閑話 0年、俺の幼馴染
俺には幼馴染がいる、悪役顔の男と、超絶美少女だ。
物心ついた時から、何か違和感を感じていた俺だが特に気にする事もなく幼馴染二人とそれなりに付き合いつつ、周りにも溶け込み生きてきた。
悪役顔の男と超絶美少女は兄妹で、中身違うが顔のパーツは似ているよな、と言った事がある。
悪役顔の男は顔云々は否定していたが、超絶美少女はとても嬉しそうな表情をしていたのが印象的だ。
この世界の仕組みがいまいち、俺には生き辛い、王制度って何だ、俺の中に違う生き方がなかったか、歳を取るにつれてどうにも違和感が拭えなくなってきた。
そしてある日、俺は思い出す。
熱に浮かされる数日前、悪役顔の男と超絶美少女と、超絶美青年の三人を目撃したあの構図。
頭に引っ掛かり、家に帰るまでずっと何かが引っ掛かる。今までも、あの三人の構図は見てきた筈だ。今更、何が引っ掛かる…?家に帰ってもずっとその事が気にかかり、知恵熱が出そうになった途端、不意に記憶が溢れ出した。
「……っ、う」
頭を抑え、どうにかベッドの上に横たわる。
俺は、いや、私は思い出した……。
ちょっと、やだ、此処って大好きなノベルゲームの世界じゃないのォォオ!!
まてまて、今は俺だった、だが思い出したなら仕方がない……じゃないの!え、なら、え?幼馴染は、シークレット分岐に出てくる、大洋様じゃない!空前絶後のシークレットキャラクターよ!
大洋様と幼馴染だった、俺、いや、私の今の名前は相楽健次、しかし記憶を思い出した私の中身は花の女子高生だった、水無月立香だ。大洋様と苗字が一緒~って騒いだ記憶もある。
それよりも、私って流行りの転生者とかってやつ?ど、ど、ど、どうしよ!今後、大洋様と会話が出来るか微妙よ、って、ちょっと、あれ、今は……な、んがつ?
カレンダーへと視線を向け、見えた月は睦月、私が生きていた時の呼び方なら1月28日。
2月10日まで、もうすぐじゃないのォォオオ!
大洋様が投獄されるまで、時間がない事に私は、俺は絶望した。
何で、今、思い出すんだ。
頭を抱えつつ、俺は残りの数日、どうにか出来ないか知恵を巡らせた。
まずは、幼馴染にそれとなく、言ってみるか?
深く頷きどうにかしようと、この数日、悪役顔の幼馴染に付きまとい、然り気無く投獄されない様にしてみたが、肝心な断罪の日、戻った記憶に翻弄され過ぎて体調を壊しインフルエンザになった俺は、
私は大洋様を救えなかった。
私、これからどうすれば良いのよォォオオ!




