獣人王
「貴様か、強いと噂される大洋と言う者は」
教室を出て、次の授業へと向かう途中、しゃべるライオンに声を掛けられた。二足歩行で出歩く体は強靭な肉体の顔はライオンな、ひ、人か?
急に巨大な何かに話しかけられ、俺は得意のコミュ症を発症させた。ただ、話す相手を見詰めるしかない。てか、強いって何だ!?
「ふん、だんまりか。俺が獣人族の王だから、何だと言うわけか?」
「え、あ…いや」
相手の言葉に、言葉を濁す。いや、知らんし、獣人言われても俺は知らんしね!
目立ちたくないのに、この獣人族の王だと言う男が兎に角、声がでかく、悪目立ち。ざわざわと人だかりが出始めた。
あと、体がデカイから目立つのもあるかも知れない。
「まあ、いい!俺の名前はライオネス!貴様に決闘を申し込む!」
「え?」
デカイ声で自己紹介した自称、獣人王であるライオネスと名乗った男がとんでもない事を言ってきた。いや、え、決闘って今の流行りなの!?
「聞こえなかったのか?仕方あるまい、もう一度言う…俺の名前はライオネス!貴様に決闘を申し込む!」
「え?」
二度目のやり取りである。
え、なんでまた同じ事を言った!? 決闘の流儀みたいなもんが?返す返事も決まってたりするのか?決闘って何だよ!と、この数秒間で俺は考える、どうやったら回避出来るのかを。
しかし、全く浮かばなかったために、吃りながらも正直に答えた。
「も、申し訳ない、けど、俺はつ、強くないし、決闘言われても、困る、決闘じ、辞退する」
「…………辞退、だと?」
「……あ、ああ」
俺の答えに、一瞬の沈黙。
しかし、直ぐに怒涛の怒鳴り声のような言葉を投げ掛けられる。
「貴様ぁああ!そんな凶悪魔王顔で、強くないだと!?俺を馬鹿にしているのか!?獣人なんぞ、一捻りという訳か!?そうか、そこまで言うなら、今、ここで、殺り合うぞ!」
い…言ってねェえええ!!そんな事は一言も言ってないけど!?しかも顔の事いわれたけど、関係ないからね!?顔が凶悪だと強いって認識、改めて貰っていいかな!?と、言いたいが、コミュ症拗らせな俺は小心者でもあるので、言わない。
ガオガオと何か言ってるライオネス、決闘、決闘と引っ込みつかなくなっているのか、今にも襲いかかってきそうだ。
こんな強そうな男に襲われたら、ひとたまりもない、きっと死ぬ。確実に死ぬ、いや、死なんけど俺は不老不死だった……。 と、妙な冷静さが出てくる。
途端にめんどくさくなって来た俺は、取り敢えず殴られて終わらせたら良いかなと思い始めた。
なんの決闘か分からないが、もう何でも良いやと考え始めた所にある人の声。
「ちょっと!大洋様をいじめないでよ!」
俺とライオネスの間に入り込んだのは、姫川さん。あれ、い、いつの間に?
「雌が邪魔をするな!俺とあの男の決闘に……ぐぉおああ!!」
しゃべってる最中のライオネスに、姫川さんが鳩尾一発食らわせた。あ、あれは、あの小屋事件で受けたよりも、絶対ヤバいやつだ…。
鳩尾に一発食らったライオネス、鳩尾を押さえながらその場にぶっ倒れた。そして俺の方に振り替える姫川さん。
「きゃはっ!大洋様、大丈夫ですかー?ほら、私と行きましょ!」
可愛い笑顔を見せる姫川さんに手を引かれる。 ほ、ほっといて良いの、か?そんな事を思いながら手を引かれる儘に歩き出した。




