思ったが特になし。良いのか悪いのか解らない現状である。




耳を済まして何か聞こえる訳でもなく、俺が声を出さない限り音と言う音はなし。やる事もないが、考える時間は無限にある訳だ。




「禁固365年だし」




禁固365年って、一生独房で過ごしなさいって言われてる様なもんだからね、終身刑みたいなもんだからね、一括りにすれば。そもそも俺の罪が何なのか解らねェし、王子様である神宮司に何かして、何かの考えがあって近付いたとか言われてたが。




「そもそも、声を掛けて来たのは神宮司からだろ、俺は人見知り激しいから」




神宮司と俺の出会いはとある学園、神宮司学園。名前が解る通りに禁固365年を言い渡した神宮司家の経営する学校だ。俺はそこの普通科に通っていた。




他にも色々な学科があったと思うが、自分が通う学科くらいにしか興味がなく、特に調べてもいない。ああ、でも法務科には俺の友人であり幼馴染もいたから知ってはいたか。




「そーいや、あの場に居なかったか。インフルで休みとかメール来てたな」




居たら居たであの場で助けてくれたのかも微妙だが。神宮司みたいな例もある、仲が良かったとこっちが思っても、あっちはそうじゃなかったなんて事はあるしなー、メールが来て連絡入れてくれるのは仲良いとは思ったが、なんせ怒らせた?相手が神宮司だし、人生棒に振る様な幼馴染でもねーし。




やべ、人間不振になりそうだわ、俺。




回りに紙やペンがある訳でもなく、考えたい事を纏めたいにしても、頭で考えるしかない。俺は見た目悪役っぽいだけで、頭が良い、ズル賢い、チートとかそんな凄ェ能力は断じてない……。




「禁固365年、禁固…、禁固…きんた……」




やっちまった、金で自分の下半身想像した下ネタ言いそうになったわ。一人しか居ない空間は何を言っても反応はない、だから恥ずかしい事だろうと、サムい冗談だろうと、下ネタだろうと何でも許されると、勝手な解釈をしている。




「一人暮らしの部屋でテレビ見ながら、独り言しちゃうアレと一緒、一緒」




この言葉にも、勿論誰も反応しない、誰もいないしな。




「一人だと、しゃべるよなァ、俺。にしても、二十歳になって禁固365年って、出る頃には385歳だ、あはははー……はぁ」




途端に虚しくなった俺は近くにあった毛布を掴み引き寄せるとごろん、と横になる。目を瞑り再度考える、捕まった罪の事を。




神宮司が俺に近付いて来たが、この際どうでも良い、結局俺が近付いて何か探ってた的な話だ。となると、神宮司家の大切な何かが奪われたぞ!な話でそれが何か全く解らない。




王族だし、偉いとか尊いとかそりゃあ理解出来るが、他人の家の秘密みたいな事に興味あると思うか?いや、ないね、俺はねーし。王族に不利益な事しようなんて、家族に迷惑かけ……っ




「み、美月っ!」




俺のたった一人の家族、妹の美月(みつき)の顔が浮かんだ。訳も解らず捕まって思考回路が自分でも可笑しくなってたらしい、美月の事を忘れてた。




美月は見た目魔王っぽく、コミュ症に乏しい俺と正反対な妹だ。所謂愛されちゃんって、やつで、俺の妹だと紹介しない限り兄妹とは気付かない。髪色は赤と一緒だが、ゆるふわな髪に二重の垂れ目で、何となく神宮司と似てるような気はする。誰にでも優しいとか、……俺が無実だとしても捕まった侭なら何か言われたりしないか心配だ。




「……幼馴染も居るし、大丈夫だろ、うん」




両親が居ないのが、まだ救いだな、もし俺等に居たら息子が迷惑かけて世間に何を言われるか、などと考えている中でかたん、と音がし思わず肩を揺らした。




音の鳴った方へ視線を向ける、独房中で変わったのは地面に食事が出されていた所だ。良く見ると閉じられたドアの下に小さなドアがある、ドアと言うか開閉可能な箇所と言うか食事のトレーを出したりする様な?博識じゃねーし、何て名前かも解らないが兎に角あの小さなドアから食事を出したみたいだった。




立ち上がりジャラジャラと鎖の音をさせながら俺は食事が置かれた場所まで歩く、歩く様な距離でもねーけど。




トレーに置かれたパンとスープ。湯気は出てるし、暖かそうだ。食事の前に腰を下ろし、パンに手を伸ばす。口元に持っていって食うが硬い。顰めっ面になったのが自分でも解る。




「…千切ってスープにつけるか」




硬いパンを摘まみ千切ると、暖かなスープに浸けてから口に運んだ。お、此れなら食えそうだ。腹が減っては戦も出来ぬ、っつうしな、食ってからまた考えるか。




この流れが、俺の一日のスタイルとなった。

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